【2年でマイチェン4年で新型は過去の話…】新型車の開発が長期化している切ない事情


 最近ではフルモデルチェンジのインターバルが長くなり、2年でマイナーチェンジ、4年でフルモデルチェンジというパターンはもはや過去の話。

 2019年1~12月の販売台数を見ると、発売してから7年4ヵ月のノート、8年1ヵ月のアクア、6年のヴォクシーなど、6年以上経過しているものが目に付く。

 最近登場したモデルを見ても、新型カローラは7年7カ月、新型フィットは6年5ヵ月、新型ヤリスは2代目ヴィッツの登場から8年2ヵ月でフルモデルチェンジと、もはやフルモデルチェンジ4年という定石はすでに崩壊しているようにも見える。

 そこで、なぜ日本車のフルモデルチェンジが長くなったのか? フルモデルチェンジが長くなった背景とその理由、さらには今後、フルモデルチェンジは長くなっていくのか? モータージャーナリストの岩尾信哉氏が解説する。

文/岩尾信哉
写真/ベストカーWEB編集部

【画像ギャラリー】メーカー別モデルチェンジしていない長寿車たち


6年がフルモデルチェンジの標準間隔?

現行ノートがデビューしたのは2012年7月なので、すでに7年半が経過。2016年11月に実施されたマイナーチェンジに際してe-POWER搭載モデルで人気が爆発。デビュー4年以上を経過したマイチェンにもかかわらず、2018年には暦年販売台数でトップを記録、2019年の暦年販売台数もプリウスに次いで2位

 自動車メーカーは年々厳しくなる排ガス規制やADAS(先進運転支援システム)などの安全装備に対応するなど、新型車に盛り込むべき最新技術は拡大し続けている。

 研究開発に必要な期間などを考えればフルモデルチェンジの間隔は延び続けていくのは致し方ないのかもしれない。

 なぜフルモデルチェンジサイクルが長くなったのか。まず挙げたいのはクルマの売れ方が以前とは変わったことが大きい。

 フルモデルチェンジの周期が4年だった時代は、発売すると発売月から3ヵ月~6ヵ月は販売台数が一気に伸びて、そこから次第に下がっていき、2年後のマイナーチェンジで再び盛り返し、そしてさらに2年を経て、フルモデルチェンジするパターンだった。

 ところが最近では、予約受注が発売前の3ヵ月前くらいに始まり、それ以前からティザー広告やメディアへの露出が多くなったため、爆発的に販売が急増するということもなくなった。

 しかも自動車メーカーは、生産キャパをそんなにとっていないので、納期が2ヵ月から半年と、納期が長くなるケースが増えてきた。

 その一方で、評価の高い実用的なベストセラー車は、モデル末期まで安定して売れるということが多くなってきた。メーカー側も売れているからフルモデルチェンジを急ぐ必要がないと判断するため周期が伸びているのだ。

 例えば先代ホンダN-BOXは、2011年12月に発売されて好調に売れ、モデル末期だった2016年も軽自動車の販売1位だった。

 登録車を合わせた国内販売台数の総合順位もプリウスに次ぐ2位だった。先代N-BOXは合理的な設計で魅力が色褪せず、長い間にわたり好調に売れた。

 現行型も2017年9月に発売され、2020年1月現在で2年4カ月が経過するが、その傾向は変わらず、軽新車販売台数において5年連続の第1位(先代含む)と、登録車を含めた新車販売台数において3年連続1位を獲得している。

 ノートも発売から7年半が経過するが、2018年には小型/普通車の販売1位となった。2016年にe-POWERを加えた効果や、シンプルなデザインの視界が優れたボディ、後席にも快適に座れる居住空間などによって人気を保ち続けた。

 2019年はプリウスに次ぐ2位。ビッグマイナーチェンジによってフェイスリフトをしているものの、デビューから7年半も経っているのにこれだけ売れているのは驚きである。

 アクアも2011年12月の登場から8年も経過しているのにもかかわらず、2019年の販売台数は登録車5位と健闘している。

2011年12月に発売したアクア。2017年6月にマイナーチェンジし、フェイスリフト。歩行者も検知する「Toyota Safety Sense」を採用している

 こうした、人気が落ちない長寿モデルに共通しているのは、発売当初から評価が高く人気があったこと、発売してから現在まで一部改良やマイナーチェンジを頻繁に繰り返されて、安全装備も追加装備され、ビッグマイナーチェンジ(フェイスリフト含む)が行われていることだ。

 クルマの耐久性が向上したことも見逃せない。1980年頃までの日本車は生産から10年も経過すると、ボディの下側やドアには錆が生じて穴が空いたりすることがあった。

 しかし今は10年前に生産された2010年式のクルマが普通に走っている。昔は初回車検取得の3年ごとに乗り替えるユーザーも多かったが、今は7〜8年とされる。

 乗用車の平均使用年数(平均寿命)は、1980年頃は8年だったが、1990年には9年、2000年は10年、2010年以降は大幅に伸びて12〜13年に達している。

モデルチェンジの頻度を見れば日本市場をどれほど重視しているのかがわかる

2010年7月に登場したタイ生産のK13型マーチ。 2013年6月にマイナーチェンジを実施しているがそれ以降、目立った変更を加えていない

 日本の自動車メーカーが、国内市場に取り組む姿勢も大きく影響した。1990年頃までは、日本の自動車メーカーは世界生産台数の約50%を日本国内で売っていた。

 それが国内の景気悪化と海外市場の開拓によって後者の比率が高まり、2000年頃には、日本のメーカーは世界生産台数の65%を海外で売るようになった。2010年以降は80%に達する。

 今の日本メーカーの国内販売比率は20%以下だ。現在、日産は、国内が10%、海外が90%という販売比率になっている。

 こうなると日本のメーカーが、日本の市場に力を入れにくくなり、結果的に軽く扱っているように映る。商品開発も北米や中国を優先させ、日本市場の順位は下がった。

 そうなれば国内には新型車が投入されない。日産の新型車は1〜2年に1車種程度だから(グレード追加などを除く)、古いクルマばかり増えてしまう。

 以前に比べると、開発すべき分野が増えたことも、フルモデルチェンジの周期を伸びた原因だ。電動化を含めた環境対応、安全性能、運転支援や自動運転など、将来に向けて開発の必要な分野が多い。そうなれば新車の開発費用が削られて周期も長引く。

 フルモデルチェンジは、クルマが進歩するうえで不可欠の世代交代だ。フルモデルチェンジの周期がむやみに延びるとクルマの進化も滞る。

 特に先進的な安全装備や電動化技術の搭載は、マイナーチェンジや一部改良では対応できず、フルモデルチェンジを要することが多い。

 したがって日本市場における新型車の発売やフルモデルチェンジの頻度は、日本市場に向けたメーカーの本気度といえるだろう。

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