ヤリスクロスの勝算はいかに?トヨタが本気でSUVを席巻しに来た!

■ヤリスクロスは大ヒットするのか!? 強力ライバルたちと比較する

 冒頭で述べた通り、今のトヨタにはSUVが豊富に用意される。用途や好みに応じて選び分けられるため、需要が1車種に集中することはない。従ってヤリスクロスが爆発的に売れるとは考えにくいが、今はコンパクトカーとSUVの人気が高い。ヤリスクロスは両方の魅力を兼ね備えるから、相応の人気は得られるだろう。

 関心の高い安全装備の衝突被害軽減ブレーキにも注目したい。交差点を右折する時は、ヤリスと同じく、直進してくる対向車を検知して衝突被害軽減ブレーキを作動させる。右左折時に横断歩道上の歩行者を検知することも可能だ。

 車間距離を自動制御できるレーダークルーズコントロールは、ヤリス以上に進化する。ヤリスはパーキングブレーキがレバー式だから、追従速度が30km/h未満に下がると解除されるが、ヤリスクロスは電動式だ。

 停車したあと、発進までの時間が長引いた時には自動的にパーキングブレーキを作動させるから、停車状態まで含んだ全車速追従型になる。ヤリスクロスは、クルーズコントロールの使用頻度が高いユーザーにも推奨できる。

 そこで気になるのが価格だ。ヤリスクロスのライバル車は、コンパクトSUVの人気車とされるホンダ「ヴェゼル」で、燃料タンクを前席の下に搭載した。そのために後席と荷室が広い。仮にヤリスクロスの価格が同程度の装備を採用したヴェゼルよりも高まると、割高感が生じてしまう。ヤリスクロスは若干安く抑えるだろう。

2019年1月に1.5L VTEC ターボエンジンを搭載した「ツーリング・ホンダセンシング」を追加したホンダ「ヴェゼル」。後席と荷室はライバルに比べ広い

 ヴェゼルの2WDの価格は、1.5Lノーマルエンジンを搭載する「X ホンダセンシング」が220万5093円、「ハイブリッドX ホンダセンシング」は258万6018円だ。そうなるとヤリスクロスの価格は、ノーマルエンジンを搭載する2WDの中級グレードが218万円、ハイブリッドは253万円くらいだ。ベースとなるヤリスの価格は、ノーマルエンジンの「Z」が192万6000円、「ハイブリッドZ」は229万5000円だから、ヤリスクロスは25万円くらい高い。

 ちなみに日産の販売店によると、2020年6月24日に延期発売される「キックス e-POWER・X(2WD)」の価格は275万9900円だ。装備も充実するから、価格はヴェゼルハイブリッドの上級グレードになる「Z ホンダセンシング」の276万186円を意識した。ただし感覚的には、キックスが270万円を超えると、若干割高に受け取られそうだ。

5月15日にタイで発表されたビッグマイナーチェンジモデルの日産「キックス」。日本仕様はe-POWER専売となることが決定している

 ヤリスクロスは、身内となるトヨタのSUVとも比較される。まずC-HRの価格は、1.2Lターボを搭載するベーシックな「2WD・S-T」が240万円、ハイブリッドの「2WD・S」は273万円だ。ヤリスクロスは、C-HRに比べると約20万円安い。

 トヨタ「ライズ」は、全長が4mを下まわる5ナンバーサイズのSUVで、エンジンは直列3気筒1Lターボだ。この「2WD・Z」は206万円だから、ヤリスクロスはライズに比べて約12万円高い。

2020年5月時点で、4.5カ月という納期となっているトヨタ「ライズ」。2020年1月の販売実績は1万220台を達成、登録車のトップセラーとなる人気ぶりだ

 このようにヤリスクロスの価格は、トヨタ車同士で比べると、ライズよりは高くC-HRに比べると安い。ライバル比較ではヴェゼルとキックスを少し下まわる。この価格で登場すれば、ヤリスのようなコンパクトカーでは物足りないと感じるユーザーも含めて、堅調に売れるだろう。

 2020年4月にヤリスは約1万台を登録した。ヤリスがこの売れ行きなら、ヤリスクロスは2500~3000台、つまりヤリスの25~30%を販売する。今のRAV4やノアと同程度だ。今のトヨタ車では、ポルテ&スペイド、プレミオ&アリオン、プリウスαなどの設計が古く、売れ行きも下がった。ヤリスクロスはこれらの車種を補い、国内販売を支える役割を担っていく。

【画像ギャラリー】SUVラインナップ充実のトヨタにあってヒットなるか!? ヤリスクロスを詳しくチェック!!

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