日産 シルビアが歩んだ37年の浮沈 「ヒット」と「不発」繰り返した名車!【偉大な生産終了車】

■シルビアが7代で潰えた2つの理由

 1代おきに豊作と不作を繰り返していたとはいえ、基本的には「伝統のブランド」だったといえる日産シルビアはなぜ、7代目のS15を最後に消えてしまったのでしょうか?

 理由は2つ。クーペというジャンル自体の凋落と、平成12年度排ガス規制です。

 大ヒット作となったS13(5代目シルビア)が現役だった1992年頃の空気を、筆者はよく覚えています。

 筆者が当時勤務していた一般メーカーで、筆者の対面に座っていたTくんという、特に自動車マニアではない同期入社の青年が「あー、もう給料が余っちゃって仕方ないから、三菱GTOでも買おうかな!」なんて独り言を大声でつぶやいていたのが、1990年代前半という時代でした。

 「給料が余っちゃって」うんぬんの発言は彼が実家暮らしだったゆえですが、そこはさておき、Tくんのようなマニアではない普通の青年も車にそれなりの興味を持っていて、そして「買うならやっぱ速い車だべ?」と思っていたのが、S13が大ヒットした1990年代初頭のニッポンでした。

 しかし1990年代も半ばを過ぎると、販売台数ランキングの上位にミニバンいくつか入ってくるようになり、S15シルビアがデビューした1999年には、トップ30のうち8台がミニバンで占められるようになりました。

7代目シルビア(1999年・S15)…S14で不評だった3ナンバーサイズを5ナンバーに戻すなど、随所を刷新し登場したが、5代目のような勢いを取り戻すことは叶わなかった

 時代の風向きが明らかに変化し、いわゆる普通の男子でもクーペあるいはスポーツカーに興味を持っていた時代が終わり、ごく一部のコアな人間だけが、それに興味を持つ時代となったのです。

 そうなるとS15シルビアがいくら力作でも、いくら美しくても、そして5ナンバーサイズに戻っても、ごく少数の者しか買ってはくれません。

 そしてそこに追い打ちをかけたのが、前述した平成12年度排ガス規制の「猶予期限」でした。

 平成12年排ガス規制は2000年からすでに施行されていましたが、すでに市販済みの乗用車は2002年8月までの猶予が認められていました。

 で、S15シルビアはSR系エンジンを2002年8月までに改良すれば良かったのですが、あいにくシルビアに搭載されていたSR20DE/DETは、他のモデルと違って「縦置き用」でした。

 他に流用が利く横置き用のSR系エンジンはさておき、シルビア専用と化していた縦置き用ユニットを、「今後も数は売れない」とわかりきっているクーペのためにコストを投じて改良するのは、企業としてはあり得ない選択肢でした。

 そのため、美しかったS15はカタログから消えていったのです。また他メーカー製クーペのいくつかも、ほぼ時を同じくして消えていきました。

 仕方のないことだとはいえ、なんとも残念な「2002年」でありました。

■日産シルビア(S15)主要諸元
・全長×全幅×全高:4445mm×1695mm×1285mm
・ホイールベース:2525mm
・車重:1240kg
・エンジン:直列4気筒DOHCターボ、1998cc
・最高出力:250ps/6400rpm
・最大トルク:28.0kgm/4800rpm
・燃費:11.2km/L(10・15モード)
・価格:239万円(1999年式スペックR 6MT)

【画像ギャラリー】初代登場から55年! 7代に渡るシルビアの系譜をギャラリーでチェック!!!

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