名車W124型ベンツEクラスの現在「神話」のベンツは今なら買える?

 メルセデスベンツの企業スローガンに「Das Beste oder nichts(最善か無か)」というものがあるのをご存じだろうか?

 創業から1990年前後まで使われていたが、いつのまにかなくなり、2010年代後半から再び使われるようになった。

 このスローガンが意味するものは、わかりやすくいえば、「理想のクルマを作るために、コストを顧みず、最高の品質、性能を追求する」。コスト計算が先に来る現在のクルマ作りとは真逆の考え方である。

 その「最善か無か」を代表するクルマとして、W124(型式名)ことメルセデスベンツEクラス(登場時はミディアムクラス)が真っ先に挙げられる。

 登場時から、金庫のような重厚なドアの開閉音、ガッチリとしたボディ剛性感、オーバークオリティなどと言われ評判が高かったが、生産終了から25年が経過した今、Eクラスの中古車事情はどうなっているのだろうか?

 相変わらず人気が継続しているのだろうか? 中古車事情に詳しい伊達軍曹が解説する。

文/伊達軍曹
写真/メルセデスベンツ

【画像ギャラリー】走る金庫? W124型ベンツミディアムクラス&Eクラスを写真でチェック!


最後のベンツらしいベンツ?

1985年に登場したW124型メルセデスベンツミディアムクラス。日本導入は1986年。ボディサイズは全長4740×全幅1740×全高1445mm。ちなみに現行Eクラスは全長4950×全幅1850×全高1450mm
「最善か無か」の時代に作られたメルセデスベンツの3車種。左から190シリーズ(1982年、W201)、中央はミディアムクラス(1985年、W124)、右はSクラス(1979年、W126)
1990年10月のパリサロンで発表され、1991年2月から生産が開始された500E。トレッドはフロントが35mm、リアで30mm拡大。外観上の特徴は標準仕様の195から225に変更されたタイヤを収めるために拡大されたフェンダーで、全幅は55mm広い1795mm

 「W124」という型式名で呼ばれることが多い、4世代前のメルセデスベンツEクラス。生産終了から25年が経過しているにもかかわらず、中古車マーケットではいまだに人気を維持している。

 5LのV8DOHCエンジンを搭載した「500E」は1000万円級のプライスが付くことも珍しくなく、一般的な6気筒モデルであっても、上物であれば180万円は超えるケースが多い。

 いったいなぜ、今となっては「古くさい」とも言えるこのセダンが、いまだ人気車種であり続けているのか?

 それは、W124こそが「最後のベンツらしいベンツ」であるからだ。

 メルセデスベンツの長い歴史をかなり端折ってカンタンに述べるならば、以下の4期に分けることができる。

●創業期:自動車の発明と開発
●進撃期:「最善か無か」をテーマに、妥協なき作りの高級サルーン各車を開発●停滞期:社会情勢の変化によって「最善か無か」とも言っていられなくなり、コストダウンに励む
●円熟期(現在):むやみなコストダウンの弊害を反省し、「顧客に十分満足してもらえて、なおかつ利益もしっかり出るクルマ作り」の手法を会得。そして躍進する

 上記の「停滞期」は1990年代半ば頃に相当し、この時期に登場したメルセデスのニューモデルは、言ってはなんだが「コストダウンの痕跡」ばかりが目立つ、ちょっとアレな車種ばかりであった。2020年の今、この時期のメルセデスをわざわざ買う必要性は完全にナッシングである。

 だがW124型ミディアムクラス/Eクラスは違う。メルセデスが「最善か無か」を地で行っていた時代の最後近くに開発されたクルマであるため、十分に「往年のベンツ、黄金期のベンツ」なのだ。

ステアリング形式はリサーキュレーティングボール式を採用。滑らかなステアフィールが特徴でハンドルもよく切れるので運転しやすい。4速ATのシフトゲートは誤操作を防止するジグザグのスタッガードゲート式

