電動化推進で高額に!? 生活必需品としての軽自動車を守るために必要な戦略

■価格を始めとして今後軽自動車はさまざまな工夫が求められる

 2020年度/2030年度燃費基準は、前述のCAFE方式だから、すべての車種が燃費基準値をクリアする必要はない。燃費基準値を大幅に上回る優れたクルマを積極的に販売すれば、下回る車種をおぎなえる。

 しかし軽自動車は販売台数が多く、2020年度には国内で新車として売られたクルマの38%を占めたから、軽自動車の多くの車種で燃費基準もクリアせねばならない。

 そうなるとさまざまな工夫が求められる。

 最も大切なのはもちろん「価格」だ。前述のN-BOX・2WD・カスタムLは176万9900円で、この金額が実質的に軽乗用車の上限になる。

 それが同じN-BOXでもカスタムではなく、標準ボディの2WD・Lなら、価格は155万9800円だ。標準ボディはカスタムに比べて約21万円安い。

 従って標準ボディの外観をカッコ良くデザインして、そこに20万円の価格上昇で機能をシンプルにしたストロングハイブリッドを搭載すれば、軽自動車の商品力をほとんど損なわずに2030年度燃費基準をクリアできる。

 そのためにはエンジン排気量を見直すことも考えたい。軽自動車の開発者は「排気量を800cc前後に拡大できれば、エンジンの負荷が減り、現在の660ccに比べて燃費の向上が可能になる」というからだ。

 軽自動車の排気量拡大で注意したいのは、増税の心配が伴うことだ。

電動化推進で高額に!? 生活必需品としての軽自動車を守るために必要な戦略
軽自動車が排気量拡大するとそれに伴って自動車税が増える心配が考えられる(眞@AdobeStock)

 仮に排気量が800ccに拡大された代わりに、軽自動車税も1.2倍の年額1万3000円になると、高齢者のライフラインや生活権を守ることはできない。本末転倒になってしまう。

 つまり軽自動車に適したハイブリッドを20万円以下の価格上昇で設定して、必要に応じて増税はせずに排気量の見直しを行い、燃費規制に適合させることが不可欠だ。

 それでも20万円の上乗せでストロングハイブリッドを搭載するのは難しい。35万円に比べると、40%の大幅値下げになるからだ。

■軽自動車は環境性能よりも大切なライフライン!

 そこで業務提携の(今以上の)活用が考えられる。今はダイハツがトヨタの完全子会社になり、スズキもトヨタと提携している。日産と三菱は、OEM車を通じてスズキと関係がある。

 そうなると、例えばダイハツが軽自動車用のストロングハイブリッドを開発/生産して、すべての軽自動車メーカーに供給することで、コストを抑える方法が考えられる。商品の個性化は守りながら、必要に応じて共通化を行い、低コストで燃費を向上させるわけだ。

電動化推進で高額に!? 生活必需品としての軽自動車を守るために必要な戦略
ダイハツミライース(写真はイースG SA III 2WD)
電動化推進で高額に!? 生活必需品としての軽自動車を守るために必要な戦略
スズキアルト (写真はS アップグレードパッケージ装着車 S アップグレードパッケージ装着車)

 これらの対策を施しても燃費基準の達成が困難な時は、軽自動車には別枠を適用することも考えたい。

 もともと軽自動車は、ボディサイズやエンジン排気量を小さく抑える代わりに、税額を安くすることで、さまざまな人達がクルマを使えるようにした商品であるからだ。

 軽自動車は街中の移動手段だから、小型/普通車に比べると1年間の走行距離は短く、環境負荷も小さい。軽自動車の規格自体、環境性能が優れているから、小型/普通車と同じ2030年度燃費基準を当てはめる必要はないという見方もできる。

 メーカーの商品開発や販売促進も見直すべきだ。今は国内で売られる新車の38%が軽自動車だから、付加価値を重視して価格も上昇した。

 今後はホンダであればN-BOXから割安なN-WGNに、スズキもスペーシアからワゴンRに主力商品を変更することで、燃費向上のコストを捻出したい。それと併せて、軽自動車の偏った売れ方を是正することも考えるべきだ。

電動化推進で高額に!? 生活必需品としての軽自動車を守るために必要な戦略
スズキワゴンR(写真はHYBRID FX 全方位モニター用カメラパッケージ装着車 フェニックスレッドパール)

 軽自動車のライフラインの機能は、絶対に守らねばならない。それは生活権に係わるので、環境性能を向上させることよりも遥かに大切だ。

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