ええ、超高級車がパリダカ出てたの!? マシンの現在の価格がヤバかった

ええ、超高級車がパリダカ出てたの!? マシンの現在の価格がヤバかった

 時にお金に余裕のある酔狂なクルマ好きは、後世のクルマ好きが喜ぶぶっとんだお話を生み出してくれる。今回紹介するのはそんな類いのエピソード、そしてそこから生まれた珍しいロールスロイスのお話である。

文:古賀貴司(自動車王国)/写真:アギュト

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■酔っ払って思いついたアイディアが現実に

当の本人たちは本気なんだろうが、笑わずにはいられない実際の写真。ここまでこぎ着けた熱意には拍手を送らざるを得ない。
当の本人たちは本気なんだろうが、笑わずにはいられない実際の写真。ここまでこぎ着けた熱意には拍手を送らざるを得ない。

 高級車の代名詞ロールスロイスをパリ・ダカールラリーで走らせる、なんてことは、酔っぱらってでもないかぎりは思いつかないだろう。

 しかし、この突飛なアイデアは1981年に現実のものとなった。そして、その立役者は高級ワインに酔った2人のフランス人富豪だった。

 ある夜、ティエリー・ド・モンコルジェとジャン=クリストフ・ペルティエという2人の富豪がワインを飲みながら「俺のロールス・コーニッシュでパリ・ダカールを走ってやろうじゃないか」と酔いに任せて閃いた。

 普通なら、二日酔いとともに忘れ去られるような夢物語。しかし、この2人は起きてもなお本気だった。すぐさまプロジェクトチームを結成し、ロールスロイスをラリー仕様に改造する計画を始動させたのだ。

 当初の計画では、コーニッシュのボディをそのまま使う予定だったが、約2,270kgという重量は競技車両として致命的だったため、FRPで軽量なレプリカボディを製作。

 ロールスロイスの部品で使用されたのはウィンドウ、クロームバンパー、ダッシュボード、“パルテノン神殿”の異名を持つフロントグリル、そしてステアリングシステムのみだった。

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■クルマ作りは極めて大真面目で本格的

エンジンはなんとコルベット用の5.7L V8。他にも参戦用に様々な追加装備が用意されたという。
エンジンはなんとコルベット用の5.7L V8。他にも参戦用に様々な追加装備が用意されたという。

 プロジェクトを指揮したのは、シトロエンのプロトタイプを含む多くのラリーカーの準備経験を持つミシェル・モクリツキーだった。コーニッシュに近いホイールベースを持つ四輪駆動シャーシを探した結果、トヨタ・ランドクルーザーのHJ45型に決定した。

 完成車には、スチール製ラダーフレーム、アクスル、ブレーキ、板バネ、トランスミッション、トランスファーケースは残されたが、エンジンはより刺激的なコルベットの5.7L V8エンジンに換装された。白いスチールホイールが追加され、もちろん適切なオフロードタイヤが装着された。

 ボディ下部には補強のためのチューブラーフレームを追加。内部にはフルロールケージが装備され、レーシングバケットシートとラリー仕様のステアリングホイールも取り付けられた。後席に新設された燃料タンクの容量は332リットル。

 ロールスロイスがこのプロジェクトを知った時、知的財産権を理由に即座に中止を求めたが、幸いなことにプロジェクトの創始者たちには切り札があった。

 なんと、高級ブランドのクリスチャン・ディオールが新発売の男性用香水「ジュール」のプロモーションとして、このプロジェクトに興味を持っていたのだという。

 その後、ディオール側の説得により、ロールスロイスも渋々プロジェクトを容認することとなったそうだ。

 ジュールと名付けられたコーニッシュのパリ・ダカールマシンにはシャンパンと蠣を積んで参戦した、という逸話も残っているが、真相のほどは定かではない。

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