2024年、ヨーロッパの自動車市場では、EVの販売台数が初めて前年を下回った。しかしヨーロッパのメーカー各社はEVシフトを控えることなく、次々と投入し続けている。それは脱炭素に本腰を入れるのと同時に、もっと切迫した事情があるようだ。
※本稿は2025年2月のものです
文:角田伸幸/写真:マツダ ほか
初出:『ベストカー』2025年3月10日号
売れないと分かっていても投入せざるを得ない理由
2024年、EVの販売台数が初めて前年を下回ったヨーロッパ。ところが自動車メーカーに、EV投入を控える気配はない。
日本メーカーでさえ、マツダがEZ-6を「MAZDA6e」として投入するし、トヨタもアーバンクルーザー(スズキ eビターラのOEM)がスタンバイしている。2025年は日産からリーフも出るだろう。
なぜか。もちろん欧州が脱炭素に真剣なのはわかるが、もっと現実的な理由がある。実は欧州では2025年からCO2規制が強化され、違反すると莫大な罰金が課されるのだ。
これまでEU域内で販売される乗用車のCO2排出量の平均値は106.6g/kmだった。ところが2025年から、この値が93.6g/kmへと、より厳しくなる。
この数値を超える乗用車を売る自動車メーカーには、その台数や超過量に応じて罰金が課されるわけだが、その額がハンパじゃない。欧州自動車工業会の試算によれば、全メーカーの罰金総額が、なんと130億ユーロ(約2兆円)にものぼるというのだ。
この罰金を避けるにはどうするか。テスラのような純EVメーカーから浮いたCO2排出量を買い取って自社分と相殺するという手もあるが、長期的に有益なのは、やはり自社ラインナップにEVを増やし、ブランド全体のCO2排出量を少なくすること。
売れゆきが伸び悩むことがわかっているのに、各社が続々とEVを投入する背景には、こんな理由があるのだ。
厳しい言い方をすれば、ヨーロッパは今、「売れないとわかっていてもEVを出さざるを得ない」状況。これを見越した中国のEVメーカーも、欧州に猛攻をしかけてくるだろう。2025年は欧州のEVの動きに注目だ。
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