路面が濡れていると制動距離はめちゃくちゃ伸びる!! タイヤの溝にご用心

路面が濡れていると制動距離はめちゃくちゃ伸びる!! タイヤの溝にご用心

 首都高速道路株式会社によると、雨天時は晴天時に比べ、施設接触事故(側壁やガードレール等への衝突)が約7倍も多く発生しているそうです。これは、降雨によって視界が悪くなることのほか、路面が濡れていることでスリップしやすくなり、また制動距離も長くなってしまうことなどが原因だと考えられます。

 雨の日の制動距離は想像以上に長く、タイヤの摩耗度合いによっては、路面が乾いているときと比べて、2倍近くまで延びてしまうことも。すべてのドライバーに知っておいてほしい「タイヤの残り溝と雨の日の制動距離」についてご紹介します。

文:yuko/アイキャッチ画像:Adobe Stock_ JVLMediaUHD/写真:Adobe Stock、写真AC、首都高速株式会社、JAF

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特に雨の日はタイヤの「溝の深さ」が重要

 クルマは、タイヤが路面にグリップすることで、走ったり曲がったり、止まったりすることができます。雨天時には、路面とタイヤの間に水が入り込みますが、その水を受け止め、排水する役割を担っているのが、タイヤに刻まれた溝です。主に排水に関わるのが、タイヤの周方向に刻まれている「縦溝(主溝)」ですが、タイヤの幅方向にある「横溝」も寄与しています。これらの溝があることで、接地した際に水が溝へと逃げ、結果として雨天時でも安定した走行が可能になります。

 そのため、雨天時は残り溝の深さが非常に重要。タイヤの溝は「1.6mm以上の 深さを有すること」(道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 第89条)と定められており、この基準を満たせば法律上は問題ないことになりますが、使用限界のタイヤは、乾燥路面(ドライ路面)では問題がなくても、濡れた路面(ウェット路面)では制動距離は大幅に延びてしまう可能性があります。

雨天時は残り溝の深さが非常に重要。溝が浅いと十分に水が排水されないため、タイヤが路面にしっかりとグリップすることを遮ってしまう(PHOTO:Adobe Stock_ artegorov3@gmail)
雨天時は残り溝の深さが非常に重要。溝が浅いと十分に水が排水されないため、タイヤが路面にしっかりとグリップすることを遮ってしまう(PHOTO:Adobe Stock_ artegorov3@gmail)

残り3.1mmのタイヤでは、約1.7倍も制動距離が長くなった

 ウェット路面においてタイヤの溝がどれだけ影響するかについては、JAFの実験が参考になります。JAFが実験したのは、溝の深さが違うタイヤを3種類用意し、それぞれでドライ路面とウェット路面を走行したときの制動距離を計測するというもの。タイヤの溝の深さは、7.6mm(新品)と平均4.7mm(5分山)、そして平均3.1mm(2分山)の3種で、実験は60km/hと100km/hで直線路を走行中にフルブレーキングをするという内容で行われました。

 その結果、ドライ路面では100km/hでも、3つのタイヤの制動距離に大きな違いはなかったものの、ウェット路面では、60km/hで2分山タイヤの制動距離が、5分山と新品よりも1.3m長くなり、100km/hでは新品タイヤの(ウェット)制動距離47.6mの1.5倍になる、70.5mにも達したとのこと。2分山タイヤの100km/hドライ路面での制動距離は42.6mだったので、2分山タイヤは、ウェット路面で、ドライ路面よりも約1.7倍も制動距離が延びていることになります。

 この実験では、旋回中のブレーキテスト(60km/h)も行われており、2分山タイヤは、新品タイヤよりも2倍近くもタイヤが旋回外側にスリップするという結果がでています。これは、左旋回では対向車と接触リスクが高くなり、右旋回では側壁やガードレールに衝突したり、崖から落ちてしまうというリスクが高くなることを示しています。実際、首都高速のデータ(事故形態別割合)でも、雨天時以外は側壁やガードレール等に衝突する施設接触事故が全体の約1割であるのに対し、雨天時は約3割を占めています。

摩耗タイヤの検証(JAFユーザーテスト)

残り溝が少ないと、旋回外側へ流れる距離が大きくなる(JAF「摩耗タイヤの検証(JAFユーザーテスト)」より)
残り溝が少ないと、旋回外側へ流れる距離が大きくなる(JAF「摩耗タイヤの検証(JAFユーザーテスト)」より)
雨天時以外は施設接触事故が全体の約1割であるのに対し、雨天時は約3割と雨天時は施設接触事故が増えている(首都高ドライバーズサイト「雨の日に事故が多発しています」より)
雨天時以外は施設接触事故が全体の約1割であるのに対し、雨天時は約3割と雨天時は施設接触事故が増えている(首都高ドライバーズサイト「雨の日に事故が多発しています」より)

次ページは : 溝が十分に残っているタイヤでも、雨天時は慎重な運転を!!

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