濃霧では「明るさ」が逆効果!?
夜間の安全はヘッドライトだけで成立するものではない。濃霧の中では、どれだけ明るいライトを点灯しても光が霧で乱反射し、かえって何も見えなくなる。箱根の山道では昼間でも濃霧に包まれ、自分のクルマから数歩離れて振り返ると車体が見えなくなるほどの状況に遭遇することがある。そんな環境では、光を強くすることは何の解決にもならない。
ここで威力を発揮するのが赤外線によるナイトビジョンシステムだ。メルセデス・ベンツやBMW、ベントレーなどが採用してきたこの技術は、赤外線によって前方の熱源を検知し、人や動物、建物、植物などを温度差として映し出す。
その映像は白黒だが非常に鮮明で、濃霧や夜間でも状況把握がしやすく、「この画面だけを見て運転できるのでは」と思うほどの視認性を持っている。こうした技術を組み合わせることで、ヘッドライトだけでは補えない状況にも対応できるようになる。
次世代ヘッドライトが目指すべきもの
これからのヘッドライトに求められるのは、単純な「明るさ競争」ではない。必要な場所だけを照らし、不要な場所は照らさず、さらに他の交通や歩行者へ眩しさを与えないこと。そして濃霧や吹雪など通常のライトでは対応できない環境では、赤外線やカメラなど別の技術で補完することだ。
つまり、ひとつの装備だけで安全を実現する時代ではなく、複数の技術を融合させてドライバーの視界を守る時代になってきているのである。
ヘッドライトは夜道を照らすための装備である。しかし本当に目指すべきなのは、「自分がよく見えること」だけではない。周囲の誰にも眩しさというストレスを与えず、それでいて必要な情報は確実にドライバーへ届けること。そのバランスを追求してこそ、次世代のヘッドライトは完成形に近づくのではないだろうか。
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