クラウンがSUV化? EVと自動運転は? 10年後のニッポンのクルマ社会を読み解く

■クラウンはSUVになっている!!?

 そりゃあわかりません!! なんて言っちゃうと身もフタもないので本誌スクープ班に聞いてみた。

 結論から言えば、既報のとおりで、ハリアーなどに使われるGA-KプラットフォームをベースとしたFFとして今後のクラウン(に相当する4ドアサルーン)が開発される計画で、このニューモデルは2023年に登場する、ということ。

 バリエーションとしてSUV的な車型も用意される可能性が高い、というものだ。

 クラウンがFFになるというと違和感があるが、現在のクラウンのポジションはMIRAIが担うとみれば納得できる話だ。

 2023年から7年後の2030年なら、さらにもう1世代先のクラウン。それこそEVの可能性も大きい。

EVは? 自動運転は?? クラウンはどうなる??? 10年後のニッポンのクルマ社会を読み解く
次期型クラウンとして燃料電池のMIRAIがその役割を担うというのは、かなり現実的な話(※写真は次期クラウン予想CG)

【番外コラム】クルマ界 この20年を紐解く 10のキーワード

 この20年間、時代を築き、流れを作った自動車業界のキーワードを自動車評論家 永田恵一氏に解説してもらった。

*   *   *

●01.選択と集中……これは文字どおりの「一球入魂」に近い意味なのだが、クルマの場合には、昨今はクルマに求められる要素が環境、安全など激増しており、必要な開発資源(人員、資金、時間など)は1990年代に比べると1.5倍から2倍近くになっている。

 そのため2000年代までのようにパワートレーンなどのバリエーションを増やすことは難しく、「数を減らす代わりに残すものに注力する」という動きが進んだ。

 具体的な例としてはトヨタ、日産、ホンダ、三菱がディーゼルをやめてハイブリッドに注力、マツダがハイブリッドはトヨタから供給してもらいディーゼルに注力、といったことが挙げられる。

●02.合従連衡……開発資源とも関係するが、2000年代に入ってからはパワートレーンなど、すべてを自社で賄うということはトヨタのような大メーカーでも難しくなり、自動車メーカーの合従連衡が進んだ。

 具体的な例としてはダイハツ、日野に加えスバルとマツダ、スズキのトヨタグループ入り、三菱自動車のルノー日産アライアンス入り、独立独歩にこだわっていたホンダのGMとの業務提携拡大などが挙げられる。

 また、商品で見ても86/BRZ、日産&三菱自動車の軽自動車など、2社が手を組まなければ世に出なかったものも少なくなく、合従連衡には歓迎すべきところも多い。

●03.モリゾウ……モータースポーツ参戦の際などに使われる「モリゾウ」こと豊田章男氏がトヨタの社長に就任したのは、章男氏が53歳だった2009年のことで、トヨタの豊田家出身の社長は’90年代中盤の豊田達郎氏以来だった。

 副社長時代から86やレクサスLFAの開発を後押しするなど、カーガイ(自動車野郎の意)だった章男氏であるが、就任直後はプリウスのブレーキなど大規模リコール問題をはじめとした困難が続き、章男氏に対する冷たい声も少なくなかった。

 が、2012年あたりからクルマ自体を含めてトヨタの雰囲気がハッキリ変わり始め、現在のトヨタの勢いに手がつけられない状況となったのは章男氏の功績だ。

●04.自動運転……クルマにとって究極の形のひとつである自動運転は昭和の最後から研究が進められていた。2010年代になると、自動ブレーキなどとも関係する停止まで対応するアダプティブクルーズコントロールや操舵支援が普及し、自動運転に近づいたが、これらはあくまでもドライバーに責任がある運転支援システムだった。

 それが今年に入って「レベル3」と呼ばれる高速道路の渋滞中という限定された状況下での自動運転を実現したレジェンドが、限定的な販売ながら市販化された。自動運転には事故の際の責任問題など課題も多いだけに、その行方を慎重に見守りたいところだ。

