かつて10年10万kmがクルマの寿命といわれてきた。2023年3月末の乗用車(軽自動車を除く)の平均使用年数は13.87年となり、6年連続の増加で過去最高となった。 また、10年前に比べて1.44年延びている。そこで、15万km、20万km、30万kmと愛車と長くつきあっていくためにはどうすればいいのか、解説していこう。
文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb、Adobe Stock、写真AC
慣らし運転はクルマを長持ちさせるには必要?
●必ずしも慣らし運転をやる必要はないが愛車をいたわり、長持ちさせたいなら行ったほうがいい
昔からやるべきかやらないべきか論争が起きている新車からの1000km慣らし運転。現代のクルマのエンジン部品の工作精度が高く、フリクション低減のための表面処理など摩擦が激しい部分に施されているので慣らし運転は必要ないと言われている。
しかし摩擦がゼロでない以上、慴動面(こすれながら滑り合う部分)にアタリがつくまで摩耗して金属粉が発生する。特に鉄粉は硬く、鋼材やそのほかの金属部品の慴動面に挟まるとその部分の摩耗を進めてしまうことになる。だから新車から走行1000km程度でエンジンオイルを交換する必要がある。
これはトランスミッションやデフなど駆動系のオイルも1000km程度で1回交換した方が機械のためにはいい。しかし、オイル交換には異物混入やオイル量の変化というリスクも伴うので、近年はオイル無交換という変速機(AT、CVT)も多い。
慣らし運転をしないと、機械としてコンディションの良い期間はそれだけ短くなり、燃費や走りのフィーリングは確実に低下していくことになる。しかもこれはハイブリッド車やEVにも通じる。
EVはモーターやバッテリーには慣らしは必要ないが、駆動系はエンジン車と変わらないし、後述するサスペンションなど駆動系以外にも慣らし運転がコンディションを左右する機構はある。
ターボ車は、ターボチャージャーの軸受け部の潤滑と冷却をエンジンオイルが引き受けている(冷却水を用いる水冷を併用しているタービンも多い)ので、オイルに対する要求はNAエンジンより厳しい。
各自動車メーカーの公式ホームページなどで、慣らし運転が必要かというユーザーからの質問に対して、見解を見ることができる。トヨタ、ホンダ、三菱、スズキは「慣らし運転は必要ありません」と回答している。
トヨタの見解は、「慣らし運転の必要はありません。ごく一般的な安全運転に心がけていただければ、各部品のなじみは自然と出てきます。お客様が新しいクルマに慣れるまでの期間を慣らし運転の期間と考えてください」。
ホンダは、「現在のクルマは、エンジンやその他の部品精度が向上しているため、慣らし運転を行う必要はありません。ただし、機械の性能保持と寿命を延ばすためには以下の期間はエンジンや駆動系の保護の為に、急激なアクセル操作や急発進をできるだけ避けて下さい。
日産は、「エンジン車には一般的には、エンジン本体や駆動系など、クルマの性能を充分に引き出すためには慣らし運転は必要です。走行距離1600km~2000kmまでは、適度な車速、エンジン回転数で運転してください」。
一方、e-POWERに関しては、「VCM(車両制御モジュール)によって最適にエンジンをコントロールしていますので慣らし運転は必要ありません。ただし、安全や環境をいたわるためにも、急加速などの無理なアクセル操作を控えることをお奨めします」と回答している。
スバルは公式ホームページなどで慣らし運転に関する公式な見解はないが、スバル各車の取扱説明書には次の通り明記している。「1000kmまでの距離を目安にエンジンの回転数は4000回転以下に抑えて運転してください」。
結論は、各メーカーの慣らし運転の空気感を読み解くと必ずしも慣らし運転をやる必要はないが、愛車をいたわり、長持ちさせたいなら行ったほうがいい、としたい。
逆に慣らし運転をずっと続けてしまうことでデメリットが生じることもある。慣らし運転が終わっても、気を遣うことが習慣になり、あまりエンジンの回転を上げずに乗り続けたほうがクルマに優しいと思っている人もいるかもしれない。
クルマの寿命を長くしたいなら、時々、ある程度の回転まで回し、一定の速度で巡行することが必要だ。燃料を噴射する量を多くし、油圧経路の堆積を防ぐためにエンジンを中回転の3000rpmあたりまで回すといいだろう。
つまり、チョイ乗りでエンジン内部に溜まったものを外に出すイメージで、なるべく高速走行および高速巡行することを心がける(月に一度くらい)ことだ。
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