迫る危機!! クルマが売れない!! どうなる日本の新車市場 少子化と格差拡大で続く市場減少


■今後はEVと自動運転が自動車販売業界の景気回復につながるカギとなる

 ここまでかなり厳しいことを書いたが、実は筆者は国内の自動車販売市場についてそれほど悲観視していない。その理由は、今後の10年でクルマの所有形態や価格体系が大きく変わり、従来とは別の形でクルマを普及させることが可能だからである。

 カギを握るのは、説明するまでもなくEV(電気自動車)と自動運転の普及である。

 よく知られているようにEVは内燃機関と比較して部品点数が少なく、バッテリーのコスト次第では圧倒的な低価格を実現できる。すでに最新モデルではガソリン車より安い製品が出てきているし、中国では日本円で50万円を切るミニEVがテスラを抑えてバカ売れしている状況だ。

 上汽通用五菱汽車が販売する「宏光MINI EV」の購入者は20~30代が中心だが、日本でも同様の低価格EVが発売されれば、多くの若者が魅力を感じるはずだ。

迫る危機!! クルマが売れない!! どうなる日本の新車市場 少子化と格差拡大で続く市場減少
中国産EVの宏光MINI。エアコン付きの上級グレードで約60万円という衝撃の価格

 EV市場について考える際に絶対に欠かせないのが、EVとIT機器はセットになるという視点である。

 「宏光MINI EV」のオーディオはスマホ接続が大前提になっているし、アップルが投入を計画しているアップルカーに至っては、クルマがiPhoneの周辺機器になってしまうくらいの大胆なコンセプト転換があると予想されている。

 四六時中、スマホをいじっている若年層にとってクルマを運転している時間は(スマホに触れることができないので)無駄な時間以外の何者でもなく、スマホとの連携が保てるのかどうかは購買にあたっての最重要事項である(マニュアル車に乗っていた筆者には想像もできない世界だが、現実は現実として受け止める必要があるだろう)。

 運転する時間がスマホにとって邪魔ならば、ベストな解決策は自動運転ということになる。日本に存在するクルマの90%が稼働していないというのが現実であり、多くの所有者は休日以外にはほとんどクルマを動かしていない。

 しかも若年層ほど、モノを他人と共有する(シェアリングする)ことに抵抗感がないので、自動運転車の一部は所有ではなく利用という形態になる可能性が高い。

■自動車メーカーは業態を大幅に変えていく必要がある

 PwCコンサルティングの予想によると、現在、ごくわずかに過ぎないカーシェアやライドシェアといったシェアード・カーの比率は今後、全世界的に急上昇し、2030年には米国では14%、欧州では17%、中国では24%まで上昇するとの見通しである(ちなみにシェアされるクルマの半分以上が自動運転システムになると見られている)。

 スマホ・オリエンテッドで、かつ複数人で自動運転車をシェアする安価な新サービスが登場した場合、若者はこぞって加入するのではないだろうか。

 高価な内燃機関の自動車を1人1台所有させるという大前提に立てば、今後の自動車販売市場は悲観一色となる。だが、安価でスマホとの親和性の高いEVを、シェアリングなどの形でサービス化すれば、まったく新しい市場が見えてくる。当然のことながら、新しいクルマのサービスは各種ITサービスとセットになるので、収益の形態も大きく変わってくるはずだ。

 しかしながら、こうした新市場にうまく対応し、変化をビジネスチャンスに変えるためには、自動車メーカーは業態を大胆に変えていく必要がある。しかもこの問題は国内市場だけの話にとどまるものではなく、全世界の販売台数にも密接に関係してくる。

 一連の自動車産業の変化は、当然のことながらグローバルなものであり、EV化や自動運転化は日本よりも諸外国の方がペースが速い。自動運転が標準となった場合、道路などの各種インフラとの連携が必須となることから、国内メーカーの方が有利になる可能性が高い。

迫る危機!! クルマが売れない!! どうなる日本の新車市場 少子化と格差拡大で続く市場減少
新車販売のため船積みを待つ新車たち(oka@AdobeStock)

 これまでの時代、日本の自動車メーカー各社は、国内市場があまりにも小さすぎることから、北米を中心とする海外市場を主戦場としてきた。今後は中国市場の拡大が確実視されることから、近い将来、中国市場が従来の北米市場と同じ位置付けになると考えられている。

 だが、自動運転が普及した場合、中国では中国メーカーが、米国では米国メーカーが相対的に強くなる。加えてEV化が進めば、新興国でも容易に自動車が製造できるので、国策として自動車の生産に乗り出す途上国も増えてくるだろう。

 自動車産業は、EV化と自動運転化によってグローバルなビジネスからドメスティックなビジネスに変化する可能性があり、各社は否応なく国内市場に目を向けざるを得なくなる。EV時代、自動運転時代にカギを握るのは実は国内市場であり、自動車のサービス化に素早く対応できたメーカーが次世代の覇者となる。

【画像ギャラリー】自動車販売市場が低迷⁉ これからの自動車産業はどうなる?

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