GAME BOYなる最恐窃盗ツールをベストカーwebで紹介してからちょうど1年。悪い予想はあたり、それ以降はGAME BOYによると思われる盗難が続発している。近年急増している自動車の盗難。我々はどのように向き合っていけばよいのか。
文/画像:加藤久美子
【画像ギャラリー】マジで注意!! 盗難されやすいクルマたち(14枚)画像ギャラリー未遂でも悲惨! ドアに穴が開いたランドクルーザー250
近年、自動車窃盗の手口は、リレーアタック→CANインベーダー→GAME BOY(キーエミュレータ=スマートキーの機能を丸ごと複製)と進化してきた。
しかし、リレーアタックはスマートキーを缶に入れるなどして電波を遮断する対策方法が功を奏して近年は激減している。
自動車メーカーがスマートキーに節電モード(電波を弱くして盗難を阻止)を設定したことでもリレーアタックによる盗難は激減した。
CANインベーダーに関しても2022年11月以降に発売された新型車には対策品が標準装備されるようになり、また同等品(トヨタセキュリティシステム)がディーラーで後付け可能となっている。
メーカーのほうで対策できていないのは現状、GAME BOYだけとも言えるのだが、実はGAME BOY同様、キー複製の機能を盛り込んだ窃盗ツールによる盗難が昨年秋頃から急増しているのをご存じだろうか?
新型CANインベーダーともいえるこの新しいツールによる窃盗の最大の特徴はボディに穴を開ける事である。
実は新型CANインベーダーによる窃盗は昨年秋からSNSでちらほら報告されていた。未遂に終わったクルマを確認すると、必ず、助手席側のドアや後部ナンバープレート近辺に6-7cm四方くらいの「穴」が開けられていた。
この手口はいったい何なのか? 未遂に終わったとしても、新しいクルマのボディに穴を開けられることは経済的にも、精神的にもダメージが大きい。
様々な情報をつなぎ合わせていくと、欧州に拠点を持つ会社でそのデバイスが販売されていることが分かった。
販売元から指定された秘匿性の高いチャットツール「テレグラム」で問い合わせたところ回答があり、価格は16000ユーロとなかなかお高めであった。
ただし、価格は様々で安いところだと同じ機能を持つデバイスが1万ユーロ以下の店もあった。対象車種について問い合わせをするとサンプルとしてレクサスRXの接続ポイントなどについての図が送られてきた。
新型CANインベーダーで盗める車種は2022年以降のトヨタ車、レクサス車をほぼ網羅しているようだ。いずれもCANバスに接続してキーを開けてエンジン始動ができることに加えて、キー複製機能(キーエミュレータ)もついているという。
つまり従来のCANインベーダーではエンジン始動まではできて自走で持ち去されていたわけだが、新型CANインベーダーではエンジン始動+自走+キー複製までできてしまう。接続ポイントやボディに穴を開けることなどは異なるが、ほぼGAME BOYと同様の窃盗デバイスであると言える。
●新型CANインベーダーで対象となる車種の一部
アルファード/ヴェルファイア2023+
bZ4X 2023+
C-HR 2023+
クラウン2023+
ハリアー2021+
ランドクルーザー 300 2022+
ランドクルーザー 250 2024+
ミライ 2023+
ノア/ヴォクシー 2022+
プリウス 2023+
RAV4 PHV 2021+
概要は大体わかったが、ではなぜドアに穴を開けるのか? またなぜ未遂で終わる車種もあるのか?色々と調べていたところ、自動車盗難防止協会という団体からタイミングよく連絡を頂いた。
同協会は自らを”クルマのホワイトハッカー集団”と位置づけ活動をしている団体で昨年秋頃から頻発している「穴あけ盗難」について実際にその手口で盗難未遂に遭ったレクサスLX(助手席ドアに穴が開いている)の実車を詳細に調査、検証したとのこと。
その様子が【緊急動画】ランドクルーザー250盗難手口判明というタイトルでYouTubeにて4月2日より公開されている。
【画像ギャラリー】マジで注意!! 盗難されやすいクルマたち(14枚)画像ギャラリー助手席側ドア、後部ナンバー付近に穴を開ける理由
動画では以下のことを警告している。
・ドアパネルや後部ナンバー周りに穴を開ける手口が増えている。
・外側のドアパネルの特定の場所に穴をあけて、ドアパネル内に付属している「アウターミラーコントロールECU」に接続し、ドアを解錠して盗む。
・同様にリアゲートにも盗難しようとした痕跡が確認できた。
・リアゲートでは外側のパネルを切り開いてリアゲート裏にある「マルチプレックスネットワークドアECU」に接続する。
・しかし、リアパネルは二重構造になっているため手が入りにくい。そのため、助手席側ドアに穴を開けたほうがモジュールまで手が届きやすい。
自動車盗難防止協会によると、実際、新型CANインベーダーによる穴あけ盗難の被害件数はリアゲートよりもドアのほうが多いとのこと。なお、「アウターミラーコントロールECU」がついていない車種やグレードにおいてはドアに穴を開けても接続ができず盗難未遂で終わっているケースもある。
最後に新型CANインベーダーについて解析を行った自動車盗難防止協会に注意すべきことや盗難を防ぐための社外セキュリティについて教えていただいた。
「新型CANインベーダーは、ドアやリアゲートなど従来とは全く異なる場所からアクセスすることが特徴です。今回は実際に盗難未遂に遭ったレクサスLX(2024年式)とランドクルーザー250で検証を行いました。
2022年11月1日以降生産のランドクルーザー300や40系アルヴェル、ランドクルーザー250などの新型車種にはメーカー純正のセキュリティ(CANインベーダー向け)がついていますが、当然今回紹介した新型CANインベーダーの手口ではもちろん役に立ちません。
これからランクル250の盗難が増えていくと思われます。
できる対策としては、パンテーラやクリフォード、ゴルゴ、イグラなどの防盗効果の高い社外セキュリティとともに、キタコ(K-TECT)に代表される物理ロックの併用もおすすめします。」
筆者はこれまで多数の盗難防止ツールの防盗効果について取材してきたが、一つ言えることは1万円前後の安いハンドルロックやタイヤロックなどはほぼ、どれも「秒で」破壊、切断されてしまうということ。
確実な防盗性能を期待するならば最低でも10万円前後の製品を信頼できるショップで取り付けることをお勧めしたい。
なお、先日ランクル300にトヨタ初の盗難防止装置がいくつか採用されたが、これらはすでにレクサスで2021年発売のNX以降採用されており、筆者が取材したレクサス数台の盗難において時間指定の始動ロックは突破されている。
【画像ギャラリー】マジで注意!! 盗難されやすいクルマたち(14枚)画像ギャラリー
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