理論派レーシングドライバーとして知られる中谷明彦氏が、究極の燃費向上方法を語る! クルマの特性、機械抵抗、空気抵抗、タイヤ、足回り、ペダル操作……etc。燃費運転を実現する近道はやっぱりクルマをよく理解することだった!?
文:中谷明彦/写真:ホンダ、ポルシェ、ベストカーWeb編集部
【画像ギャラリー】ただ燃費が良いってクルマに乗るだけでは不十分! 抵抗、タイヤ、足回り、ペダル操作、クルマへの理解…… 燃費向上とはクルマの総合学問だ!(8枚)画像ギャラリーエンジン、タイヤそして空気抵抗を理解しよう!
燃費を良くするという行為は、単に「ゆっくり走る」ことではない。そこには明確な物理法則が存在し、ドライバーがその法則をいかに理解し、制御するかが鍵となる。クルマは走行中、常にさまざまな抵抗にさらされている。
まず、パワートレーンなど稼働部内の機械抵抗。エンジンのピストンやバルブ、トランスミッションのギアやベアリングなどは、すべて摩擦を伴う。続いて、タイヤの転がり抵抗。路面に接地することでタイヤのケーシングやトレッドゴムが変形と復元を繰り返し、そのエネルギーが熱として失われる。
そして最大の敵となるのが空気抵抗である。空気抵抗は速度の2乗に比例して増大する。つまり、時速50kmと100kmでは数値は2倍だが抵抗値としては4倍となる。これらが燃費に直結するのだ。したがって、交通の流れを乱さない範囲で速度を抑えることが燃費向上の第一歩となる。
「発進」を侮るなかれ!!
次に重要なのが「発進」である。停止状態から車体を加速させるためには、車両質量の大きな慣性を乗り越える必要がある。物理的に見れば、運動エネルギーは速度の2乗に比例する。つまり、少しの速度変化でも加速するだけで大きなエネルギーを消費する。
これらを少しでも抑えるには、先々の信号や交通の流れを読むことが欠かせない。赤信号が見えているのに強く加速させ、急制動をかけるのは極めて効率が悪い。むしろアクセル開度を極わずかに抑え、一定速度を保ちながら滑らかに流れに乗せることが、燃費運転の基本となる。
ここで鍵となるのが「コースティング」である。走行中の車は運動エネルギーを持ち、慣性力が発生している。この惰性領域による走行を積極的に活かすことが、燃費向上の近道だ。実際、ポルシェ 911のティプトロニックAT仕様にもコースティングモードが採用されていた。911のような高性能スポーツカーですら惰性走行を重視しているという事実は、燃費運転の理論的裏付けに他ならない。
もちろん「足元」もお留守にしてはいけない!
燃費運転を語るうえで見落とされがちなのが、タイヤと足まわりのセッティングだ。タイヤの転がり抵抗は、ゴムの変形量に比例する。空気圧が低ければ接地面やタイヤ断面形状の変形が増し、燃費は悪化する。したがって、指定圧の範囲でやや高めに空気圧を維持する方が望ましい。
もちろん乗り心地は多少硬くなるが、それは効率とのトレードオフだ。 さらに、ホイールアライメントも燃費に大きく影響する。トーインやキャンバー角は本来、直進安定性や旋回性能を確保するために設定される。
しかしそれは同時に抵抗となる。近年では、モード燃費試験を意識してトーインゼロで出荷される車両も多い。しかし、実際の走行では横風や路面外乱に対して姿勢を乱しやすくなり、修正舵が増えることで、かえって実燃費には貢献しないこともある。
ハンドルを切ること自体が舵角抵抗を生む以上、無駄な操舵を避け、最小限のステアリング操作でスムーズにコーナリングすることも燃費運転の一部と考えるべきだ。











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