アウトランダーにデリカD:5、デリカミニといった、SUV・ミニバン・軽自動車のメーカーになった三菱。しかし30年ほど時を戻すと、結構ガチガチのセダンやステーションワゴンを作るメーカーだったことが分かる。特に90年代前半に登場したディアマンテは、ミドルサイズモデルのお手本となったクルマだ。
文:佐々木 亘/画像:三菱
【画像ギャラリー】まるで欧州プレミアムワゴン! ディアマンテワゴンがシブすぎる!(15枚)画像ギャラリー三菱が大得意だったミディアムカー
ディアマンテワゴンが登場したのは1993年。このベースとなる初代ディアマンテ(セダン)は1990年に発売されており、ワゴンは3年遅れでの投入となった。
ロングノーズのボディにどっぷりとしたシート、どこか輸入車のような雰囲気を醸し出すディアマンテワゴン。それもそのはず、生産はオーストラリアのアデレードにある、オーストラリア三菱で行われていた。現地生産されて日本に送られてくる、立派な輸入車だったのだ。
ボディサイズは全長4785mm×全幅1780mm×全高1515mmというロー&ワイドなもの。特に全高の低さが特徴的で、サイドビューの伸びやかなクルマに見えたものだ。ホイールベースは2720mmだが、前後席の足元空間は広々としているし、ゆとりのある全長のおかげで、荷室も広い。
ワイドボディは、サイズと基本性能のトータルバランスがよく、走行性能の上でも安定感が大きいから、ディアマンテワゴンはパッケージングの雄とも言える。基本設計の良さが、クルマの価値を大きく高めた良い例だろう。
ワゴンと言えば商用モデルだった当時の日本において、セダンからワゴンへ乗り換えてもイイなと思わせる存在になった。まさしく新しいワゴンの世界を広げた1台だ。
ミディアムカーでもここまでやるか! フラッグシップモデル並みの装備類
ディアマンテの室内は実に良く出来ている。まず、各スイッチ類のレイアウトがイイ。エアコンのスイッチ類は、基本的にプッシュボタンだが、温度と風量だけはダイヤル式だ。
本革巻きのステアリングにはホーンボタンが付けられ、クルーズコントロールスイッチも3本スポークの右側に付属した。スイッチ類を探さずに、直感的に操作できることは、安全運転にもつながる。
前席シートには、着座時に身体の重心を効果的にサポートする人体重心支持シートを採用し、ロングドライブの疲労を軽減。運転席は4WAYのパワーシートで、前後シート共に厚いパッドと大型クッションを採用した、ゆったりした着座感が魅力だ。どっぷりと沈み込めるシートには、ハイグレードワゴンを感じることができる。
ラゲッジルームの広さは文句なく、後席を倒すとフラットなフロア面が登場するのも使い勝手がイイ。単に広くて使いやすいだけでなく、ラゲッジルームやテールゲートの内側に、上質な本革トリムを施し質感を高めているのもグッドだ。
こういう部分が、最近のクルマでは省かれてしまうから、ラゲッジルームの本革トリムには、本当に驚かされる。
ミディアムながらハイクオリティ。ディアマンテワゴンに乗っていると、さながらフラッグシップカーに乗っているような錯覚が起きてしまう。
ぶ厚いドアは高級車の証
ディアマンテワゴンのドアは、とにかく厚かった。当時は安全性を高めるための厚いドアだったようだが、遮音性は高いし、何よりドアの閉まる時の音が重厚だ。この音を聞くだけでも、ディアマンテワゴンに乗る価値はあると思う。
オーストラリア生産で輸入モデルだったため、ボディカラーはストラトグレーとアスペングリーンの2色だけというのが多少の問題点だが、それを踏まえても魅力の方が勝ってくる。
ディアマンテやディアマンテワゴンを見ていると、三菱ってこういうクルマづくりが得意だったよなと思い返す。売れ筋カテゴリーの生産もいいのだが、三菱らしいセダンやステーションワゴンの復活を、往年のファンは期待しているのではないだろうか。
トライトンも国内で復活したことだし、ディアマンテ・ギャラン・ランサーの系譜が、また走り出すと三菱は面白くなりそう。三菱の「いいセダン・ワゴン」の復活を期待したい。
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