2022年春発売「日産+三菱の新型軽EV」は日本のクルマ社会を変えるか

■EVと軽自動車はさまざまな相乗効果を得やすい

 最近は、ハイブリッド車の普及などによってクルマの燃料消費量が減った結果、給油所(ガソリンスタンド)の拠点数も減っている。給油所の数は1994年には6万箇所に達したが、今は3万箇所を下まわり、約30年間で半減した。

 公共の交通機関が未発達な地域では、1人に1台の所有を含めて軽自動車が普及したが、自宅付近の給油所が激減している地域もある。

その点で、EVなら自宅で充電できるから、遠方の給油所まで出かける手間を省ける。軽EVは利便性が高く、1人に1台の割合で軽自動車が普及している地域には、都市部と違って一戸建てが多いために充電設備も設置しやすい。

 このようにEVと軽自動車は、いろいろな相乗効果を得やすいから、普及は価格の引き下げに掛かっている。

 軽EVの当面の売れ方は、購入予算に余裕のある一戸建て世帯のセカンドカー需要が中心になるだろう。都市部ではマンションが多く、充電設備を設置しにくい。それでも日産の販売店は、急速充電器の設置を進め、今では設置可能な大半の店舗に行き渡っている。

 そこで課題になるのが、急速充電器の頻繁な利用に基づく駆動用電池の劣化だ。従来は急速充電器を頻繁に使うと駆動用電池の劣化が急速に進むため、自宅における充電が不可欠とされていた。急速充電器は緊急用という考え方も根強かった。

 ところがアリアの開発者は「アリアでは駆動用電池の冷却方式を刷新して、温度管理を確実に行う。従って急速充電器を頻繁に使っても、劣化を心配する必要はない」という。駆動用電池の冷却方式が進化して、急速充電器の使用に対する耐久性が向上すれば、都市部のマンションに住むユーザーも販売店の急速充電器を使って軽EVを所有することが可能だ。

三菱i-MiEVイメージ写真
三菱i-MiEVイメージ写真

 そして軽EVでは、ブランドイメージの構築や内外装のデザインも大切になる。前述の通り軽自動車でもEVになると価格は補助金を差し引いて実質200~240万円に達するため、例えばノートオーラのような「小さな高級車」的なプレミアム感覚、付加価値が求められる。EVや軽自動車の本質から外れる話だが、軽EVを都会的で先進的な移動のツールとして根付かせるには不可欠だ。

 運転感覚も大切で、モーター駆動による滑らかさと静かさに磨きを掛け、乗り心地や内外装の質も高めたい。乗員を心地よく感じさせるクルマに仕上げることが大切だ。

■今後も軽自動車を使い続けるためには規格を見直す必要がある

 過去を振り返ると、今までにも三菱が軽EVのi-MiEVを用意したが、ほぼ同時期に日産からリーフが発売された。リーフは改良を重ねて2017年に2代目の現行型へ発展したが、i-MiEVはあまり手を加えられずに販売を低迷させた。そのために現時点では、軽EVの存在自体があまり認識されておらず、2022年度に登場する車種が実質的に最初の軽EVになる。この成否は、軽EVというカテゴリーの行方にも大きな影響を与える。

三菱 軽自動車EV「i-MiEV」
三菱 軽自動車EV「i-MiEV」

 その一方で2030年度燃費基準の実施を踏まえると、軽自動車のハイブリッド化も重要だ。例えばN-BOX・Lの車両重量は900kg、WLTCモード燃費は21.2km/Lだが、2030年度燃費基準をクリアするには27.8km/L前後まで向上させる必要がある。比率に換算すれば31%だ。現在施行されている2020年度を含め、燃費基準はCAFE(企業別平均燃費方式)に基づくが、軽自動車は率先して達成する必要がある。

 軽自動車に多く使われるマイルドハイブリッドは、価格の上乗せについては実質4万円前後に収まるが、燃費向上率も約5%と小さい。マイルドハイブリッドでは、2030年度燃費基準には対応できない。

 ストロングハイブリッドであれば、ノーマルエンジンに比べて30~50%の燃費向上を達成できるが、価格も35~60万円の上乗せになってしまう。仮に35万円でも、155万9800円のN-BOX・Lが190万円に値上げされる。これでは「実質的な金額が200万円から」という軽EVとあまり変わらず、軽自動車を買えないユーザーが生じる。それでは公共の交通機関が乏しい地域のライフラインが支障を来たす。

 そうなるとストロングとマイルドの中間的なハイブリッドを開発して、価格の上乗せを20万円程度に抑えながら、約30%の燃費向上を実現せねばならない。軽EVの開発と併せて、高効率かつ割安な軽ハイブリッドも重要だ。

 軽自動車の開発者は「今の軽自動車は車両重量の割に排気量が小さく、800cc前後まで拡大した方が、優れた燃費効率を達成できる」という。軽自動車税などを高めずに、軽自動車の排気量枠を拡大することなども考えたい。今後も軽自動車を使い続けるには、EVやハイブリッドも大切だが、ユーザーの目線で軽自動車の規格を見直す必要もある。

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