■飯田裕子の思い出深い味のクルマ──トヨタスターレット(KP61)
●噛めば噛むほどうまみが出る
思い出のクルマは何台かありますが、味に例えるならKP61スターレット。モデルというよりも一個体はまるで“さきイカ”のような乗り味でした。
かつて素人向けのジムカーナレッスンに誘われ、友人のAE86トレノかランサーターボかKP61を借りることなり、最もボロかったKP61を選択。
ギコギコと音が聞こえてきそうな締りのないサスと大きくて細いステアリングホイールを回した時のまとまりのない挙動のバサバサ感が〝さきイカ〟のよう。
運転にも問題はあったはず。しかしそんなクルマでも走るごとにタイムが上がり味をしめ、楽しさ(美味しさ)に変わっていったのはまさに噛めば噛むほど……系でしょ。
その上手さならぬ旨さがレースを始めるきっかけにもなりました。
【画像ギャラリー】激辛ラーメン? ホロ苦い飲み物?? 忘れられないクルマの「思い出の味」(7枚)画像ギャラリー■国沢光宏の思い出深い味のクルマ──グループNのラリー車
●何ものにも代え難い“美味しさ”
やはり競技車両の味でしょう。
ハンドル握ったことのある人なら御存じのとおり、悦楽の極みにある。すべてがダイレクトで強い。高性能バトルスーツのようなモンだ。ただピュアなレース用車両だと、サーキットしか走れない。
そんな時に出会ったのがグループNのラリー車でございます。
内容は気合い入った競技車両そのもの。SSで林道をフルアタックした時の気持ちよさったら、どんなスポーツカーだって色あせるってモン。
以来、ラリー車から抜けられなくなってしまった。現在作っているリーフのラリー車も悦楽の世界を見せてくれるか? 競技車両の味を持っているだろうか?
大いに楽しみです。
【画像ギャラリー】激辛ラーメン? ホロ苦い飲み物?? 忘れられないクルマの「思い出の味」(7枚)画像ギャラリー【番外コラム】クルマの味は風土が作り出す
国による「クルマの味」の違いは、使われている道路状況から出てくる。
例えばドイツ車ならアウトバーンの全開走行がクルマの味に決定的な影響を与えてます。
当然のごとくエンジンは連続高回転&高負荷なので、振動を徹底的に抑えなければならない。6000回転の連続使用で振動出てたら、もう辛抱タマらなくなりますから。空冷時代のVWビートルでもアクセル全開で振動出さず。
足回りは微少舵角のコントロール性を追求しなければならないため、ステアリング系の剛性にこだわる。そして最高速からフルブレーキングをかけてもガッチリ利く強力なブレーキを持つ。
シートはポジションをキッチリ取っていないと危険なので、座面と背面がワンポイントに固定されるような形状。ここまで読んで「ドイツ車そのものですね!」と思うことだろう。アウトバーンが育てたワケ。
同じ欧州でもフランスはアウトバーンほど道が整備されていない。というか、荒れた道が多く、ベルギー方面へ行くと湿地なので石の路面になる。加えて大半の地域で平坦。直線多し。
こういう地域だとソフトなサスペンションやシートを進化させることになります。平坦地なのでエンジンパワーも必要なし。車体サイズを考えればアンダーパワーのクルマでもまったく問題なし。これまた旧世代のフランス車そのもの。
イギリスの道を走ったことのある人なら御存知だと思うが、一般道の舗装率は100%。道もいい。流れる速度が高く、地方に行けば古くからある領地の関係で(丘陵が多い)曲がった道ばかり。サスペンションストローク不要。ハンドリングやアクセルレスポンスがよくないとアカン。旧世代のミニやジャガーそものだ。サスペンションストローク、超少ない。ダブルウィッシュボーン大好きだし。
アメリカ車の味は、広大な国土が育てた。
そもそもボディサイズなんか上限なし。むしろ低くてワイドで、というカッコよさを追求する方向になる。
ガソリンも安価だったから、大排気量エンジン上等! 制限速度が低く、遠くへ行こうとすれば数時間のドライブも普通なので、寝返りが打てるようなシートになる。いいオーディオや快適なエアコンなんかも必要ですね。これまたアメ車だ。
難しいのが日本車の味。日本に居るとまったくわからない。自分のクセは自分じゃわからないのと同じか? ただ外国で日本車を見ていると「ダントツの信頼性」と「乗りやすさ」を強く感じる。日本車って本当に壊れないし、ステアリング握ると強い癖を持たず乗りやすいのだ。実際、外国の人に聞く日本車は「やさしくて穏やか」だという。日本人って人の気持ちを察する能力が高い。「気配り」こそ日本車の味か?
(TEXT/国沢光宏)
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