最近はすっかり保守的なイメージが染みついていて、軽自動車とファミリーカーが得意なメーカー……という印象のホンダだが、古いクルマ好きにとってホンダといえば、日本自動車史を変える立役者として何度もムーブメントを起こして市場のトレンドを牽引してきた改革者であった。
創業者である本田宗一郎の「チャレンジして失敗を恐れるよりも、何もしないことを恐れろ」という言葉どおり、チャレンジ精神あふれるクルマをたびたび輩出してきた。もちろん、時には大きな失敗もあるが、それもホンダの大きな魅力。
今回は、ホンダスピリットあふれるモデルをピックアップしていこう。
文/藤原鉄二、写真/ホンダ
採算度外視して理想を追求! 初代インサイト(1999~2006年)
セールス的には決して成功したとは言えないものの、技術のホンダのプライドを強烈に感じさせる一台がインサイトだろう。
当初、ホンダ独自の小型・普通乗用車用ハイブリッドシステム「Honda IMAシステム」が注目されたものの、蓋を開けたら燃費はライバルのプリウスのハイブリッドシステム「THS II」には及ばず……。
ではインサイトはどこがスゴいのか? それは良くも悪くも「頑固なまでのこだわり」だ。
とにかく軽くすることにこだわり、原価割れと言われたアルミボディを採用。車両本体価格の高いNSXならまだしも、インサイトは210万円……。結果、「売れれば売れるほど赤字になる」と揶揄されることに。
さらに空力にも徹底的こだわり、Cd値は初代プリウスが0.3だったのに対し、0.25を達成した。
そして乗車定員は2名、オプションも、ホンダナビゲーションシステム+4スピーカー、リアワイパーのみときわめて貧弱……と、実用性に関しては最小限とも思われる設定に。低燃費、低環境負荷を謳いつつ実用性は維持したプリウスに対し、インサイトは採算性、実用性を切り捨ててまで環境性能を追求したのだ。
セールス的には惨敗だったものの、「妥協はしない」という技術者魂を具現化した初代インサイトは、ホンダスピリットを感じずにはいられない名車なのだ。
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