みなさんは、後席でシートベルトをしていますか? JAF(日本自動車連盟)の調査によると一般道において、後席でシートベルトを装着する人は40%程度で、まだ約60%の人が後席ではシートベルトを装着しないようです。
以下、シートベルトの着用率が、特に後部座席で低い理由と、着用しないとどうなるのかを、安全運転講習なども担当する自動車ジャーナリストの諸星陽一氏に解説していただきます。
文/諸星陽一 写真/JAF、警察庁、Adobe Stock(メイン写真=Paylessimages)
【画像ギャラリー】自分のためにも同乗者のためにもシートベルトは必ず装着しよう!
■後席シートベルトに関して衝突実験を行った結果..
後席でのシートベルトは義務化されています。しかしながら一般道では罰則は適用されないことになっています。これが未装着率が高い最大の理由といえるでしょう。
ちなみに高速道路の着用率は約76%です。罰せられるから装着するという考えで、これは日本の民度の低さを表している感じがしてなりません。後席シートベルトは自分のためだけではなく、同乗者の安全を守るためにも大切なことです。
JAFが2017年に後席でシートベルトを未装着の場合にどのようなことが起きるか? 衝突実験を行っています。
衝突実験は以下の条件で行われました。
・実施日: 2017年3月13日(月)
・テスト場所:日本自動車研究所 衝突実験場(茨城県つくば市)
・テスト内容:テスト車両(ミニバン)の前席と後席(2列目)にダミー人形(以下、ダミー)を各2体乗せ、後席運転席側のダミーのみシートベルト非着用とした。時速55kmでフルラップ前面衝突試験を実施し、衝突時のダミーの挙動とHIC(頭部傷害基準値)を計測。
このテスト結果は以下のように報告されています。
1.シートベルトを着用していない後席ダミーは前方に投げ出され、運転席のヘッドレストに頭を打ち付け、さらにシートごと運転席ダミーを押しつぶした。
2.シートベルトを着用していない後席ダミーの頭は、ヘッドレストを介して運転席ダミーの後頭部に衝突し、HICは2192まで上昇した。
3.シートごと押しつぶされた運転席ダミーのHICも1171と高くなった。
4.シートベルトを着用していたダミーは、シートベルトで上体をしっかりと拘束され、投げ出されることはなかった。
HIC(頭部損傷基準値)は、頭部への傷害の程度を示す数値で1000を超えると頭部に重大な損傷が発生する可能性があると言われています。衝突直後、運転席ダミーがエアバッグに接触した際のHICは504でシートベルトとエアバッグが十分に効力を発揮しています。
しかし直後に後席のシートベルト未着用ダミーがシートバックに衝突、ヘッドレストを介して運手席ダミーを押しつぶしていきます。
このときの後席ダミーのHICは2192、運転席ダミーのHICは1171でどちらもかなり危険な状態となっていることがわかります。
「後席は前席が人間エアバッグになるから安全だよ」とうそぶく人もいますが、上記の試験よりも低い速度の40km/hでも、コンクリートバリアに衝突した際でも最大30Gの衝撃が発生すると言われています。
つまり、体重55kgの人が後席でシートベルトをしてない状態で乗車していたとすると、前席のシートバックに対して最大1.65トンの衝撃が加わることになります。
シートはかなり丈夫に作られているのですが、さすがに1.5トンを超えるような衝撃には耐えることが難しいのが実状で、悲惨な事故となります。40km/hや55km/hといったごく普通に街中を走っているような速度でこうしたことが起きるのです。
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