現代の試乗会が目指すべき原点
経験豊富なテストドライバーであれば、その限られた情報からシャシー性能や限界特性をある程度推測することはできる。しかし、それを裏付ける機会がほとんど失われてしまった。
だからこそ近年は、R35 GT-Rのようにベルギーのスパ・フランコルシャンやドイツのアウトバーンを組み合わせ、合法的に300km/h近い速度域まで体験させる試乗会の価値が一段と高まっている。メーカーにとって開催コストは決して安くない。しかし、その場で得られた経験は数十年経っても鮮明に記憶に残り、そのクルマの価値を語り継ぐ財産となる。
思い返せば記憶に残る試乗会はいずれも単なる試乗ではなかった。メーカーの歴史を知り、思想を理解し、技術を学び、限界性能を体感する。その一連の体験すべてがクルマという工業製品の価値を深く理解させてくれたのである。
試乗会とは、本来「クルマを走らせる場」ではない。「クルマという作品を理解する場」である。その原点を思い起こさせてくれた数々の経験が、その後のモータージャーナリストとしての基盤を補強してくれたのだ。
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