ハイブリッドの需要が高まっている今日この頃、日産は本格ハイブリッドといえるパワートレインを持っていない。厳密にはe-POWERがあるものの、高速道路の燃費の悪さは非常に悪く効率的ではない。そこまでして、日産がe-POWERにこだわり続ける理由は一体?
文:国沢光宏/写真:ベストカーWeb編集部
【画像ギャラリー】知ってた? 日産初のハイブリッド車は[ティーノ]だった!!!!!(8枚)画像ギャラリー■e-POWERのみに頼るのはかなりの限界
日産がアメリカで大きく台数を減らしてしまった原因の一つは、120km/hを超える高速域で燃費の良いハイブリッドを持っていないためである。こう書くと「e-POWERもハイブリッドでは?」と思うことだろう。
確かにe-POWERは、エンジンと電池、モーターという2つの動力源を持つハイブリッドだ。なぜ高速燃費が悪いのか? 良い機会なのでジックリ紹介していきたい。
アメリカの高速道路、走ったことのある人なら解る通り、驚くほど平均速度高い。制限速度75マイル(約120km/h)区間が多く、新東名のようなもの。この速度域になるとハイブリッド車の意味なし! ほぼエンジンのパワーだけで走ることになるからだ。
参考までに書いておくと、2500ccエンジンのRAV4で120km/hで走行した際の燃費は13.7km/L。RAV4ハイブリッドも13.7km/Lで変わらず。 RAV4やCR-Vのハイブリッドは120km/h燃費で普通エンジンと同等。そして速度域落ちてくると圧倒的に燃費良くなってくる。トータルで考えれば「燃費いいね!」。
アメリカで大量の在庫を抱えたローグ(日本名:エクストレイル)の燃費を見ると、120km/hで13.2km/Lと、RAV4やCR-Vより少し劣る程度。こいつをe-POWERにしたらどうか? 10%以上落ちてしまう。
e-POWERの場合、エンジン直結駆動モード無し。発電機>インバーター>モーターで熱効率を落とす。トヨタのハイブリッドは高速巡航だと事実上の直結モードだし、ホンダも直結モード付き。エンジンパワーを車軸に使えるまでの伝達効率で言えば95%前後をイメージしてもらえばいい。
e-POWERはそれぞれの伝達効率(熱効率)を95%としても、86%になってしまう。 いや、86%というのは熱損失をあまり考えていない。連続する高速域&大出力領域だとさらに効率落ちると思う。
実際に、エクストレイルのe-POWERで新東名の120km/h巡航したら、普通エンジンより燃費が悪い。速度域上がれば上がるほど燃費が悪くなっていく。日産だってそいつを認識しているから出さないワケです。解決策は「直結モードを作ればいい」。その気になれば可能だ。
【画像ギャラリー】知ってた? 日産初のハイブリッド車は[ティーノ]だった!!!!!(8枚)画像ギャラリー■直結モード付きのe-POWERを出さなかったワケ
エンジンと発電機は直結しているし、発電機の横に駆動用モーターがある。クラッチで繋いでやればいいだけ。ホンダの2モーターハイブリッドと同じになります。でも現在進行形でやっていない。なぜか? 日産の中にe-POWER信奉者がいるらしく、直結モードを許さないという。
もう少し詳しく書くと、日産社内にも直結モード推進派はいるけれど、負けている。なぜe-POWERを支持するかとなれば、安いからだ。例えばノートは「eペダル」という制御を行っている。本来ならハイブリッドのブレーキは「ブレーキbyワイア」を取り入れなければならない。
ブレーキペダルは単なるスイッチで、ペダルの操作量をセンシングして回生量と油圧ブレーキの配分を行う。トヨタは初代プリウスからブレーキbyワイアを採用してきた。 日産はコストを掛けたくなかった。苦し紛れで考えたのが「eペダル」である。
アクセルを戻すと、最大限の回生を行うというもの。コストダウンのため、ブレーキbyワイヤを採用できない。単純にアクセル戻した時にフル回生すれば、回生量を増やせ、実用燃費を伸ばせるのだった。安価だし技術的には劣るものの、これを「凄い!」と考える人もいるから興味深い。
