■「e:HEV」にはないi-DCDのホンダらしさとは?
しかし、e:HEVの場合、120km/h規制の速度域ではモーターではなくエンジンによる駆動となる。しかも変速ギアは持っていない。
モーターで駆動してきたものがエンジンにバトンされるので、その同じギア比でエンジンが駆動する。このギア比はアバウトで5速ギアぐらいのギア比。だから踏み込めば加速は良いです。
しかし、クルージングする場合ちょっとエンジン回転が高くなる。e:HEVは瞬間的な加速には力を発揮するけれども、こと高速道、しかも120km/hという高い速度域での巡行には、加速はスッキリだがクルージングはちょっと無理してる感がある。
では、なぜこんなギア比を設定しているのか? それは、モーターは0回転から最大トルクを発生するので、クラッチも必要なく直結停止状態からそのまま発進できるのでちょうど良いギヤ比が5速レベルなのだ。
100km/h以下での走行のスムーズさはギアチェンジを行わないe:HEVはたしかに良い。移動の乗り物としての完成度は高い。
しかし、エンジンのホンダというイメージからは程遠くなった。今回、トータル1000km以上フリードハイブリッドに試乗して感じるのは、やはりi-DCDはエンジンを主体としたハイブリッドなのだということ。
街中であろうが高速道路であろうが、はたまた峠道であろうがエンジンのホンダを感じながら走る。
スタートアップさえモーターによる静かな転がりだが、あのDCTが次々にシフトアップしてエンジン回転がドロップしては唸りを上げて上昇を繰り返す。
それにつれて車体が速度に乗ってゆく。なんとなくF1マシンがコーナー出口から加速してゆく時、パーン!パーン!パーン!と素早いアップシフトと被るのだ。
フリードハイブリッドにパドルシフトはないが我が家のフィットハイブリッド「S」にはちゃんと付いている。これが気持ち良い。特に奇数ギアではモーターアシストがダイレクトに享受できるのでレスポンスも良い。
e:HEVにもパドルは付いているが、これは回生レベルを調整するためのもの。減速時にのみ効果を発揮する。
■“ホンダらしいHV”はなぜ定着できなかった?
このようにi-DCDは、エンジンとモーターと7速のDCTとを高度に制御してコントロールする賢いシステム。技術のホンダをはっきり感じさせてくれるのだ。
初期には確かにリコールを連発したことで悪評が際立ったが、現在では完成度は非常に高いシステムに成長した。
デュアルクラッチのDCTは日本のような渋滞の多い交通環境でギクシャクしがちな弱点を持っているが、そこをモーターのトルク制御でスムーズな加減速にしつけているところも評価したい。
i-DCDはホンダらしいハイブリッドなのだ。ただし現在のところヴェゼルなどコンパクトモデルでの採用に留まり、ミドルクラスに採用する様子は見られない。つまり大パワー&トルクモデルへの開発をホンダは考えなかった。
自動車メーカーでは生産効率面からパーツや技術の共有化が重要。その意味でi-DCDはよりハードルが高いといえ、e:HEVならモーター出力の高出力化で対応できる。
モーターの場合、モーターそのものを交換しなくとも電力を上げることでパワーアップが可能なのだ。
そう考えると、可哀そうなi-DCD。どうかもう少しの間ラインアップのレギュラーでいてくれよ。
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