白色光が採用されてきた理由
ところで、前述のHf蛍光灯とセラミックメタルハライド灯の色調はともに「白色」とされているが、実際に見るとやや黄色がかっているのは、明・暗の急激な変化で起こる「ブラックホール現象」などを抑えるためだ。
この現象は、昼間に自動車の運転者が照明設備の不十分なトンネルに接近しながらトンネル内を見ると、トンネル出口が見えないような長いトンネルではトンネル内の暗さが強く感じられ、トンネルが“暗黒の穴”に見えることを指す。
このような視覚的な違和感によって、ドライバーがトンネル内の障害物の有無やトンネル内の状況などを知覚することができなくなるとのこと。これを抑えるために、昼間時にトンネル内でも自然光に近い昼光色が求められた。
首都高速道路では高架部に高圧ナトリウムランプと水銀ランプが使われ、トンネル部は主に蛍光灯とナトリウムランプを使用している。
首都高大橋JCTは急カーブが連続するループ内のため安全性を特に重視した照明
4層ループの大規模構造の首都高大橋ジャンクションは、設計速度40km/でループ内が急勾配・急カーブとなっているため、ドライバーの視線は、カーブの先端の壁面や先行する車両の背面に集中することが想定される。
そのため、一般のトンネル照明計画とは異なり、壁面の明るさを路面の明るさの2倍に設定して安全性を高め、さらに基本照明に追加する方式で追跡照明を設置している。
ドライバー方向の鉛直面照度をアップすることで先行車の背面を明るく照らして視認性を高める効果を図るなど、安全性を特に重視した照明となっている。
基本照明には、32W Hf 蛍光ランプ2灯用プレス形トンネル照明器具(適正照度制御機能付き)を向き合わせ配列とし、追跡照明には演色性の高い白色光源のセラミックメタルハライドランプ(270W、360W)枠なしプレス形トンネル照明器具を基本照明の間に設置している。
また、分流部の追跡照明には、オレンジ色の高圧ナトリウムランプ(270W、360W)枠なしプレス形トンネル照明器具を設置し、ドライバーが遠方からでも認識できるように光色を変えて差別化を図っている。
今後はLED照明が主流になっていくのか?
首都高でのLED照明の利用は拡大されており、高架部照明と同様に低消費電力かつ長寿命が実現するだけでなく、照明器具の取付間隔を拡げて設置することができるので、LEDランプの使用によって設備台数の削減を実現しつつ省エネルギー化が図れるとしている。
2015年3月に開通した山手トンネル(湾岸線~3号渋谷線)にLED照明を導入したほか、青山トンネル、北の丸トンネル、八重洲トンネルなどの既設のトンネルに加え、2020年3月に開通した横浜北西トンネルに導入している。
首都高速道路では今後も、羽田トンネル等の既設路線において改修時期に合わせたLED照明の導入を進めるという。
LEDを採用するかどうかに関しては、照明ランプの設置に関わる初期コストと、電気代などの使用コストを合わせたライフサイクル・コストの経済性を考慮して選定されると高速道路会社は説明するが、トンネル内の視界が充分に確保されれば、馴染み深いオレンジ色の照明が果たす役割は少なくなることになる。
長年採用され続けたナトリウムランプも、より高効率な白色光源が開発されたこともあって、その数は減少傾向にあることは間違いない。
LEDのヘッドランプに眩しさに対して、どこか“目に優しい”感覚を覚えるのはノスタルジーゆえかもしれないが、オレンジ色の光に旧き良き雰囲気の良さを感じるのは筆者だけだろうか。
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