今回、ヒョンデ インスターの試乗に向かったテリーさんと我々。撮影を進めていく中で、テリーさんの様子がおかしくなった。外装、内装と見て、試乗する頃には完全に目がハートに。テリーさん、もしかして恋に落ちちゃいました!?
※本稿は2025年7月のものです
文:テリー伊藤/写真:西尾タクト、ヒョンデ ほか
初出:『ベストカー』2025年8月10日号
日本の道路にピッタリサイズの韓国車
こういうのを“ひと目惚れ”というのだろうか。ヒョンデ インスターを見た瞬間、これこそ理想のEVだと確信した。サイズ、デザイン、居住性、乗り味など、重要な部分すべてが文句なし。特に全長3830mm、全幅1610mmのコンパクトサイズが素晴らしい。
ヒョンデの調査によると、日本国内での登録車の5ナンバー比率は、1975年に92%だったのに対し、2024年は21%なのだという。
軽自動車が増えているという側面もあるが、5ナンバー車の価値や存在感が圧倒的に薄まっているのだ。メーカーが安易に3ナンバー車を増やし、その結果、ユーザーは5ナンバー車を軽視するようになった。
今、登録車の5ナンバーといえば、ヤリス、フィットなどの2BOXタイプのコンパクトカーが主流で、全幅は枠いっぱいの1695mmまで広げられている。
トール/ルーミーやソリオなど、もう少し小さなクルマもあるが、どれも実用一辺倒で、いわば健康サンダルのような存在だ。しかし、インスターはまったく違う!
インスターの成り立ちを紹介しておくと、ベースは韓国の「軽車」カテゴリーに入るキャスパーという小型車だ。
「軽車」は全長3600mm、全幅1600mm、全高2000mm、排気量1L未満という制限があり、日本の軽自動車に似ているが、もう少し大きい。この「軽車」のサイズが日本の道にぴったりなのだ。
EVのインスターはバッテリーを積むためにホイールベースと全長を伸ばして軽車の枠を超えているが、扱いやすさは同じ。何より、こんなに小さなクルマなのに、デザインが最高で圧倒的な存在感を発揮しているのが素晴らしい。
驚くべきことに、ベース車のキャスパーは本国では3年前から売られていたという。3年前からこんなデザインのクルマが走っていたのだ。韓国車、恐るべしである。
車中泊もできる新世代小型EV
日本では、クルマもファッションも「可愛い」より「かっこいい」のほうが上と考えられがちだが、本当は同じはずなのだ。クルマの場合、アルトラパンやムーヴキャンバスなど、軽自動車なら思い切ったデザインにできるのに、登録車になると急に保守的になる。
インスターに乗った自動車評論家の多くが、なぜ日本のメーカーがこういうEVを作らないのか? と疑問を投げかけるらしいが、「可愛いらしい小型車」を阻んできたのはメーカーであり、メディアだったのではないか。
国産メーカーがインスターのようなクルマを作ると、メディアは「子どもだまし」というような評価をする。過去にそんなシーンを何度も見てきた。
そうこうしているうちに、楽しいクルマづくりで韓国車に圧倒され、日本の小型車は没個性な実用車ばかりになってしまった。
繰り返すが、ヒョンデは3年前にこのデザインの小型車を世に出していたのだ。日本車に勝っているのはもちろん、イタリア車やフランス車にも負けていないのではないだろうか。
インスターは見た目がいいだけでなく、走りも素晴らしい。今回は大人4人フル乗車での試乗となったが、力不足を感じさせず、ヒューンと軽快に加速するのはEVならでは。リアシートはスライドもリクライニングもできて狭さを感じさせない。
しかも、助手席だけでなく運転席も背もたれを前に倒せて、後席を倒すことで車内をベッドルームに変えることもできる。マットを敷けば大人ふたりの車中泊も可能だろう。寝転がりながらサンルーフから空を見ていれば、心底リラックスできそうではないか。
もしかしたら、日本でインスターはそれほど売れないかもしれない。しかし、国産メーカーはこのクルマから多くのことを学べるはずだし、学ぶべきである。そして、改めて5ナンバーサイズの魅力を追求してほしいと願う。
インスターは2025年一番のクルマになる気がする。日本カー・オブ・ザ・イヤーの最有力候補に躍り出た!


















コメント
コメントの使い方ヒョンデ。
壊れたらどこに修理をお願いすればいいんだろう?
日本の自動車メーカーがこれを見てコンパクトカーの開発に力を入れてくれるならいいけど、たぶん全く売れないだろうから「ほら見ろ!やっぱり日本人は大きな3ナンバー車(例えエンジンが1Lでも)か好きなんだ」って結論になっちゃうんだろうな。