■過去を振り返るとどうだったのか?
そもそも過去を振り返ると「クルマのヒエラルキーはボディサイズとエンジン排気量に比例する」というクルマ観を作ったのはトヨタであった。1955年に初代クラウンを実質的な日本初の量産高級車として発売し、1957年にファミリー向けの初代コロナ、1961年には価格の安さを重視する小さな初代パブリカという具合に車種構成を整えた。
1966年にはコロナとパブリカの中間に位置する初代カローラ、1968年にはコロナとクラウンの間に初代コロナマークIIを加えており、これらはすべてボディサイズとエンジン排気量を基準にしたヒエラルキーに沿っている。
レクサスブランドも例外ではなく、前輪駆動プラットフォームのSUVでは、上級のRXが最も大きく豪華で、中級になるミドルサイズのNX、コンパクトなUX、さらに小さなLBXと並ぶ。このレクサスファミリーの中にいる限り「ヒエラルキーを超えた」表現は理解されにくい。
本当にヒエラルキーを超えるなら、トヨタやレクサスとは価値観の異なる3つ目のブランドを立ち上げるべきだ。それが無理なら、LBXはせめて1.6LターボのモリゾウRRを最初に発売して、ヒエラルキーを超えたクルマとしてのインパクトを強めるべきだった。
また420万円の安価なグレードは設定せず、500万円以上を充実させれば「ヒエラルキーを超えた」クルマ造りにも現実味が生じた。
いずれにしろ日本車では、LBXのグレード構成の変化からも分かる通り、グレードを豊富に揃えるクルマ造りが王道だ。これは顧客の希望に綿密に応える配慮でもある。
ヒエラルキーも同様で、高級感や価格をボディサイズやエンジン排気量に比例させれば、ユーザーが選ぶ時に分かりやすい。発売当初は豪華グレードを顧客に買わせて、遅れて廉価版グレードをラインナップするのはやめてほしい。選べる自由と分かりやすい車種/グレード構成は、日本車のメリットとして今後も継承すべきだ。
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