2024年6月に登場したホンダ フリード。シンプルですっきりしたデザインと、e:HEVへと進化したハイブリッドも相まって、ライバル車であるトヨタ シエンタの牙城を脅かしている。試乗したテリーさんも絶賛なのだが、ちょっと気になることもある!?
※本稿は2024年9月のものです
文:テリー伊藤/写真:茂呂幸正、ホンダ
初出:『ベストカー』2024年10月10日号
■新型フリードは好感度かなり高め!
先代のモデル末期でもよく売れていただけに、新型フリードは登場直後から大人気。納期が長期化するなど販売店もうれしい悲鳴をあげているらしい。
人気車のモデルチェンジは難しいものだが、8年ぶりに一新した3代目フリードはとてもうまくやったと思う。ステップワゴン譲りのシンプルなデザインもいいし、ハイブリッドがe:HEVに進化したのもいい。
今回乗ったのはエアーの6人乗りで、2列目がセパレートシートのタイプだったが、そのおかげで3列目に座っていても視界がよく、圧迫感がない。また、その3列目が実用的に使える広さがあるのも素晴らしい。
走りも凄くよかった。今回の試乗車はe:HEVだったが、「フリードの走りってこんなにいいのか」と素直に驚いた。ブレーキもいいし、コーナーで車体が沈む感覚もまたいい。
意外とAピラーが寝ているが圧迫感はなく、フロントウィンドウまでのだだっ広い空間も、普通なら「ムダだな」と思うところだが、フリードの場合は、ここにクリスマス、ハロウィーン、お正月など季節ごとの飾りを置くのも楽しそうだなと思える。
つまりは「あばたもえくぼ」というやつで、新型フリードの好感度はかなり高い。シエンタが最大のライバルになるわけだが、どちらかを買うとしたらフリードかな? というのが素直な感想である。
ただ、気になるのは価格の高さで、今回の試乗車は304万7000円。オプション込みだと357万1700円だから、購入時の総額は380万円くらいになるだろう。コンパクトカーでその値段はハードルが高い。
もうひとつ、SUVタイプのクロスターにしか2列シートが設定されないのが残念。
今、気に入って使っているルーミーの代替車として新型フリードは候補のひとつなのだが、希望はクロスターよりスッキリしたデザインとなるエアーの2列シート。でも、それがない。このことを残念に思っている人も多いのではないだろうか。
【画像ギャラリー】そのミニバンに未来は乗っているのかい!? 好感度爆上がりのホンダ フリード(40枚)画像ギャラリー■俺たちの未来はどこへ行ったのか!?
少々残念なところもあるとはいえ、新型フリードは満足できるクルマで、モデルチェンジが成功だったのは間違いない。
だがしかし、取材後にフト考えてしまったことがある。「最後に買う新車がフリードというのはどうなのだろうか?」ということだ。
私たちの世代は子どもの頃、大きくなったら東京の空を円盤が飛んでいると思っていた。愛読していた『少年サンデー』にはそんな未来の予想図が載っていて、今頃、空飛ぶクルマは当たり前になっているはずだったのだ。
だが、あれから60年たった今、私は新型フリードの走りがよかったことを喜び、2列シートがクロスターにしかないことや、思った以上に高価になったことを嘆いている。あまりにもスケールが小さい。子どもの頃に夢見ていた未来図はどうなっているのか!
自動車メーカーは従来型の欠点を潰すことばかりに気を取られ、「想像を絶するようなクルマを作る」という仕事を忘れているのではないだろうか。だからいつまで経っても同じようなクルマが出てくる。想像力が不足しているのだ。
新しいものには必ず違和感や嫌悪感が付いてくるものだが、メーカーは逆に違和感や嫌悪感を感じさせないことばかり気にしてクルマを作っている。だから驚きがない。
新型フリードに罪はない。おそらく販売も成功するだろう。だが、それで終わっていいのか? とちょっと考えてしまったのも事実なのである。
●ホンダ フリードe:HEV AIR EX(FF、6人乗り)304万7000円(CVT)
3代目ホンダ フリードは2024年6月登場。エンジンは直4、1.5Lのガソリンとハイブリッドで、ハイブリッドは最新のe:HEVに進化。
ボディサイズは全長4310×全幅1695×全高1755mm、ホイールベース2740mm、車重1480kg(試乗車)で、エアーは3列シート(6人乗りと7人乗り)のみ、クロスターは3列(6人乗り)と2列シート(5人乗り)を設定する。
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