あらかじめ設定した速度内で、前走車との車間距離を維持しながら、一定速走行を支援してくれる、アダプティブクルーズコントロール(ACC)。このACCで設定できる上限速度は、多くの国産メーカー車で135km/h。ただ、国内の高速道路の最高速度は、高いところでも120km/hまでであり、制限速度以上にACCを設定できることは、疑問に思いますよね。なぜACCは制限速度以上に設定できるのでしょうか。
文:吉川賢一/アイキャッチ画像:Adobe Stock_utah51/写真:Adobe Stock、写真AC、NISSAN
【画像ギャラリー】なぜ180km/hまで設定できるの?? ACCが制限速度以上に設定できるワケ(7枚)画像ギャラリードライバーの疲労軽減のほか、低燃費の効果も
クルマに搭載されているレーダーやカメラで、前走車との距離や速度差を測定し、クルマが自動的に速度を制御してくれる運転支援技術のひとつであるACC。昨今はステアリングアシスト機能もあるACCが主流であり、なかにはハンズオフで高速道路を走行できる車種もあります。
ドライバーのアクセル操作とブレーキ操作を支援してくれることから、ドライバーにとって、長距離運転時には大変ありがたい装備であり、ACCを利用することは、無駄な加減速を減らすことができるため、低燃費の効果も期待できます。
そんなACCの国産車における設定上限速度は、装備が採用され始めた当初は115km/hでしたが、昨今は135km/hを上限とする国産車が増えています。
制限速度以上に設定できるのは、メーター表示車速と実車速には乖離が発生してしまうため
この115km/hという数字は、速度上限が時速100kmだった当時の高速道路の事情を鑑みて、国土交通省と自工会、自動車メーカーが示し合わせたもの。設定上限速度を時速100kmとしなかったのは、スピードメーターが示す数字と、実際の車速の間にある「誤差」を考慮しているためです。
実は、スピードメーターが示す車速は、車輪速センサーで計測したタイヤ回転数とタイヤ外径から割り出した推定値。タイヤの外径や外的要因(追い風、向かい風、ウェット路面など)の違いによって、実車速とは多少乖離してしまいます。タイヤが摩耗したり、空気圧が規定値とずれていたり、インチアップやインチダウンをすれば、実車速と数%のずれが生じることも。
たとえば、外径600mmのタイヤ(185/60R15に相当)が5mmすり減ったとすると、実車速は約1.7%低下、メーター読みだと時速100kmなのに、実車速では時速98.3kmにまで目減りしてしまいます。その反対に、空気圧が高めだったりすると、制限速度オーバーとなることも考えられます。そのため、スピードメーターの車速には、道路運送車両法の保安基準で、実車速との許容誤差範囲が規定されています。
※車検時のスピードメーター表示の誤差の許容誤差
10(V1-6)/11≦V2≦(100/94)V1
(2007年以降に製造された車の場合。V1:メーター表示、V2:実車速)
この計算式によると、実車速が時速40kmの場合だと許容誤差は31.0≦V2≦42.5km/L、時速100kmだと94.0≦V2≦116.0km/L、時速120kmだと112.8≦V2≦138.0km/Lとなります。ポイントは、車速が高い側には許容誤差が大きいこと、つまりスピードメーター表示は実車速よりも低めに出すことを推奨していることです。これは、交通事故抑止の観点からも、このほうが適切だと考えられるから。
「車速」として正しいのは実車速であり、警察が取り締まるスピード違反は後者の実車速をみているのですが、こうした理由から、ACCの設定上限速度は、制限速度よりも多少高く設定されているのです。
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