日米が太平洋で激突した戦争が激しさを増していた昭和18年、大学、専門学校に籍を置く多くの学生が陸海軍を志願して、戦場へと向かった。
その中の一人の青年は、零戦搭乗員となり、圧倒的な劣勢のなかで度重なる激戦を戦い、辛くも終戦まで生き抜いた。戦後は数学教師となり、90歳で天に召されるまで、終生愛し続けたのは、「エンジンのある乗り物」だった。
中でも、運転をリタイアする直前まで20年間乗り続けた一台の車に対する愛情はひとしおだった。取材を通じて、この元零戦搭乗員と知り合い、彼の最後の車と深くかかわることになった男が、その人生の物語を紡ぐ。
写真/文 神立尚紀
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