 あえてメルセデスではなく「ベンツ」と書きたくなる重厚長大な質感と設計が、随所に残っているのだ。

 ラックアンドピニオンではなくリサーキュレーティングボール式のステアリングギアボックスを使用したことによる、絹のようになめらかなステアフィール。やたらとボディ剛性が高いせいか、「戦車か?」と思ってしまいそうになる、ドア開閉時の素晴らしい音と感触。

 まぁ超ディープなマニアのなかには「W124だってしょせんはコストダウン期の作品だよ。本当のメルセデスは1970年代までだね!」と言う人もいる。

 それはそれで一理ある話だが、それでもW124は「“最善か無か”の時代に作られたメルセデス」であることは間違いない。

 そしてその最後の世代であるがゆえに、1960年代や1970年代のガチでクラシカルなモデルと違って「まだまだ普通に買って、乗って、維持できる」という、好ましい性質を備えている。

 そうであるがゆえにW124は、2020年の今もなお「人気」であり続けているのだ。

中古車購入の際に役立つ日本仕様の歴史

上からエステートのS124、セダンのW124、クーペのS124。このほかカブリオレのA124やロングホイールベース版のV124、500Eなどをラインアップ

 さて、詳しい人にとっては今さらな話だろうが、「これからW124を買うかも」という各位のため、W124ミディアムクラス/Eクラスクラスの歴史というか「日本仕様のグレード紹介」のようなものを、極力シンプルに紹介していこう。

●前期型(1986年12月~1992年10月)
 この時期のクラス呼称は「Eクラス」ではなく「ミディアムクラス」。なお、下記記載のプライスは登場初年度の新車価格で、その後変更された場合も多い。またごく一部、記載を省略したグレードもあることを断りしておく。
・230E|2.3L、直4SOHC、135ps、547万円
・260E|2.6L、直6SOHC、165ps、604万円
・300E|3L、直6SOHC、185ps、670万円
・500E|5L、V8DOHC、330ps、1550万円
・300E-24|3L、直6DOHC、225ps、785万円
・300CE-24|3L、直6DOHC、225ps、835万円
・230TE|2.3L、直4SOHC、135ps、660万円
・300TE|3L、直4SOHC、185ps、760万円

●中期型(1992年10月~1993年10月)
 エンジンがDOHCとなり、排気量も変更されて、俗に言う中期型へ進化。ただし、この時点でもクラス呼称はまだ「ミディアムクラス」である。
・220E|2.2L、直4DOHC、150ps、605万円
・280E|2.8L、直6DOHC、200ps、695万円
・320E|3.2L、直6DOHC、225ps、770万円
・400E|4.2L、V8DOHC、285ps、950万円
・500E|5L、V8DOHC、330ps、1550万円
・320CE|3.2L、直6DOHC、225ps、932万円
・320CEカブリオレ|3.2L、直6DOHC、225ps、1120万円
・220TE|2.2L、直4DOHC、150ps、690万円
・320TE|3.2L、直6DOHC、225ps、825万円

●後期型(1993年10月~1995年10月)
 エクステリアデザイン等を一部変更し、俗に言う後期型に。このタイミングでクラス呼称がミディアムクラスから「Eクラス」に変更され、車名も「○○○E」から「E○○○」という表記に。
・E220|2.2L、直4DOHC、150ps、580万円
・E280|2.8L、直6DOHC、200ps、650万円
・E320|3.2L、直6DOHC、225ps、710万円
・E400|4.2L、V8DOHC、285ps、870万円
・E500|5L、V8DOHC、325ps、1300万円
・E320クーペ|3.2L、直6DOHC、225ps、880万円
・E320カブリオレ|3.2L、直6DOHC、225ps、990万円
・E220ステーションワゴン|2.2L、直4DOHC、150ps、630万円
・E280ステーションワゴン|2.8L、直6DOHC、200ps、700万円
・E320ステーションワゴン|3.2L、直6DOHC、225ps、760万円

