■わずか2000円程度で売買される「道具」
文:国沢光宏
ユーザーにとって便利なシステムというだけでなく、高度な暗号を使うため、これまで比較的車両盗難に強いと言われてきたスマートキーにもかかわらず、「リレーアタック」の手口の判明によって今後ますます防犯上の対策強化が求められるのは必至。
調べたところによると、リレーアタックは2014年に注意喚起されており、昨年もドイツのJAFに相当するADACが実証試験まで行い、自動車ユーザーに対して啓蒙活動を始めている。
困ったことに、現時点ではリレーアタックを防ぐための対抗策は実用化されておらず、狙われたら相当な確率で盗難されてしまうのだという。
なぜ今まで表立った被害が出ていなかったかといえば、窃盗団が(理屈はわかっていても)リレーアタックの〝道具〟を作れなかったためらしい。
しかし、中国でリレーアタックに使われる〝道具〟の実用化を確認したというレポートが、2017年4月10日よりオランダで開催された「HITB Sec Conf2017」(国際的なセキュリティに関する会議)で発表された。
驚くべきことにこの中国人窃盗団の〝道具〟、20ドル程度で売買され始めているという。
考えてみたら、かつてイモビカッターと呼ばれる、OBD2端子に差し込んでエンジン始動する〝道具〟の登場により、日本で中国人窃盗団の大規模車両盗難事案が発生した。リレーアタックも同じような状況になる可能性大。
■情報を出したがらないメーカー
困ったことに自動車メーカーはリレーアタックについての情報を出したがらない。
実際に各社に問い合わせたところ、多くの自動車メーカーがノーコメントだった。警察もいまだ注意喚起しておらず。
従ってスマートキーのクルマを持つオーナーからすれば、なんの情報もなく突如盗まれてしまう。もちろんクルマのなかのバッグを盗むことだって簡単だ。
また、都心に多い2階建てや3階建ての戸建て住宅で、玄関のすぐ前に駐車場があるようなケースも注意が必要。
駐車場に近い1階の玄関付近にスマートキーを保管しているような場合、これも電波を傍受されてしまうからだ。
いずれにせよ、盗む側は情報をたくさん持っていて、盗まれる側がなんの情報もない状態が日本では続いている。
それなのに被害に遭う側がメーカーに問い合わせたってなんの情報も出してくれない。無回答だったメーカーの広報担当者は、自分がユーザーだったらどうかと考えて欲しいと思う。
ひと昔前ならこんな黒塗り文章みたいな対応などなかったのだが……。
■スマホの「電波漏れ防止ポーチ」がリレーアタック対策に有効??
ということで、現時点では私ら自動車ユーザーが自衛するしかないワケだが、リレーアタックに対する防止策はないのだろうか? 実はいくつかある。
まず、ひとつ目は多重のセキュリティを組むこと。10万円程度でスマートキーとは違うロジックのセキュリティを付けることができる。このシステムによってドアロックの施錠もエンジンの始動でもできなくなるから嬉しい。
ふたつ目はクルマで繁華街などに行く時にかぎり、スマホなど携帯電話を病院内に持ち込む際に使う「電波漏れ防止ポーチ」を活用する作戦だ。
ネット通販ならば1000円以下で購入できる。クルマから降りたら、ポーチに入れておけばスマートキーからの微弱な電波漏れを防ぐことができる。
また、同じようにスマートキーからの電波を遮断してしまう金属製の缶ケースのなかにスマートキーをしまうという手段もある。
あとは物理的にハンドルを動かせなくする盗難防止用のハンドルロックや、タイヤが動かせなくなるタイヤロックを装着する手もある。
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