モデルチェンジの頻度を見れば日本市場をどれほど重視しているのかがわかる
日本の自動車メーカーが、国内市場に取り組む姿勢も大きく影響した。1990年頃までは、日本の自動車メーカーは世界生産台数の約50%を日本国内で売っていた。
それが国内の景気悪化と海外市場の開拓によって後者の比率が高まり、2000年頃には、日本のメーカーは世界生産台数の65%を海外で売るようになった。2010年以降は80%に達する。
今の日本メーカーの国内販売比率は20%以下だ。現在、日産は、国内が10%、海外が90%という販売比率になっている。
こうなると日本のメーカーが、日本の市場に力を入れにくくなり、結果的に軽く扱っているように映る。商品開発も北米や中国を優先させ、日本市場の順位は下がった。
そうなれば国内には新型車が投入されない。日産の新型車は1〜2年に1車種程度だから(グレード追加などを除く)、古いクルマばかり増えてしまう。
以前に比べると、開発すべき分野が増えたことも、フルモデルチェンジの周期を伸びた原因だ。電動化を含めた環境対応、安全性能、運転支援や自動運転など、将来に向けて開発の必要な分野が多い。そうなれば新車の開発費用が削られて周期も長引く。
フルモデルチェンジは、クルマが進歩するうえで不可欠の世代交代だ。フルモデルチェンジの周期がむやみに延びるとクルマの進化も滞る。
特に先進的な安全装備や電動化技術の搭載は、マイナーチェンジや一部改良では対応できず、フルモデルチェンジを要することが多い。
したがって日本市場における新型車の発売やフルモデルチェンジの頻度は、日本市場に向けたメーカーの本気度といえるだろう。
セダンのフルモデルチェンジサイクルは?
ここから各カテゴリーにモデルチェンジサイクルの違いがあるのか見ていきたい。まず、現時点でフルモデルチェンジを実施していない最長寿命セダンを挙げておくと、トヨタプレミオ/アリオン(2007年6月)、日産フーガ(2009年11月)とフルモデルチェンジから10年を過ぎていて、もはや“おざなり”の領域に踏み込んでしまっている。
ちなみにプレミオ/アリオンを1本化し、2021年に世代交代する方向でプロジェクトが動いているようだ。
両モデルとも廃止との情報もあったが、カローラとカムリの間の車格が離れていることから、次世代モデルの投入に踏み切るものと思われる。
次期モデルは3ナンバーサイズに拡大され、パワーユニットは2Lのガソリンエンジンやハイブリッドを搭載し、最新のトヨタセーフティセンスなどを標準装備して世代交代する見込み。
マツダでの長距離ランナーはセダンでは見当たらず、デミオが2014年9月発表と古く(2019年7月に車名をマツダ2に変更したが)、スバルでは2014年に登場したレヴォーグとレガシィが2020年には日本市場でのフルモデルチェンジを控えているから、両車は6年間隔に当てはまり、次いでインプレッサが2016年10月登場でもモデルチェンジが遅い部類になる。
スポーツカーは特別か?
これがスポーツカーとなると少々事情が異なる。例えば、マツダロードスターはモデルチェンジのインターバルは、初代の8年(1989~97年)、2代目の7年(1998~2005年)、3代目の10年(2005~2015年)と短いとはいえず、おそらくは社内での紆余曲折があったはずで「よくぞ生き残った!」と評価されるべきだろう。
これにはスポーツカーとしては抑えられた価格とともに、新車の登場を待ち望んでやまない国内外の根強いファンの存在なくしては語れないはずだ。
とはいえ、ロードスターのような稀有な例を除けば、多くのスポーツカーは大量に売れるわけではないから、開発費を精算するには時間がかかる。
GT-Rは2007年12月、フェアレディZは2008年12月から前述のモデルイヤーでの年次改良や仕様変更を掲げて“ほったらかし”の批判をかわしつづけていることは周知の通り。
長く基本スペックを変えないことをメーカーの良心と捉えても、ここまでフルモデルチェンジのインターバルが長いと時代遅れのそしりは免れないだろう。
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