どうなるレクサスのSUV戦略 国内で直面している課題と今後

■販売は好調ながら「トヨタのレクサス」を払しょくできないレクサスの苦悩

 一方レクサスブランドでは、最もコンパクトなSUVのUXは、1カ月平均で1000台を登録する。NXは900台、RXは高価格車ながら1700台と少し多い。それでもトヨタブランドのSUVに比べると伸び悩む。

 背景には複数の理由があり、まずはレクサスの店舗数が少ないことだ。トヨタブランドは全系列を合計すると全国に約4600店舗あるが(それでもこの数年間で約300店舗減った)、レクサスは約170店舗に限られ、青森県、秋田県、福井県、山梨県など1県に1店舗の地域も多い。

レクサス国内最量販車種のUX。C-HRと同じプラットフォームを活用した小型SUVで、2019年は年間1万4000台超を販売

 そのいっぽうで、東京都は29店舗、愛知県には17店舗を出店している。この出店比率は、国内における正規輸入車の地域別新車販売比率とほぼ同じだ。2019年に全国で新車として売られた正規輸入車の登録台数を地域別に見ると、東京都が全体の16%を占めた。レクサスも東京都が29店舗だから、全国170店舗の17%だ。

 愛知県の輸入車販売比率は9%で、レクサスの出店比率も全国の10%に相当する。日本版レクサスは、輸入車の販売増加を食い止める目的で営業を開始したから、出店の仕方も輸入車の登録台数に比例しているわけだ。

 ただしレクサスは、海外ではメルセデスベンツやBMWと同列のプレミアムブランドだが、日本では受け止め方が違う。トヨタを含む海外における日本車は、1970年代のオイルショックの時、燃費が優れ、壊れにくく、価格が安いことをセールスポイントに普及した。それが日本のトヨタは、1955年に発売された高級乗用車のクラウンからブランド構築と普及を開始している。

 トヨタ店のセールスマンは「新型クラウンが登場すると、今でもすべてを販売店に任せて購入するお客様が多い」という。それはトヨタに絶大な信頼を置いているためで、日本ではレクサスではなく、トヨタこそが崇高なブランドだ。

 従って日本では「トヨタのレクサス」と受け止められ、トヨタ車からレクサスに上級移行するユーザーも多い。そうなるとレクサスは、トヨタブランドと同じく、どこに住んでいても公平に購入できる体制を整えねばならない。1県に1店舗では「トヨタのレクサス」としては不十分だ。

 また日本では「トヨタのレクサス」だから、長い伝統に支えられるメルセデスベンツに比べると、高級車のブランド力では見劣りする。そこに対抗するためにも、レクサスは販売店舗数を充実すべきだ。

 この場合、豪華な大型店舗を設ける必要はない。トヨタの販売店の敷地内に、レクサスの店舗を併設しても良い。大切なことはトヨタブランドと同じように、自宅に近い店舗で便利に購入したり、点検を受けられることだ。

 ちなみに輸入車の場合、都市部以外では、正規販売店ではない業販店が普及している。修理が中心の店舗も多く、正規の販売会社から複数のブランドを仕入れて売ることが多い。レクサスにも柔軟な対応が求められる。

 このような事情もあり、メルセデスベンツは2019年度(2019年4月から2020年3月)に日本国内で6万4539台を登録したが、レクサスは5万8030台であった。レクサスを日本でさらに伸ばすには、国内に適した売り方をする必要がある。

■レクサスに求められる今後のSUV戦略

 レクサスの商品ラインナップでは、販売の主力となるミドルサイズSUVの「NX」が古い。今はフルモデルチェンジの周期が長く、例えば「現行IS」は2011年に発売されながら、今後2020年に行われるのはマイナーチェンジだ。NXの登場は2014年で、2019年に安全装備を進化させる改良を実施したから、今後もしばらくは現行型を売るだろう。そうなると商品力と販売力が弱い。

 国内市場に合った比較的コンパクトな「UX」の伸び悩みもある。内装の仕上げやステアリングホイールに伝わる微振動など、UXはプレミアムブランドとしては質感が冴えない。C-HRをベースに開発したことを意識させる。実用面では後席と荷室が狭めだ。その割に価格は450~500万円が売れ筋でNXに近い。改良を加えながらNXを売り続けるなら、UXの質感を改善することも考えたい。

2014年7月に登場した「NX」。改良は行っているが、ライバルに比べると、どうしても古さを感じてしまう

 そして今のSUVに求められるのは、原点回帰を思わせるクルマ造りだ。都会的なワゴン風のSUVが定着してから、約20年を経過しており、最近は往年のオフロード感覚を備えた野性的なSUVを好むユーザーが増えてきた。そのためにRAV4、ライズ、ジムニーの人気が高く、エクストレイルも発売から6年を経過しながら堅調に売れる。

 レクサスにもランドクルーザーと共通のメカニズムを備えた「LX」があるが、極端に大柄で価格も1000万円を軽く超える。RAV4を上質にしたような野性味のあるSUVが欲しい。

 今はロールスロイスまでSUVを手掛ける。スポーツカーや高級セダンは、一度ブームを経験した後で廃れたから、SUVが付加価値を見込める最後のカテゴリーと考えられている。そのために世界中のブランドがSUVに群がっているが、今の状態は非常に危うい。ユーザーが飽食状態に陥り、SUVの需要が急落することも考えられるからだ。

 レクサスはミドルサイズハッチバックの「CT」をテコ入れしたり、コンパクトなプレミアムセダンをそろえるなど、SUV人気が過ぎ去った後も堅調に需要を支える車種を整えておく必要がある。さまざまなカテゴリーとサイズの車種を選べることも「トヨタのレクサス」にとって不可欠の条件だ。

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