2020年6月8日に発売されたトヨタ「RAV4 PHV」。これまでの2Lガソリンエンジン車&2.5Lハイブリッド車に加えて、新たにラインナップに加わった。
トヨタとしては、「プリウス PHV」に続く2モデル目となるが、国内メーカーでは三菱「アウトランダーPHEV」、海外ではBMWやボルボなどがすでに発売している。
今回は、トヨタとして2台目の市販PHVが、日欧ライバルと性能面、価格面などを比較してどのような勝負となるのか? について自動車評論家の渡辺陽一郎氏が考察。そのほかにも、気になる納期は現在どの程度なのか? などの最新情報についてもお届けしたい。
文/渡辺陽一郎
写真/TOYOTA
【画像ギャラリー】トータルコストまで考えると意外にお得な選択肢!? RAV4 PHVの詳細を紹介!!
■登場からわずかRAV4 PHV すでに納期は2021年4月!?
2020年6月、人気の高いSUVのトヨタ「RAV4」に、充電機能を備えたPHV(プラグインハイブリッド)が加わった。
まず注意したいのは納期だ。販売店によると「RAV4 PHVを2020年6月下旬に契約しても、納車は2021年4月以降になる」という。つまり納期は1年弱ときわめて長い。
「2020年度(2021年3月まで)の生産枠はすでに埋まったので、注文を頂いても、正確な納期は生産時期が近付くまでわからない」とのこと。地域の異なる複数の販売会社に問い合わせたが、どこも同様の返答だった。
販売店にRAV4 PHVを大量に受注したのかと尋ねると「RAV4 PHVは2019年11月に(ロサンゼルスオートショーで)披露された。そのあとに問い合わせをいただいたが、受注台数はさほど多くない」という。
ただしRAV4 PHVでは、月販目標が300台と少ない。2019年4月に登場したRAV4は、月販目標を3000台に設定して、2019年度(2019年4月から2020年3月)には、1カ月平均で6000台弱が登録された。
今の月販目標には正確性が求められ、その台数は発売の数年後まで適用される。いわば平均化された目標値だから、発売直後にはクリアできて当然だが、RAV4のように実際の売れ行きが2倍に達することは珍しい。
つまりRAV4は手堅く売れる人気車だから、PHVの1カ月に300台/1年間に3600台の目標値は、少なかったとも受け取られる。またコロナ禍の影響で、生産を受け持つ豊田自動織機の長草工場も一時は休止している。販売店では「今は車種を問わず納期の遅延が目立つ」というから、RAV4 PHVの遅れも仕方ない面があるだろう。
それでも今は新車需要の約80%が乗り替えに基づくから、大半のユーザーは、愛車の車検満了時期に合わせて新車を買う。納期が10カ月に達すると、納車までに車検を受ける必要が生じたり、クルマを持たない期間も長引く。欲しいクルマを注文して、納車をゆっくりと待てるユーザーは意外に少ない。
そこで気になるのが「RAV4 PHVに1年近く待つだけの価値はあるのか?」ということだ。ライバル車との比較を交えながら考えてみたい。
■国内の強力ライバル アウトランダーPHVと比較 RAV4 PHVの強みとは!?
まずRAV4 PHVのメカニズムだが、RAV4ハイブリッドに充電機能を加えただけの仕様ではない。フロントモーターをパワーアップさせている。エンジンとモーターの駆動力を合計したシステム最高出力は、RAV4ハイブリッド4WDは222psだが、PHVは306psと強力だ。RAV4 PHVでは全車が後輪をモーターで駆動する4WDのE-Fourになる。
グレードは「G」「G・Z」「ブラックトーン」の3種類を用意した。価格はPHV・Gが469万円で、ハイブリッド4WD・Gに比べると約80万円高い。装備はPHV・Gにはディスプレイオーディオを標準装着したが、逆にリヤクロストラフィックオートブレーキやパワーバックドアは、ハイブリッド4WD・Gと違って標準装着されずオプションに変更された。それでも装備はPHVが少し充実しており、約80万円の差額が70万円に縮まる。
また、PHVはクリーンエネルギー自動車とされ、申請すると経済産業省による補助金が22万円交付される。この金額も差し引いた最終的な差額は48万円だ。
ちなみにメカニズムをプリウスとあまり変更していない「プリウスPHV」も、価格はプリウスに比べて約70万円高い(補助金額は22万円で同額)。動力性能の向上なども考えると、RAV4 PHVは、プリウスPHVよりも割安だ。
次はライバル車と比べる。一番の競争相手は三菱「アウトランダーPHEV」だ。2.4Lエンジンは主に発電機の作動に使われ、駆動は前後に配置されたモーターが担当する。動力性能が高いのはRAV4 PHVだが、アウトランダーPHEVもモーター駆動が中心で、加減速は滑らかだ。
そしてRAV4 PHVのモーター駆動は前輪が中心で、フロントモーターの最高出力は182ps、リヤモーターは54psとなる。最大トルクも前27.5kgm・後12.3kgmだ。その点でアウトランダーPHEVは、前輪よりも後輪のモーターを強めた。最高出力(前・後)は82ps・95ps、最大トルクは14kgm・19.9kgmとされている。峠道などを走る時は、操舵角に応じて車両を内側に向けやすい。
駆動用リチウムイオン電池の総電力量(電池の容量)は、RAV4 PHVが18.1kWh、アウトランダーPHVは13.8kWhだ。RAV4 PHVの総電力量はアウトランダーPHVの1.3倍だから、1回の充電で走れる航続可能距離も長い。RAV4 PHVは95km、アウトランダーPHEVはWLTCモード走行が57.6km(JC08モード走行は65km)とされる。
充電された電気を使わず、ハイブリッド車として走る時のWLTCモード燃費は、RAV4 PHVが22.2km/Lだ。RAV4ハイブリッド4WDの20.6km/Lよりも優れている。RAV4 PHVの車両重量は1900kgで、RAV4ハイブリッド4WDよりも210kg重く、重量増加も考えるとPHVは高効率だ。
対するアウトランダーPHEVのハイブリッド走行時におけるWLTCモード燃費は16.4km/Lだから、数値はRAV4 PHVに比べて見劣りする。アウトランダーPHEVが登場したのは2012年だ。発売後に数回の改良を受けたが、設計の新しいRAV4 PHVと比べた時の不利は否めない。価格はアウトランダーPHV・Gプラスパッケージが458万2600円とされ、RAV4 PHV・Gの469万円に近い設定になる。
コメント
コメントの使い方