■気分は「日本一速い男」だ!?
チェリーはFRと比較するとフロント駆動で独特な挙動があったそうだが、停止状態からの加速ではトルクステアはまったく出なかった。
しかし、旋回中にラフにアクセルを開けるとステアリングにキックバックが発生してアンダーステア傾向になる。
ここでアクセルを丁寧に戻すとテールが流れてノーズの向きが変わる。そこから丁寧にアクセルを踏み込むと気持ちよく旋回してくれる。これが星野さんの得意としていたタックインという技だ。
この挙動は、チェリーというクルマだからこそできるテクニックだと思う。今では電子デバイスがドライビングをアシストしてくれるが、初期型サバンナRX-7もそうだったように、クルマのネガティブな特性をねじ伏せてコントロールできるドライバーって凄くカッコよかった。
「チェリーの星野」と呼ばれるほど卓越したドライビングを披露していた星野さんの雄姿と日産チェリーX-1Rは後世に残ると改めて思う試乗になった。
■A12型エンジン探索
A型エンジンは日産自動車を代表する名機だ。1966年から2008年までさまざまな車種に搭載された。X-1Rにはスキナーズ・ユニオン(SU)社製ツインキャブ搭載1171ccの水冷直列4気筒OHVが載せられ、最高出力80ps/6400rpm、最大トルク9.8kgm/4400rpmを発生。
数字だけ見ると非力と思えるが、車重600kg台のX-1Rは俊敏な加速を体感させてくれる。モータースポーツシーンにおいてもチェリーをはじめサニーなどに搭載された。チューニングが施されたレース用A型パワーユニットは幅広いカテゴリーで実績を残した。
●日産 チェリークーペ1200 X-1R(1974)主要諸元
・全長×全幅×全高:3690×1550×1310mm
・ホイールベース:2335mm
・車両重量:645kg
・エンジン形式:直列4気筒OHV
・総排気量:1171cc
・最高出力:80ps/6400rpm
・最大トルク:9.8kgm/4400rpm
・ミッション:4速MT
・駆動方式:FF
・サスペンション:前)マクファーソンストラット/コイル 後)トレ―リングアーム/コイル
・ブレーキ:前)ディスク 後)リーディングトレーリング
・タイヤ:前後185/60R13(標準165/70HR13)
●プリウス武井って誰?
本名は武井寛史。一応レーシングドライバーとしても活動する映像製作会社社長(が社員なし)であり、「稀代のスーパーカー手配師」と呼ばれる男。愛車がリースの3代目プリウスのため当連載ではプリウス武井を名乗る。
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