電動化推進で高額に!? 生活必需品としての軽自動車を守るために必要な戦略


■数年後には電動化と燃費規制の実施で軽自動車の価格が高くなる..⁉

 また政府や自治体の方針のほかに、2030年度燃費基準に基づく燃費規制も実施される。燃費基準の達成度合いはCAFE(企業別平均燃費方式)で判断され、この仕組みは2020年度と同じだが、基準となる燃費数値は大幅に引き上げられる。

 2020年度は、車両重量が741~855kgの車両は、JC08モード燃費が24.5km/Lという具合に車両重量の枠を定めて対応する燃費数値を決めていた。それが2030年度はシームレスになり、車両重量が741kgと855kgでは、対応する燃費数値も異なる。

 そしてN-BOXで売れ筋になる2WD・カスタムLの場合、車両重量は910kgで、WLTCモード燃費は21.2km/L、JC08モード燃費は27km/Lだ。910kgに相当する2020年度燃費基準はJC08モード燃費で23.7km/Lだから、27km/LのN-BOX・2WD・カスタムLは、余裕を持ってクリアできた。

電動化推進で高額に!? 生活必需品としての軽自動車を守るために必要な戦略
ホンダN-BOX。日本で一番売れてる軽自動車。ただし地方の高齢世帯ではこうしたスーパーハイトワゴンはあまり見ない

 ところが2030年度燃費基準では、910kgに相当する燃費基準値は、WLTCモード燃費で27.8km/L前後だ。N-BOX・2WD・カスタムLのWLTCモード燃費は21.2km/Lだから、燃費数値を31%向上させねばならない。

 現時点で軽自動車に使われる電動技術には、マイルドハイブリッドがある。

 モーター機能付き発電機と小さなリチウムイオン電池を搭載して、前者が減速時の発電、アイドリングストップ後の再始動、エンジン駆動の支援を行う。

 マイルドハイブリッドの正味価格は約9万円と安いが、ノーマルエンジンと比べた時の燃費向上率も3~6%と小さい。前述の31%を向上させるには、本格的なストロングハイブリッドが必要だ。

 ただしストロングハイブリッドは価格が高い。ノーマルエンジンとの差額を小さく抑えた車種としてフィットのe:HEVがあるが、この価格差はフィット「ホーム」同士の比較で約35万円だ。N-BOX・2WD・カスタムLの価格は176万9900円だから、ストロングハイブリッドになって35万円高まれば約212万円に達する。

電動化推進で高額に!? 生活必需品としての軽自動車を守るために必要な戦略
ホンダフィット(写真はeHEV HOME(FF) オプション装着車)

 N-BOX・2WD・カスタムLがストロングハイブリッドになると、WLTCモード燃費も約35%向上して28.5km/Lくらいに達するが、価格も35万円高まると、軽自動車として成立させるのは難しい。

 そして新車価格の上昇は中古車価格も押し上げるから、数年後には、年金で生活する高齢者のライフラインや生活権を奪う心配も生じる。

■価格を始めとして今後軽自動車はさまざまな工夫が求められる

 2020年度/2030年度燃費基準は、前述のCAFE方式だから、すべての車種が燃費基準値をクリアする必要はない。燃費基準値を大幅に上回る優れたクルマを積極的に販売すれば、下回る車種をおぎなえる。

 しかし軽自動車は販売台数が多く、2020年度には国内で新車として売られたクルマの38%を占めたから、軽自動車の多くの車種で燃費基準もクリアせねばならない。

 そうなるとさまざまな工夫が求められる。

 最も大切なのはもちろん「価格」だ。前述のN-BOX・2WD・カスタムLは176万9900円で、この金額が実質的に軽乗用車の上限になる。

 それが同じN-BOXでもカスタムではなく、標準ボディの2WD・Lなら、価格は155万9800円だ。標準ボディはカスタムに比べて約21万円安い。

 従って標準ボディの外観をカッコ良くデザインして、そこに20万円の価格上昇で機能をシンプルにしたストロングハイブリッドを搭載すれば、軽自動車の商品力をほとんど損なわずに2030年度燃費基準をクリアできる。

 そのためにはエンジン排気量を見直すことも考えたい。軽自動車の開発者は「排気量を800cc前後に拡大できれば、エンジンの負荷が減り、現在の660ccに比べて燃費の向上が可能になる」というからだ。

 軽自動車の排気量拡大で注意したいのは、増税の心配が伴うことだ。

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軽自動車が排気量拡大するとそれに伴って自動車税が増える心配が考えられる(眞@AdobeStock)

 仮に排気量が800ccに拡大された代わりに、軽自動車税も1.2倍の年額1万3000円になると、高齢者のライフラインや生活権を守ることはできない。本末転倒になってしまう。

 つまり軽自動車に適したハイブリッドを20万円以下の価格上昇で設定して、必要に応じて増税はせずに排気量の見直しを行い、燃費規制に適合させることが不可欠だ。

 それでも20万円の上乗せでストロングハイブリッドを搭載するのは難しい。35万円に比べると、40%の大幅値下げになるからだ。

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