■自動車メーカーは業態を大幅に変えていく必要がある
PwCコンサルティングの予想によると、現在、ごくわずかに過ぎないカーシェアやライドシェアといったシェアード・カーの比率は今後、全世界的に急上昇し、2030年には米国では14%、欧州では17%、中国では24%まで上昇するとの見通しである(ちなみにシェアされるクルマの半分以上が自動運転システムになると見られている)。
スマホ・オリエンテッドで、かつ複数人で自動運転車をシェアする安価な新サービスが登場した場合、若者はこぞって加入するのではないだろうか。
高価な内燃機関の自動車を1人1台所有させるという大前提に立てば、今後の自動車販売市場は悲観一色となる。だが、安価でスマホとの親和性の高いEVを、シェアリングなどの形でサービス化すれば、まったく新しい市場が見えてくる。当然のことながら、新しいクルマのサービスは各種ITサービスとセットになるので、収益の形態も大きく変わってくるはずだ。
しかしながら、こうした新市場にうまく対応し、変化をビジネスチャンスに変えるためには、自動車メーカーは業態を大胆に変えていく必要がある。しかもこの問題は国内市場だけの話にとどまるものではなく、全世界の販売台数にも密接に関係してくる。
一連の自動車産業の変化は、当然のことながらグローバルなものであり、EV化や自動運転化は日本よりも諸外国の方がペースが速い。自動運転が標準となった場合、道路などの各種インフラとの連携が必須となることから、国内メーカーの方が有利になる可能性が高い。
これまでの時代、日本の自動車メーカー各社は、国内市場があまりにも小さすぎることから、北米を中心とする海外市場を主戦場としてきた。今後は中国市場の拡大が確実視されることから、近い将来、中国市場が従来の北米市場と同じ位置付けになると考えられている。
だが、自動運転が普及した場合、中国では中国メーカーが、米国では米国メーカーが相対的に強くなる。加えてEV化が進めば、新興国でも容易に自動車が製造できるので、国策として自動車の生産に乗り出す途上国も増えてくるだろう。
自動車産業は、EV化と自動運転化によってグローバルなビジネスからドメスティックなビジネスに変化する可能性があり、各社は否応なく国内市場に目を向けざるを得なくなる。EV時代、自動運転時代にカギを握るのは実は国内市場であり、自動車のサービス化に素早く対応できたメーカーが次世代の覇者となる。
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