元フォードのマーク・フィールズ氏に『ブランド戦略』を一から学ぶ
そんな時代に出会ったのが、1998年8月にフォードからやってきて、後に38歳の若さで社長に就任したマーク・フィールズ氏だった。
「“カーガイ(クルマ好き)”としても知られるフィールズ氏が『ブランド戦略をやるんだ』というんです。この時点で我々にとって『ブランドって何?』といった状況でした。技術には自信があっても、恥ずかしながら『ブランド』について明確な概念を持てていなかったんです。それをフィールズさんは指摘し、『無形資産の価値を上げるんだ』という考え方を確立してくれたと思います」
2000年から海外市場でブランドメッセージとして発表された「Zoom-Zoom」は2002年アテンザが発売するタイミングで本格的に使用され始める。当初、「Zoom-Zoom」という英語のスローガンに対して、日本の社内オペレーションは猛反対だったという。
しかし、「Zoom-Zoom」の影響は予想以上だった。マツダが本来持っていた『走る歓び』を全世界共通のブランドメッセージに据えたことで、社内のエンジニアや営業スタッフ、さらには世界中のユーザーに対して「マツダとはどういうクルマを作る企業なのか」という共通認識(アイデンティティ)が確立していった。
その結果、ブランドという無形資産の価値を高める意識が社内に浸透し始めていくことになる。
毛籠社長は2002年グローバルマーケティング本部長に就任すると、2004年にはマツダモーターヨーロッパGmbhの副社長となりドイツに赴任する。大きな驚きだったのは、従業員たちがマツダブランドに対して自信と誇りを持って生き生きと働いていたことだ。その時会社の規模ではなく、ブランド価値が高い会社が優れた会社だと気づいた。
「Zoom-Zoom」というブランドスローガンのグローバル展開は毛籠社長に重要な教訓をもたらした。
「社内力学ではなく、現場の実感を重視することがいかに大切かを痛感しました」と振り返る。
そんな思いを抱きながら迎えた2002年4月、毛籠社長は「グローバルマーケティング本部副本部長」に、さらに同年8月にはグローバルマーケティング本部長に就任。これを皮切りに活躍の場は国内だけでなく、世界へも広がっていく。
マーク・フィールズ氏からの教えや欧州駐在を通じてブランドとは何かを学び、その後、米国でブランド価値経営を実践していくことになる。(後編に続く)
PROFILE
毛籠勝弘(もろ・まさひろ:1960年京都市生まれ)
マツダ車の販売店に勤め、さらには釣りやハンティングなどをたしなむ趣味人だった実父の影響もあり、幼い頃から“車のある生活”を実感。京都産業大学法学部卒業後の1983年、ブランドへの愛着もありマツダへ入社。以来、一貫して営業、グローバル販売、ブランド戦略の最前線を歩み、欧州、北米、日本を股に掛けて現場経験を積み上げる。
2016年1月に「マツダモーターオブアメリカ, Inc.」の社長兼CEOに就任。単なる“値引き販売”から脱却し、お客様志向を軸にした「ブランド価値戦略」への転換を実現。2023年6月にマツダの代表取締役社長兼CEOに就任し、同社が掲げる2030ビジョン「クルマ好きの会社になる」という方向性がより鮮明に。「量」ではなく「価値」で戦う毛籠改革の真価が新型CX-5で問われる。
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