■古いクルマの重課税は福祉とモノを大切にという考えに反している
古い車両の重課税は悪法で、筆頭に挙げられる理由は「福祉」に反することだ。
公共の交通機関が未発達な地域では、年金で生活する高齢者が、古い軽自動車を使って通院や買い物をしている。経済的な理由から新車に乗り替えられず、仕方なく古い軽自動車をライフラインとして使う。そのような人達から、多額の税金を巻き上げるのが今の自動車税制だ。
しかも増税は、前述の通り自動車税/軽自動車税と自動車重量税の両方で行われる。前述の軽自動車でいえば、従来の軽自動車税は年額7200円、自動車重量税は年額換算なら3300円だから合計1万500円だが、13年以上になると、軽自動車税が年額1万2900円、自動車重量税は4100円に切り上げられて合計1万7000円に高まる。高齢者を始めとする福祉の趣旨に逆行する制度だ。
それならなぜ福祉に逆行する重課税を実施するのか。
この趣旨は「地球温暖化及び大気汚染防止の観点から、環境に優しい自動車の開発・普及の促進を図るため、初回新規登録(軽自動車は届け出)から一定年数を経過した自動車については税率を重くする」とされている。
つまり「古いクルマは環境性能が悪い」という考え方に基づき、税額を高くして乗り替えを促す制度だ。
しかし車両は、製造、流通、使用、廃棄というすべての過程で、環境に負荷を与える。13年を経過した車両に増税を課してまで新車に乗り替えさせることが、エコロジーの目的に合うとは限らない。エコロジーの真髄は「モノを大切に使うこと」という考え方もある。
以上のように古いクルマの重課税は、お年寄りを大切にする福祉と、モノを大切に使う伝統的な考え方の両方に反するわけだ。
■自動車工業会は「重課税の撤廃」を早急に要望すべき
そして自動車工業会の動向も不可解だ。自動車に関係した税負担の軽減については、複数回にわたり発信しているのに、自動車税と自動車重量税の重課税については要望に含めていない。
これでは自動車工業会と国が、世間から見えないところで結託していると受け取られてしまう。重課税を許すことは、税負担の軽減を求める目的が、ユーザーではなく業界の利益に置かれることを意味するからだ。
具体的にいえば、高齢者を始めとする古い車両のユーザーが、重課税に苦しんだ末、新車に乗り替えれば自動車業界の利益に結び付く。逆に新車を購入できず、苦しみながら多額の税金を納め続ければ、税収が増えて国が潤う。
つまり業界のためのエコカー減税で税収が不足した分は、高齢者などから巻き上げて埋め合わせをする構図だ。
従って自動車工業会は、重課税の撤廃を国に対して最優先の改善事項として早急に要望すべきだ。そうしないと表向きは「ユーザーのため」と言いながら、腹の中では、高齢者福祉に反しても業界の利益を守る方針だと受け取られてしまう。
自動車工業会が「悪法の片棒を担いでいる」と見られてしまう可能性がある現状は、このうえなく不本意だろう。
■石油税やガソリン税の消費税二重問題
燃料の二重課税の問題もある。
ガソリンの小売価格は「本体価格+ガソリン税(揮発油税+地方揮発油税)+石油税+消費税」で構成される。ガソリンの小売価格が1L当たり140円とすれば、本体価格は70.7円に過ぎない。残りの69.3円はすべて税金だ。
しかも消費税は、本体価格+ガソリン税+石油税の合計額に課税される。つまり二重課税になる。
ディーゼルエンジンが使用する軽油の小売価格は「本体価格+軽油引取税+石油税+消費税」で構成される。軽油の小売価格が1L当たり120円であれば、本体価格は77.1円だ。つまりガソリン価格が20円高くても、本体価格は軽油よりも6~7円安い。
そして軽油の場合、軽油引取税に消費税は課せられず、本体価格+石油税が消費税の課税対象だ。このようにガソリンと軽油の本体価格と小売価格は、税額の違いで逆転している。
それにしても石油税やガソリン税にまで消費税を二重に課すのは理屈が通らない。
この点を国税庁に尋ねると「燃料に含まれる税金は、あくまでも燃料の製造業者から徴収しているものだ。製造業者が負担すべき税金を価格に転嫁しているだけ」という。
しかしこの理屈は筋が通らない。燃料に含まれる税金は、もともと道路の建設費用などに使う道路特定財源として設けられたからだ。
「道路の恩恵を受けるのは自動車ユーザー」という考え方に基づいて徴税が開始され、いわば燃料価格が代行して税金を徴収しているに過ぎない。「製造業者が負担すべき税金を価格に転嫁している」とするのは誤りで、そこに消費税を課すこともできない。
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