ちなみにトヨタやホンダのハイブリッドも、その気になればeペダルのような強い回生を掛けられるが、ヘタクソの運転だと常に前後方向のGを出すし、そもそも頻繁に回生すると燃費は落ちる。
燃費ベストな乗り方は、加速したら電車のように滑走。止まる時にブレーキペダル踏んだ量だけ回生するというもの。ハイブリッドや電気自動車のエコランテクニックです。
今後日産は直結モード付きのe-POWERを出すのか? もはやそんな体力は無し。ホンダと経営統合すれば、次期型エクストレイルなども直結モード付きホンダの次世代2モーターハイブリッドを採用することになる。
ノートのようなBセグも、ホンダの次世代コンパクト2モーターハイブリッドを使うしかあるまい。e-POWERの直結モード付きを作らなかったのは日産経営陣最大級の失策だと思う。
【画像ギャラリー】知ってた? 日産初のハイブリッド車は[ティーノ]だった!!!!!(8枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方頻繁に回生すると燃費は落ちる。←論拠不明、バッテリー容量に限りがある以上、一般論では頻繁に回生したほうが燃費がいいに決まっている。
e-POWERの直結モード付き。←それはシリーズハイブリットではない、BEVと同じ操作感で電欠しないと言うe-POWERの利点が消えて、他社と同じになるだけなので競争力がなくなる。
e-powerすごい!って思いたい気持ちは分かりますけど、
日本でしか売れないなら意味がないんですよ。
どのメーカーもそうですけど、海外の売上が重要なんです。
だから日産一人負けなんです。
日産ユーザーは現実を見てください。
エクストレイルのe-POWERは新東名を120キロで走っていても15km/Lぐらい走りますよ。
エクストレイルのe-POWERはブレーキバイワイヤーですよね。
発電エンジンの排気量が小さいので、他のライバル車と比べて自動車税が1ランクとか2ランク安いのは大きいです。
高速道路での燃費が悪と言うけどずっと高速道路を走ってる人って少ないと思うけどな
アメリカの話だと理解されているのか分かりませんが、通勤でフリーウェイをあたり前のように乗りますよ。
国沢さんご指摘のように、e-POWERが通用するのは日本のような、特殊な道路事情の国だけでしょう?
あと、あれほどBEV一辺倒だった中国が今やHVEやPHVEが主流だというのですから日産は完全に梯子を外された格好です。中国メーカーしたたかです、ちゃっかりハイブリッド用意してました。
e-POWER無くしてe-4ORCEが成り立たないので、あとは高速走行を車生涯どれくらいするのかで選べば良い。それでも普通に巡航してればエクストレイルでも22km/lくらい行くので不満はないし、むしろこの手のネガティブキャンペーンは不要。
筆者は、日産低迷の一因が米国での販売不振にあり、その原因は高速燃費が厳しいe-POWERしか持っていないからだと指摘しているのであって、申し訳ありませんが、もり様のコメントは的外れのようです。
ブレーキバイワイヤではなく油圧ブレーキで仕組みが単純=安全だからe-powerを買いましたけどね。
そしてE12はアクセルだけで停止できるのがすごくいい。
これをアクセルだけで止まれなくしたのが、E12からの買い替えを阻害したと思いますよ。
別の方が書かれていますが、マツダやスバルはこれまでまともなハイブリッドなしで売れています
コンシューマーリポート等でもわかる様に日産は北米では韓国車以下の信頼性と評価されています。
要は価格に見合う品質が無いという事です。
e-Powerがどうのこうのではありません。
黒沢さん日産がHV持たないから売れんという理由は、少し当てはまらないと思いますね。
ではスバル、マツダはどうでしょうか?両社HV在りませんよ。それでも売れてるのはほかに問題があるからだと思います。
ルノーその他に、
「日産はEVだけやっとけ」
「お前ら俺達に逆らったんだからタダで済むと思うなよ」
と圧力をかけられ、カルロス・ゴーン逮捕後もギリギリ許されたのがe-POWERだったのかと思います。
とっくに発売されていた筈の1モーター2クラッチハイブリッドシステムの9速バージョンも西川社長をが排除され開発を中断させられたわけですし。