N-ONE 次期型登場半年前に生産終了 復活への活路はあるか?

■販売現場が語る 注目の次期N-ONEの動向

 ホンダカーズ(ホンダの販売店)に今後の動向を尋ねると、以下のような返答だった。

「従来型のN-ONEはすでに生産を終えて、今は販売も中断されている。従来型の発売から7年以上を経過したので、新型への乗り替えを希望するお客様も増えた。なるべく早くフルモデルチェンジして欲しいが、今のところメーカーから何の話も聞いていない」

「通常はフルモデルチェンジなら、3カ月前には何らかの情報が入る。それが現時点(2020年6月下旬時点)ではわからないので、次期N-ONEの正式発売は2020年10月以降になると思う。ただし8月頃に外観の一部を披露するなど、発売に先駆けたティザーキャンペーンを行う可能性はある」

 次期N-ONEを好調に売るには、現行型の欠点を克服して、顧客を引き付ける新たな魅力も備えねばならない。そこでまずは従来型の特徴と、売れ行きが伸び悩んだ理由を考えたい。

■シリーズものだからの悩みも 割り切れなかったN-ONE

 N-ONEのベースになったのは、2011年に発売された先代N-BOXだ。全高は1700mmを上まわり、燃料タンクは前席の下に搭載するので、軽自動車では最大級の室内空間を備えた。大人4名が快適に乗車できて、後席を畳めば自転車も積める。先代N-BOXの広さはインパクトが強く、後席と荷室の使用頻度が低いユーザーも、購買意欲を刺激された。

 先代N-WGNも、先代N-BOXをベースに開発され、後席の下には幅が約1mに達するワイドなトレイを装着した。傘や靴などが収まって使い勝手もいい。

 N-BOXとN-WGNに比べて、N-ONEは魅力がわかりにくかった。それは、一番の特徴がボディスタイルにあったからだ。

 丸型ヘッドランプを装着したフロントマスクは、1967年に発売されたホンダの軽自動車「N360」をモチーフにしている。リヤゲートも微妙に寝かされ、独特の柔和な雰囲気を感じさせた。N360を知っている人なら、外観の意味を理解できたが、知らない世代にはわかりにくいだろう。

1967年に登場した「N360」、通称”Nコロ”。ホンダが量産メーカーへと躍進する転機となったモデルだった

 N-ONEも全高は1600mmを超えるが(のちに1545mmのローダウンも追加した)、後席に座ると、床と座面の間隔が不足してN-WGNよりも窮屈だ。荷室も狭く、N-WGNのような後席下側のトレイも備わらない。背は高いのに、実用性はN-BOXやN-WGNに比べて見劣りした。

 実用的なN-BOXとN-WGNが用意される以上、N-ONEはデザイン重視の個性派モデルに仕上げるべきだった。ちなみにN-ONEのモチーフになったN360のボディサイズは、全長:2995mm、全幅:1295mm、全高:1340mmだ。エンジン排気量が360ccの時代だから、ボディもきわめて小さい。

 このN360の寸法をすべて1.13~1.14倍に拡大すると、全長3395mm×全幅1475×全高1520mmになり、今の軽自動車規格にピッタリ当てはまる。つまりN-ONEの全高を1520mmに抑えて、ボンネットの位置をアルトやミライースと同程度まで下げれば、N360にソックリな「拡大コピー版」の復刻モデルを開発できた。

 ところがこれは無理な要求だった。Nシリーズのエンジンは、有効室内長を拡大するため、補機類の配置まで含めて縦長に設計されたからだ。このエンジンを使って、歩行者保護要件も満たすと、ボンネットの位置が高まってしまう。必然的に天井も持ち上がり、N360をモチーフにしながら、縦長のボディになった。

 余談だが、S660がエンジンをボディの中央に搭載するミッドシップを採用した背景にも、同じ事情がある。S660のために新型エンジンを開発するのは不可能だから、Nシリーズと同じタイプを使う。これをボディの前側に搭載したら、ボンネットが高くなってスポーツカーは開発できない。従ってミッドシップは必然の選択だった。

1996年に販売を終了した「ビート」以来、約19年ぶりに復活した軽規格のミッドシップスポーツカー「S660」。Nシリーズに搭載されているターボエンジンを改良し搭載する

 そして前後長の短い縦長のエンジンは、S660にとって後方視界と重心高では不利に作用したが、前後方向の位置決めについては自由度が広がり、ベストな位置に搭載できた。

 話を戻すと、N-ONEは価格も少し割高だった。Nシリーズの2015年における価格は、先代N-BOX G・Lパッケージが137万円、先代N-WGN G・Lパッケージは124万円、N-ONE G・Lパッケージは129万8000円であった。N-ONEは実用性がいま一歩なのに、価格は高めと受け取られた。

 仮にN-ONEのルーフとボンネットがもっと低く、N360に似ていればデザイン面で特別な価値を訴求できたが、実際は実用性と価格をN-WGNと比較されてしまった。

 今の軽乗用車の売れ方を見ると、N-BOXのような全高が1700mmを上まわるスライドドアを備えた車種が約50%を占める。N-WGNのような全高が1600~1700mmの車種も約35%だから、80%以上が背の高い車種だ。実用性以外の価値を備えた商品企画は成立させにくい。アルトラパンやミラトコットも、1カ月の届け出台数は1400台前後で、現在のN-ONEと大差ない。

次ページは : ■キープコンセプトながら 魅力向上のために抑えたいポイント

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