ナカニシ自動車産業リサーチ・中西孝樹氏による本誌『ベストカー』の月イチ連載「自動車業界一流分析」。クルマにまつわる経済事象をわかりやすく解説すると好評だ。第45回となる今回は、中西氏による米国「アフィーラスタジオ」での取材の様子から。アフィーラ販売の最前線で氏が見つけたものとは。
※本稿は2025年7月のものです
文:中西孝樹(ナカニシ自動車産業リサーチ)/写真:中西孝樹、ソニー・ホンダモビリティ ほか
初出:『ベストカー』2025年8月26日号
ロサンゼルスのアフィーラスタジオ
今年1月、米ラスベガスで開催されたCES(コンシューマー・エレクトロニクスショー)にて、ソニーホンダモビリティは生産プロトタイプの「アフィーラ1」を公開し、2026年から納車を開始すると発表。
同時に販売価格、ショールームのアフィーラスタジオやデリバリーハブの設置、米国大手のアフターサービス会社クラッシュチャンピオンズとの提携を表明しました。
ソニーホンダは2025年2月にロサンゼルス、3月にサンフランシスコに「アフィーラスタジオ」を設置し、来場者にインカーデモンストレーションを提供し始めています。筆者は6月に現地取材をしました。
今回訪問したアフィーラスタジオは、ロサンゼルスのハリウッド近郊にある華やかなショッピングモールのウェストフィールド・センチュリー・シティにあり、その中央近く、なんとテスラのショールームの隣に陣取っています。
実際、テスラを目当てに来訪したユーザーが初めてこの場でアフィーラ1の存在を知り、ファンになったという事例もあるようです。
専門スタッフによるライブデモンストレーションを通じて、車内エンターテインメントや最先端のパーソナルエージェント技術を体験できます。
筆者もCESのショーフロアで何度も実車とデモを見てきましたが、今回、落ち着いた空間のなかで、アフィーラ1の個性と価値を再発見しました。
移動空間をエンターテインメントの場へと再構築するこの魅力は、ソニーの感性そのものだと認識します。
また、サウンドシステムの響きと透明感も他に類を見ないほどです。開発しているのはテスラでもメルセデスでもない、「エンターテインメントEV」なのです。
最終デザインで大きく変わったのは、ルーフトップに置かれた左右のセンシングカメラのボックスです。
中央のライダー(LiDAR)センサーは従来のプロトタイプからありましたが、最終デザインでは、あえて左右に猫耳のような出っ張りを作っています。
非常に個性的で賛否はあるでしょうが、米国ではこのようなボディから出っ張ったセンサーを「安全の印」として見られる傾向が広がっています。
テスラはカメラの画像データとAIで自動運転を目指していますが、すべての米国ユーザーの信頼を勝ち取っているわけではありません。アンチ・テスラ派は今でも大勢いるのです。
現在、都市部ではウェイモワンが多くの無人ロボタクシーを走行させており、その丁寧で上手な運転を目の当たりにした市民のなかには、センサーの塊を「安全の印」として感じるようになっている人が多いようです。アフィーラ1の猫耳センサーはあえてテスラとの差別化と個性を狙ったものだと感じます。
アフィーラ1の提供価値の目玉は、L(レベル)2++と言われる高度な運転支援技術による市街地のハンズオフ走行です。
この技術はアイズオフを可能とする自動運転技術に進化します。その時にアフィーラがどのような価値を提供するのか、それがまさしくこの事業のメインテーマとなっていきます。























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