「技術の日産」名門車パルサーの高性能と終焉 【偉大な生産終了車】

■日産自ら断ち切った国内の系譜 しかし物語は続く

 長らく愛されたパルサーというブランドが日本では消滅してしまった理由。それは、結局のところは「車に対する日本人の嗜好の変化」のせいなのでしょう。

 初代パルサーが登場した1970年代のニッポンの自動車業界は、まだまだ「欧州に追いつけ追い越せ」の時代でしたから、主に高速域での走行性能を高めることこそが至上命題でした。

4代目パルサーに設定された、WRC参戦を前提に開発されたモデル。2Lの直4DOHC 16バルブターボエンジンは230psを発揮。ブルーバードに積まれ評価を得たフルタイム4WDシステム、「ATTESA」ビスカス式LSDを備える

 そしてその命題のクリアを、ユーザー側も強く求めていました。多くの人が「もっと速く走りたい!」と願っていたのです。

 で、そんな命題をクリアできたからこそ初代パルサーはヒット作となり、その後の各世代へとバトンを渡すことができました。

 そして世の中に「車で速く走ること」に対する熱意がまだまだ充満していた1990年には、伝説の「GTI-R」も誕生しました。

 しかし1992年に登場した2代目の三菱 パジェロをきっかけにいわゆる「RVブーム」が巻き起こると、世の中の興味の的は「速く走ること」から「大きな車でゆったり安全に走り、そして出かけた先で何らかのアクティビティを存分に楽しむこと」へと大きく変わっていきました。

 そうなると、売れるのは=商売になるのはRV(今で言うSUV)やミニバンということになりますので、自動車メーカーとしては、さほど売れるわけでもない「小気味良いハッチバック」の開発に人やカネといった資本を投下するのを躊躇するようになるのは、残念であるのですが「当然」だとも言えます。

 そのような流れで日産はパルサーに見切りをつけ、ミニバンやSUV、あるいは「特別楽しいわけではない、ごく普通のハッチバック車」をビジネスの中心に据えました。

オーストラリアなどでは2000年以降も「パルサー」の名前でブルーバードシルフィを販売、その後中国・ヨーロッパ・ロシアなどで「C12型ティーダ兼パルサー」が発売された(2011年)。2014年10月のパリサロンでは「NISMOバージョン」(=写真中央)も公開されている

 しかしトヨタから新型ヤリスが登場し、ホンダの新型フィットも大人気の納車待ちとなっている昨今、大きめな車だけでなく「小さいけど、ちゃんとしっかり走る車」へのニーズが再び高まっているようにも感じられます。

 そうなると、それが「パルサー」という車名になるかどうかはさておき「パルサー的なる日産製小型ハッチバック」が、もしかしたら今後、日本市場にも投入される可能性はあるのかもしれません。まぁわかりませんが……。

■日産 パルサー(4代目)主要諸元
・全長×全幅×全高:3975mm×1690mm×1400mm
・ホイールベース:2430mm
・車重:1220kg
・エンジン:直列4気筒DOHCターボ、1998cc 
・最高出力:230ps/6400rpm
・最大トルク:29.0kg-m/4800rpm
・燃費:9.3km/L(10 モード)
・価格:227万円(1990年式GTI-R)

【画像ギャラリー】初代のセダン、ハッチバック、クーペ、そして4代目「GTI-R」をギャラリーでチェック!!!

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