●05.カンパニー制……カンパニー制はトヨタが代表的なのだが、「社内で独立した形に近い、各々のカンパニーごとに利益を出していく」という組織形態を指す。

 トヨタをクルマの企画ごとに見ていくとミッドサイズビークル、CV(商用車系)、Gazoo(スポーツ車両、モータースポーツ)、レクサスインターナショナルなどに分かれる。似た形態となっているのがホンダなのだが、ホンダの場合は「〇〇地域の××というクルマごとに利益を出していく」という方針になっている。

 そのため、例えば日本で売れる確信がないモデルだと、弱気な戦略で価格も高くなりがちになるなどの弊害も起きている。

●06.EV……EVも古くからあるものだが、実用化に対する最大のハードルはやはりバッテリーのサイズと容量や、耐久性&信頼性だった。そのハードルを越えて2009年に世界初の量産電気自動車として登場したのがi-MiEVで、翌2010年にはリーフも登場し、EVでは日本が世界をリードしていた。

 しかし、海外では実用的なEVとはまったく違う価値観を持つテスラに加え、次々とEVのバリエーションが増えて中国製EVも台頭。日本車のEVが持つアドバンテージは急速に減っているだけに、トヨタ&スバルのEVや日産アリアによる巻き返しを期待したいところだ。

●07.水素……「走行中は水しか排出せず、充填も短時間ですむ」という究極のエコカーであるFCVは20世紀から試作車はあったが、実用化への道は険しく、世界初の量産FCVとなったのは2014年登場のMIRAIだった。

 MIRAI以降量産FCVはクラリティ、ヒュンダイネッソなど数えるくらいしかなく、FCVの市販化が非常に難しいことがよくわかる。FCV、というより水素社会への移行には水素ステーションに代表されるインフラ整備や水素の生産方法など課題も多いが、次世代エネルギーとしての期待も大きいだけに成長を温かく見守ろう。

●08.クロスオーバーSUVブーム……SUV(クロカン)ブームは1990年代初めにもあったが、現在のSUVとクロスオーバーブームが始まったのは2010年代初めからである。

 その理由としてはSUVの側面衝突に対する有利さ、着座位置の高さによる視界や乗降性のよさ、新興国などでの整備されていない道路への対応、「車格がわかりにくい、クーペルックなどのバリエーションも作りやすい」といったことがあり、勢いはいまだ衰えない。

 SUVは現時点で飽和状態になっているだけに今後は淘汰されるものも出ると思われるが、SUVが市民権を得たのも事実だけに、これからもクルマの柱のひとつとなり続けるのは確実だろう。

●09.カーボンフリー……カーボンフリーとは「地球温暖化の原因となる二酸化炭素を出してはいけない」ということである。つまり、化石燃料を使うエンジンが付いたクルマは禁止となり、その時期は遅くとも2050年あたりである。

 その対応としてはまずEVやFCVといったものが浮かぶが、EVの電気の作り方など、総合的な二酸化炭素排出量やインフラ整備など、「現実的にはどうなのか?」という問題もある。

 そういったことも考えると、その答えはEVやFCVだけでなく、アルコール燃料や水素燃料といったエンジンにも可能性はあり、今後どうなっていくのかは常にウォッチしていく必要があるだろう。

●10.運転支援、アイサイト……自動ブレーキや運転支援システムは、2000年代末まで停止にこそ対応しなかったものの、その時点で基盤はできていた。

 日本で“停止まで対応”という大きな一歩を踏み出したのが「自動ブレーキなしがないから」という理由で認可された2009年登場のボルボXC60の先代モデルで、2010年には5代目レガシィに「機能と性能を考えたら激安価格」のアイサイトVer2が加わり、自動ブレーキ&運転支援システムはここから急速に進化していった。

 自動運転への発展は必要なハードウェアの増加によるコストアップもあり当面難しいにせよ、このふたつの進化はまだ新しい分野だけに必見。

(TEXT/永田恵一)

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