■インド市場の死守と新事業領域への取り組み
2021年に鈴木修元会長の体制から、現在の鈴木俊宏社長を中心とした集団指導体制へ移行し、スズキは経営の在り方をアップデートしてきました。そこには変えてはならない修流の行動理念(小・少・軽・短・美、三現主義、中小企業型経営)という基本があります。
しかし、時代の変化に合わせてスズキも進化し、アップデートしていかなければならない部分があります。それこそが企業統治の在り方です。
中計に込めたスズキのメッセージとは、「成長」によって企業価値を向上させるという経営目標の考え方にあります。インドを中心に積極投資を継続しながらも、財務規律を高めて株主への持続的かつ累進的な配当をバランスよく高めていくということです。
世界の自動車産業は100年に一度というデジタル革命に直面しています。新興企業や中国メーカーの大進撃に、国内自動車産業の競争力は著しく脅かされています。しかし、米国とインドは中国の破壊的な侵攻を排除し、規律ある自動車産業の発展を守ろうとしています。
インド自動車市場は世界でも希有な成長市場なのです。スズキはそのインド市場で45%の市場シェアを有しており、この牙城を守りぬくことは国内自動車産業の希望と言って過言ではありません。
スズキの自動車事業は世界販売420万台(2023年度実績316万台)、営業利益は7000億円(同3982億円)を目指します。インドでの生産能力は225万台から2030年度には400万台を目指します。
今後の6年間で2兆円の設備投資(内、インド向け1.2兆円)、2兆円の研究開発投資(内、エネルギー極少化に向けた技術開発1.35兆円)を実施します。
これだけの投資を打ち出しながらも、株主には安定的かつ累進的な配当政策で6000億円を還元する考えです。資本コストを意識した財務規律を高め、先述のROEを高めることで魅力的な株主価値を生み出そうとしているわけです。
さらに、モビリティの先を見据えた新事業領域への取り組みを強化します。
2025年初の米国テクノロジー見本市CESにスズキが初参加したのは、サービスモビリティとエネルギー領域で新事業に注力するために、協業を通じて必要とされる技術・ノウハウを獲得するためです。
物流向け電動台車、小型車両を自動隊列運転させる都市交通システムなどをベンチャーと共創する考えです。
ここから見えるスズキの未来図とは、まさしくエネルギーと交通を含めたインドの一大社会インフラ企業へのステップアップなのです。
これこそがまさに鈴木修元会長が残したスズキのファイティングスピリットと言えるでしょう。スズキは進化し続けているのです。
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