夜道で「最近のクルマ、ちょっと眩しすぎない!?」と感じたことはないだろうか。見やすさを求めて進化してきたはずのヘッドライトだが、明るくなればなるほど安全になるとは限らない。では、本当に優れたヘッドライトとはどんなものなのか? 自分だけでなく周囲も安心して走れるために必要なものとは何なのか。公道からレースまであらゆる状況を経験してきたプロドライバー中谷明彦氏が解説する。
文:中谷明彦/写真:ベストカーWeb編集部、メルセデス・ベンツ、小糸製作所ほか
※写真はイメージです
【画像ギャラリー】ホントに約20年前のクルマ!? ベンツSクラスのスゴすぎる暗視装置がコレ!!(15枚)画像ギャラリー「明るければ安全」なのか?
クルマの安全装備は日々進化している。そのなかでも近年、劇的な変化を遂げた装備のひとつがヘッドライトだ。
ハロゲンからキセノン(HID)、そしてプロジェクター(エリプソイド)やLEDへ、光源の進化によって夜間の視界は飛躍的に向上し、以前では考えられないほど明るく遠くまで路面を正確に照らせるようになった。さらに近年ではデイライトの普及やオートライトの義務化、夜間は原則ハイビームで走行し、必要に応じてロービームへ切り替えるという考え方も一般的になってきた。
しかし、その一方でヘッドライトの「明るさ」が新たな問題を生んでいることも事実である。実際、都内を走っていても対向車のヘッドライトが眩しすぎて一瞬視界を失うような場面は少なくない。交差点で信号待ちをしているときでさえ、対向側のクルマのヘッドライトが真正面から照射され、歩行者や周囲の状況を確認しづらいと感じることもある。
さらに後続車のヘッドライトがルームミラーやドアミラーに反射し、長時間眩しさにさらされることも珍しくない。つまり、ヘッドライトは「見えるようにする装備」であると同時に「他人の視界を奪ってしまう装備」にもなり得ているのである。
LEDに必要なのは明るさよりも光の制御
近年主流となったLEDヘッドライトは消費電力が少なく寿命が長いだけでなく、非常に高い光量を確保できる。高速道路や街灯の少ない郊外の夜間ではその恩恵は大きい。遠くまで白く鮮明に照らし出し、路肩の歩行者や障害物を早期に発見できるため安全性は確実に向上している。
しかし、その性能を十分に生かせていない車種も存在する。レンズ設計や光の配光制御が適切でないと必要以上に光が拡散し、対向車に強烈な眩しさを与えてしまう。いわゆる「爆光」と呼ばれるようなヘッドライトも存在し、ドライバーによっては視界が完全に白飛びさせられてしまうことさえある。
こうなると明るければ安全という単純な話ではなくなってくる。光を必要な場所へだけ届け、不要な方向には漏らさない。その精密なコントロールこそが、本当に優れたヘッドライトに求められる性能と言えるのだ。
吹雪でヘッドライトが見えなくなる!? LEDが抱える意外な弱点
LED化によって生まれた問題は、もうひとつある。それは発熱量が少ないことだ。
自身が所有しているジープ ラングラー4xeもLEDヘッドライトを採用している。普段の夜間走行では非常に明るくて安心感も高い。ところが、冬、吹雪の夜に走行した際、ヘッドライトに雪が次々と付着してしまいレンズ全面が雪で覆われてしまった。
LEDは発熱が少ないため雪が溶けず、ライトは点灯しているにもかかわらず光がほとんど前方へ届かない。慌ててフォグランプを点灯したが、こちらもLEDだったため状況は同じだった。結局、他車のライトを頼りに走るしかないほど危険な状態となってしまった。後日、高温になるハロゲンバルブを使った補助灯を追加装着することにした。
LEDは理想的な光源ではあるが、寒冷地という特殊な環境では従来のハロゲンの方が優れている面もあるというわけだ。技術は進歩しても、新しい課題が生まれる典型的な例と言えるだろう。ヘッドライトヒーターやヘッドライトワイパー、同ウォッシャーなどを装備する必要性もある。


















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