世界中すべてのクルマ乗りの憧れといっても過言ではないポルシェ 911。現行型である992型に、最も過激で刺激的なGT3 RSがラインナップ。いよいよ登場した真打ちを、おなじみプリウス武井が都内の公道と“東京のニュル”首都高速で試乗レポートする!!
※本稿は2024年11月のものです
文:プリウス武井/写真:小林邦寿
車両協力/Porsche Japan
初出:『ベストカー』2024年12月10日号
■モデル末期を飾ってきたGT3RSが登場
ポルシェの歴史において「RS」は特別なモデルであり、なかでも「GT3RS」はポルシェの技術力の象徴で、集大成的な存在だ。先代を超えるパフォーマンスを実現しないと世界中で笑われてしまうという重圧のなか、開発チームには常に高い技術水準が求められている。
「RS」とはドイツ語で「レンシュポルト」、英語で言うところの「レーシングスポーツ」の意味だ。
この言葉が初めてモデル名に使われたのは、漫画『サーキットの狼』で主人公の風吹裕矢のライバル、早瀬左近の相棒として登場した初代911、通称「73カレラ」である。
その後、自然吸気エンジンを搭載した911モデルには「カレラRS」の名が与えられるようになった。GT3RSが初めて登場したのは、5代目996型から。
それ以来、最新の911が発表されるたび、モデル末期には必ずGT3RSがラインナップされるのがポルシェの伝統。次のモデルへの期待が高まるのもルーティンとなっている。
以前、同型GT3のインプレッションレポートを書いた時から、GT3RSの登場を待ち望んでいた。2022年8月18日に公式発表があり、その後、日本に導入されるまで約2年のタイムラグがあった。
スーパーカー劇場は月イチ連載であり、現在は「絶版車劇場」と並行して進行しているため、最新モデルを都合よく紹介するのが難しい。ほかの媒体ではすでにロードインプレッションの記事が掲載されていたが、実際に自分がドライブするまで、それらのレビューは一切見ないようにしていた。
今回の記事の掲載は11月号(Web公開はさらに先です)だが、実際に試乗したのはうだるような暑さの9月上旬で、やや季節感にズレがある。しかし猛暑の時期は、クーリング性能や室内環境をチェックする上では最適だ。
ポルシェの開発拠点であるヴァイザッハは、日本のような高温多湿の環境ではないため、都内の異常な暑さのなかでどのようなパフォーマンスを見せるのか興味もあった。
【画像ギャラリー】風格漂う路上の王者!! 現行992型の掉尾を飾るポルシェ 911 GT3 RS(28枚)画像ギャラリー■東京で「特別なポルシェ」を味わう
ポルシェが世に送り出した6代目となるGT3RSを、首都高速と都内の一般道で試乗。結論から書いてしまうと、サブタイトルに掲げた「ポルシェを超えるのはポルシェだけ」という言葉が浮かぶほど、素晴らしい仕上がりだった。
個人的に911はスーパーカーではないと断言してきたが、この992型はスーパーカーと呼べるパフォーマンスを秘めていた。
取っ手を持って引くだけで軽さが感じられるドアを開け、室内に乗り込むと、豪華さと研ぎ澄まされたレースマシンの雰囲気が共存したインテリア。シートはバケット形状ではあるが、セレブを満足させる質感があり、体を包み込むホールド性も抜群だ。
この個体には、軽量化を図るための「ヴァイザッハパッケージ」が装備され、後部にはカーボン製ロールケージが備わり、特別なポルシェだと理解できる。
イグニッションキーを回すと、ポルシェ伝統の水平対向エンジンが力強い排気音とともに目覚めた。アイドリングでも、市販車とは思えない排気圧の高さでスペシャルなエンジンが搭載されていることがシートを通して伝わってくる。
トランスミッションは熟成された7速PDK。マニュアルモードでのシフト操作は安心感すらある。変速時のシフトショックはまったくない。もちろんATモードでも文句はない。ゆっくり走っていると素早く高いギアに移行して、燃費も抑えてくれる。
今回のインプレッションでは終始マニュアルモードで走行したため、燃費は6.25km/Lとなったが、ATモードならばより向上したはずだ。
整備された都内の道路では、シャシーの剛性の高さから若干硬さを感じるが、スポーツカーに慣れたドライバーにとっては心地いい。凹凸のある路面でも突き上げ感は軽微でストレスを感じるレベルではない。一般道ではその真のポテンシャルを感じることは難しいため湾岸線から首都高に入った。
【画像ギャラリー】風格漂う路上の王者!! 現行992型の掉尾を飾るポルシェ 911 GT3 RS(28枚)画像ギャラリー
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