新車発表の前半戦。レッドブルRB18を筆頭に、アストンマーチンAMR22、マクラーレンMCL36、アルファタウリAT03、そしてウイリアムズFW44が華々しく発表された。
遂に姿を現した各マシンたち。さて新レギュレーションでどのようにマシンが変わったのか。元F1メカニックの津川哲夫氏に解説していただいた。
文/津川哲夫、写真/Redbull,McLaren,Aston Martin
■新レギュレーションにそれぞれのアプローチ。各チーム違うデザインで出てきた!
2022年F1シーズンもいよいよ開幕間近。もちろん全く新しくなったレギュレーションでの初シーズン、長年築いてきた20世紀型F1にいよいよ別れを告げる時がきた。
というわけで、開幕前のバルセロナテストに向けて続々と新車の発表が行われている。既にレッドブルRB18を筆頭に、アストンマーチンAMR22、マクラーレンMCL36、アルファタウリAT03、そしてウイリアムズFW44が姿を現した。
その中でレッドブルRB18とウイリアムズFW44のウェブ発表はベースがFIAフレームで行われたが、RB18はメインスポンサーの発表用、そしてウイリアムズもカラーリングとこれまでに決まっているスポンサーロゴの発表に留まった。
■姿を現したF1マシンたちを解説していこう
さて、実際に新マシンを見ていくことにしよう。ただし、上記5台のうち、レッドブルRB18については、後日実車が公開されてから解説したいと思う。
アストンマーチン AMR22
新車発表といっても近年は機械的な部分については実走までお預けが常識化している。しかし、その発表会でほぼ実車を出してきたのがアストンマーチンAMR22。事実上今シーズン型としては初めて披露される実車であり、AMR22のエアロアプローチが斬新で、今シーズンのタイトなレギュレーションの中でもまだまだ開発領域が残されている事に嬉しくなった。
AMR22はノーズ上面にフラットサーフェースを選択し、サイドポッドのエントリーダクトはインサイドのスクエアインテークが前方にはみ出し、アウター側はエイリアンアイ的に後方につり上がる2系統に分割されている。内部的に分割は当然だがエントリーダクトの形状から異なる手法は極めて珍しい。さらにサイドポッドはそのまま後方に幅広く伸び、上面面積を確保しリアウイングへと上面流を導いている。さらに上面部には排熱スリットが数多く切られていて、上面排熱と後方空気流の効率向上が一体化した方法を採っている。
マクラーレン MCL36
次に登場したマクラーレンMCL36はアストンマーチンとは違ったアプローチだ。ボディワークの処理は昨年までのレッドブル的なサイドポッド後方部を形成して、サイドポッド下部のアンダーカットを設定していない。
エアロ的には冒険的ではなく、あくまでも実戦配備で、戦闘力の高さを感じさせる。また、これまでに発表の5車の内唯一フロントサスペンションにプルロッド方式を採用している。これは18インチホイールの採用でホイール内空間容積が増し、ハイライズモノコックでもプルロッドの入角をしっかりと造れるので問題はないはずだ。アストンマーチンがエアロでの革新狙いなら、マクラーレンは実戦型のオーソドックスな形をとった風に思える。
アルファタウリ AT03
さらに気持ちの良い程にFIAフレームのワンメークス的ダサさに対してスマートなアプローチを施し、F1の神髄はここにありとばかりに、如何にも速そうで見事に格好良さを作り上げてきたのがアルファタウリAT03であった。
細くタイトなハイライズモノコック。ナローコンパクトなサイドポッド。小さなエントリーダクトとポッドサイド下部の強く抉られたアンダーカット。ヘッドプロテクターがリア後方へ同じ幅で伸びる双肩部、まるでF1とはこうあるべきとの主張が聞こえてきそうなAT03である。今シーズンの厳しいレギュレーション下でもここまで格好良く出来る、というべきか。その塗装も含めて芸術的といったらいい過ぎかもしれないが、それほど感激的なAT03である。
ウイリアムズFW44
そして5台目がウイリアムズFW44。配信での発表では完全にFIAフレームにウイリアムズ・ブルーを施しただけの発表モデルでガッカリさせられたのだが、その直後にシルバーストーンでのシェイクダウン映像が登場。そこには実車FW44が登場していた。これまで発表されたマシン群の中で最も3D曲面を多用したデザインで、ノーズからモノコックへの繋がりに単調性はなく、ヌメヌメとした3D曲面で覆われている。フロントサスペンションはエンジニアリングの基本に戻ってアッパーアームに上反角を持つジオメトリーを採用し、2017年以降続いてきたウイリアムズ方式の極端なエンジニアリングから大きく脱皮している。
エアロではサイドポッド後方を極度に落とし込み後方フロア空間を大きく確保し、エンジンカバーは一枚壁の様に横に広がらずコークパネルへ真っすぐに落ち込んでいる。インダクションボックスは大きく太いまま後方まで伸ばされ、センタークーリングの排熱をここで受け持ち、後方空気流の効率が考慮されている。実に斬新ながら実にウィリアムズ的処理だが、今までに無く期待を持たせてくれる。
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