日本は急ピッチで少子高齢化が進んでおり、国内の自動車販売市場は低迷が続いている。このまま市場縮小が続いた場合、自動車業界には何が起こるだろうか。
国内から自動車工場や販売店が急減して雇用の危機が起こってしまうのか? また、国内需要を復活させる方法はあるのだろうか。「基幹産業」と呼ばれて久しい自動車産業。その重要性と今後について、経済ジャーナリストに伺った。
文/加谷珪一(経済評論家) 写真/ベストカー編集部、AdobeStock
【画像ギャラリー】自動車販売市場が低迷⁉ これからの自動車産業はどうなる?
■近年の販売市場が低迷している⁉
日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会の調査によると、2020年の新車総販売台数は前年比11.5%減の459万8615台となった。マイナスは2年連続であり、コロナ危機の影響もあり4年ぶりに500万台を割った。
(※編集部註/トラック、バスを含む新車販売台数。2019年は519万5216台だった)
国内の新車販売台数は800万台に迫る勢いだった1980年代をピークに、多少の上下変動はあるものの一貫して減少が続いている。国内市場の低迷は人口減少というキーワードで語られることが多いが、実は人口の絶対数は大きく減っていない。
2010年まではわずかだが人口増加が続いており、10年以降もしばらくは微減という状況が続いてきた。高齢化の進展で運転できなくなる人が増えたという点も割り引いても、市場が急速に縮小したわけではない。
それにもかかわらず、新車販売台数が一貫して減少を続けてきた背景には日本人の所得低下がある。
国税庁の調査によると日本の給与所得者の平均年収は1990年代には450万円を超えていたが、2012年には400万円まで下落している。この数値は1年以上勤務した人が対象なので、全労働者を対象にすると平均年収は300万円台まで下がる。ここ1~2年は上昇傾向が見られるが、基本的に日本人の賃金は大きく下がったと考えてよい。
だが賃金が下がっているのは日本だけの現象であり、同じ期間で諸外国の賃金は大幅に上昇している(1.5倍から1.7倍)。賃金が下がった分、価格も下がれば問題ないのだが、自動車は典型的なグローバル産業であり、どの国で買っても値段はほとんど変わらない。日本以外の各国は順調に経済成長を続けており、その分だけ物価も上がっている。
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