レーシングカーのダウンフォースのすごさを説明するとき、よく「天井でも走れる」という。それを実際にやってみたクルマがある。しかも静止状態で! いったいどうやったの?
文:ベストカーWeb編集部/写真:マクマートリー
静止状態でクルマが宙づりってどういうこと?
クルマ好きなら、ダウンフォース(空気が車体を路面に押し付ける力)の重要性はご存知だろう。レーシングカーともなればその力は1トンにも2トンにもなり、「天井だって走れる」とはよく言われる話だ。
だからといって本気でやることはないだろう。そう言いたくなるメーカーが現れた。イギリスの新興EVメーカー「マクマートリー」社だ。
同社は「スピアリング」という一人乗り電動ハイパーカーを開発中。このクルマ、0-100km/h加速1.5秒、0-400m8秒という怪物なのだが、同社はこのクルマの生むダウンフォースのすごさをアピールしようと考え、本当にクルマを宙づりにしたのだ。しかも静止状態で!
「いやいやいや、止まってるクルマじゃダウンフォースは生まれないだろ」。多くの人はそう突っ込むはず。実はスピアリングは、別の方法でダウンフォースを生み出していた。あまりの効きっぷりにモータースポーツから排除された禁断の技術「ファンカーテクノロジー」がそれだ。
F1にも参戦するもあっという間に出場禁止に!
ファンカーとはなにかというと、なんらかの力でファン(扇風機)を回し、床下の空気を吸い出すクルマを指す。床下が負圧になるから、クルマはたとえ静止していても、吸盤のように路面にくっついてしまうというわけだ。
このファンカー、笑いごとではなく、実際にレースにも投入された。
古くは1970年のCan-Am(カンナム)を走ったシャパラルの2Jという変態マシンが有名だが、1978年にはブラバムがF1マシンにも採用した。いずれもあまりの速さにライバルからクレームが付き、あっという間に出場停止となったが、最近はレースゲーム「グランツーリスモ」に、同技術を用いた車両が登場している。
前置きが長くなったが、とにかくマクマートリー・スピアリングはこの技術を使って、宙づりにしたクルマを天井に貼り付けることに成功した。車体は全長3.7mと小柄だが、100kWhのバッテリーを搭載することもあって車重は1200kg。こいつを宙づりにするファンの力は相当なものだろう。
同社はこの実験を顛末をYouTubeにもアップしているので、気になる人はチェックしてほしい(すごいのは宙づりのままクルマがわずかに前進するところ!)。クルマの技術の奥深さを感じるには格好の材料かもしれない。
コメント
コメントの使い方ファンカーじゃなくてフォーミュラカーとか使って空洞実験の施設で同じようにやってみてほしい。
ファンカーは路面状況で急にグリップ激減して危険&後方の車にタイヤ糟や砂利・アスファルト屑など発射し続けて危険
という、独走以外では絶対ONにしちゃいけない禁断の果実ですね。そのぶん、事前に専用機材車で測り込んだコースをなぞるようにタイムアタックした場合は、激烈に速い。
その十億円以上の専用機材車とスタッフもセットで買えて、個人所有のサーキットもある富豪なら、ファンカーの真価を手にできると思います。