「エコカー減税」の期限が2026年4月30日に迫っている。環境に優しいクルマの税金が安くなるこの税制がなくなると、いったいどんな事態になるのか? そもそもエコカー減税とはどのような制度で、今こそ新車に切り替えたほうが得策なのだろうか?
文:鈴木喜生/写真:トヨタ、三菱自動車、写真AC
【画像ギャラリー】エコカー減税の(5枚)画像ギャラリーバカにならない免税額と減税額
エコカー減税とは、排出ガス性能や燃費性能に優れたモデルに対する「自動車重量税」を免税、または軽減する制度のこと。
EV(電気自動車)、PHEV(プラグイン・ハイブリッド車)、FCV(燃料電池車)、NGV(天然ガス車)などの場合は、1回目の新車登録時車検で徴収される重量税(3年分)と、2回目の「初回継続車検」で徴収される重量税(2年分)が100%免税となる。
これによってエコカー減税対象の普通乗用車(1.5トン超~2トン)の場合には、計5万円(1回目3万円+2回目2万円)が免税され、中古車の場合は2回目の車検だけが免税の対象となる。
一方、HEV(ハイブリッド車)を含むガソリン車、クリーンディーゼル車、LPG車の場合は、新車登録時の車検(3年分)だけに適用されるため、中古車は対象外となる。
その減税率は燃費基準の「達成率」に応じて変化し、例えば普通乗用車(1.5トン超~2トン)の場合には、対象モデルの場合は「本則税率(減税前の標準税率)3万円(3年分)」が基準とされ、達成率80%であれば税額2万2500円(25%減税)、達成率90%であれば税額1万5000円(50%減税)となる。
達成率とは、国が定める次世代自動車燃費基準(2030年度燃費基準など)に対して、車両がどの程度優れた燃費性能を持っているかを示す指標であり、基準値を100%としたときに、実際の燃費性能がどれほど上回っているかを割合で表したものだ。
つまり、達成率が高いほど環境性能が優れているとされ、税負担も軽くなる仕組みになっている。
達成率100%であれば免税となり、さらに達成率125%以上であれば、2回目の「初回継続車検」の際の重量税3万2800円(2年分)も免税される。一方、エコカー減税の対象外のモデルでは4万9200円(3年分)が徴収される。
各モデルが減税対象車であるか、どの程度の達成率であるかは、国土交通省と経済産業省が策定した「2030年度燃費基準」に基づいて、各モデル(車種・グレード)の型式認定の際に審査・決定されている。
その詳細はJAMA(日本自動車工業会)のウェブサイトや、各メーカーの公式ウェブサイトなどで確認できる。
JAIA(日本自動車輸入組合)「輸入車(外国メーカー車)のエコカー減税対象車」
純ガソリン車が続々とHEVへシフトするワケ
2009年から続くエコカー減税は2023年度の税制改正によって、「2025年5月1日から2026年4月30日」までの延長が決定されているが、現在ではその終了に向けてカウントダウンが進んでいる。
エコカー減税の税率はこれまで二度にわたって見直されており、2024年1月(第1回改定)ではガソリン車などの達成率の下限が60%から70%に引き上げられ、また、2025年5月(第2回改定)では80%まで引き上げられて、対象車種がどんどん絞られている。
二度の改正によって、純ガソリン車 は実質的に優遇の対象外とされてきた。その結果、トヨタが「カローラ」シリーズのセダン、ツーリング、スポーツ、クロスの4モデルや「RAV4」などの純エンジン仕様を廃止してHEVへ移行。日産「ノート」はe-POWERに、三菱自動車「アウトランダー」はPHEVに一本化されている。
このように対象モデルの厳格化が進むエコカー減税は現行の制度においては2026年4月30日に終了する予定で、それ以降も継続されるかは現時点においては未定だ。
ただし、政府がカーボンニュートラルを推進していることからも、現行の制度基準がさらに厳しく見直されるものの、2026年5月以降も新基準・新軽減率で継続される可能性が高い。
エコカー減税に関しては、秋から冬にかけて与党と財務省による税制調査会で審議され、12月中に「税制改正大綱」が閣議決定されることでその方向性が定まる。そこで継続の指針が打ち出されれば、2026年1~3月の通常国会で法案の提出・審議・可決という工程を経て、新たな制度が発表される。
混沌とした政局から抜け出した感のある今、政府の動向に改めて注目が集まっている。







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