2023年4月1日から、不動産の相続登記が義務化された。これは、所有者不明の土地や建物が増え、公共工事の遅れや地域の荒廃などが社会問題となっているためだ。では不動産と同じように、相続財産となる自動車についても何らかの手続きが必要なのだろうか。 また、亡くなった人が加入していた自動車保険はどうなるのか、この機会にクルマの相続について考えていこう。
文:佐々木 亘/画像:Adobe Stock(メイン画像=英輔 佐藤)
【画像ギャラリー】不動産の相続登記が義務化! では自動車の相続はどうなるの?(3枚)画像ギャラリー自動車の相続手続きキーワードは「100万円」
故人が所有していた自動車を相続する場合 、自動車の評価額が100万円を超えるかどうかが、一つのボーダーラインとなる。
まず、評価額が100万円以下の場合は比較的シンプルな手続きだ。相続人のうち、ひとりが単独で名義変更の手続きを進めることができ、遺産分割協議書などの面倒な書類の作成は必要ない。必要な書類としては、被相続人の除籍謄本や相続人の戸籍謄本、車検証などとなり、比較的スムーズに名義変更が可能だ。
一方、評価額が100万円を超える場合は、非常に手続きが厳格である。相続人が複数いる場合には、遺産分割協議書を作成するか、相続人全員の印鑑証明書と委任状(実印押印)、譲渡証明書が必要となるため、一般的には遺産分割協議書を作成することが多い。
手続きのカギを握るクルマの評価額を知るためには、自動車査定士による査定が必要となる。まず自動車相続にあたって最初の手続きは、最寄りの日本自動車査定協会(JAAI)やお付き合いのある自動車ディーラーなどに査定を依頼することだ。
その後は評価額に応じて、粛々と手続きを進めていきたい。
【画像ギャラリー】不動産の相続登記が義務化! では自動車の相続はどうなるの?(3枚)画像ギャラリー所有権留保状態は悪いことばかりではない
自動車相続で気をつけたいのは、車のローンが残っているケース。ローン会社が所有権を持っている場合、相続人がそのローンを引き継ぐか、あるいは完済しなければ相続手続きが終わらない。
しかし、ローンが完済されているにもかかわらず、車検証上の所有者が「〇〇トヨタ自動車株式会社」と、所有権留保状態になっているケースもある。この場合は所有権を持つディーラーに相談することがマストとなるが、遺産分割協議書を使った相続よりも、手続きが簡略化されることがあるので覚えておいて欲しい。
残債が無く、所有権留保の状態のままのクルマが相続手続き対象となった場合、当該ディーラーは念書を取ることが多い。これは、以降の相続手続きに関して、ディーラーへは迷惑をかけないことを約束するためのものだ。
念書がとれれば残債が無いこと確認して、ディーラーは名義変更に必要な書類を発行してくれる。これと新しい名義人の登録書類があれば、名義変更は完了だ。面倒な相続手続きを避けるという目的で、所有権留保の解除をせずにクルマを保有しておくことは、1つのワザなのである。
【画像ギャラリー】不動産の相続登記が義務化! では自動車の相続はどうなるの?(3枚)画像ギャラリー自動車保険は同居か別居かが継承の可否が決まる
自動車を相続する場合、もうひとつ気になるのが自動車保険。亡くなった人が契約していた保険を引き継げるのか、新たに契約し直さなければならないのかが分かりにくい。
契約者が亡くなった場合、解約や変更の手続きは、自動車保険契約者の法定相続人が行う。手続きには、契約者の死亡を証明する書類(死亡届や戸籍謄本など)や、相続人であることを証明できる書類(戸籍謄本や遺産分割協議書など)が必要だ。
ここで問題なのが、故人が使っていた自動車保険を引き継げるのかどうか。原則として、保険契約を引き継ぐことができるは、同居の親族に限られる。故人と別居している人が、クルマの相続をする場合、保険は解約し等級を引き継ぐことはできない。
ただ、クルマの相続人が配偶者なら、その配偶者が免許を持っていなくても自動車保険の等級継承は可能だ。例えば、別居の未婚の子が相続財産であるクルマに継続して乗りたいという場合、故人の配偶者にクルマと保険の名義変更をして、別居の子どもが運転できるよう補償範囲を広げると、故人が使っていた保険等級を無駄なく引き継ぐことができる。
相続は誰にでも起こる可能性があり、突然起こるもの。日頃から車検証の所有者や保険の内容などを家族間で確認しておくと、万が一の際に焦ることも少ないだろう。先のことと思わずに、どんな年齢でも相続の準備はしておきたい。
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