 後期型ではこのほか限定モデルの「E500リミテッド」が500台製造されたが、日本への正規輸入はされていない。が、並行輸入車は数多く上陸している。

1993年に登場したE220

中古車価格はコンディションと整備履歴で決まる

500E/E500に搭載された5L、V8エンジンは発売当初は330ps/50.0kgm、1993年モデルから環境対策などで325ps/49.0kgm。写真は世界限定500台のE500リミテッド(日本未導入)

 さて、現在の中古車相場だが、おおまかな目安は以下の通り。

●直列エンジン搭載グレード:30万~250万円
●5L V8 の「500E/E500」:200万~1000万円

 直列エンジン搭載グレードと500E系との価格差は確実に存在しているが、直列同士の場合は、300E、E280といったグレードや排気量、年式の違いに起因する価格差はほとんどない。

 直列エンジン搭載車の価格は(まあV8の500Eもそうなのだが)、あくまで「個体のコンディションと整備履歴で決まる」という状況だ。

 直6または直4搭載グレードの場合、「買ってそのまま、まともに1年以上走れる中古車」の価格目安は130万円以上、いや、できれば150万円以上とイメージしておくべきと考える。

 数十万円クラスの格安物件は、交換されてしかるべき消耗部品が交換されていないケースが大半であるため、結局はかなりの確率で購入後、数十万円から100万円級の整備予算がかかる。

 ならば最初から、経験豊富な専門店が適切な整備と部品交換を行っている個体を150万~200万円ぐらいで買うほうが、結局は安上がりなのだ。

 5LのV8エンジンを搭載している500E/E500も同様に、200万円級の格安物件を買っても、半年後か1年後にドツボにハマるだけ。もしも買うのであれば、信頼できそうな専門店に大金を払って整備済みの上物を買うか、もしくはあきらめて「見てるだけ」にとどめておくべきだろう。

ベンツEクラスの中古車価格をチェック!

購入する際に気を付けるポイントは?

マイナーチェンジした1993年式のE280ステーションワゴン
優雅なスタイルの1991年式Eクラスカブリオレ

 購入時のチェックポイントは、「特にない」というのが、ある意味正解となる。

 というのも、もちろん見るからにクソボロい物件は、誰が見てもすぐに「これはヤバそう……」とわかるわけだが、それなりにキレイめな個体を販売店が内外装をクリーニングして売りに出した個体となると、そのコンディションはハッキリ言って分解してみないとわからないのだ。

 具体的には、例えばデファレンシャルギアのシール部分からのオイル漏れである。

 筆者が専門店に取材したところによれば、最近はこれを発症させているW124が多いとのことだが、これは展示場でちょっと下回りを覗いてみるぐらいでは絶対にわからない。リフトアップして、ある程度バラしてみないと把握できないのだ。

 そしてもちろん、2020年におけるW124の注意点はデフのシールだけではない。足回りのブッシュ、エンジンマウント、アッパーマウント、プロペラシャフトのディスクジョイント、AT内部のモロモロ、エアコン関係のモロモロなど、本当に枚挙にいとまがない。

 これらすべてを「店頭でちゃちゃっとチェックする」など実質的には不可能。そしてそもそも、整備のプロではない人間が見たところで、ほとんど何もわからないだろう。

 ならばどうすればいいか……といえば、これはもう「信頼できそうな専門店を探し、その専門店が勧める整備済みの個体を買う」ことでしか、問題は解決できない。

 マトモな専門店であれば、筆者が先に挙げたようなポイントや、その他のポイントは必ず点検し、関係する消耗部品を必要に応じて新品に交換し、そのうえで納車している。

 そうなると、販売店の手間賃と粗利を含む中古車の売価は、必然的に「150万円とか200万円ぐらい」になることは、ごく当たり前にイメージしていただけると思う。

 この作業(必要なメンテナンスと部品交換)をやりながら、なおかつ数十万円程度の売価でW124を販売するのは、どう考えても不可能なのだ。仮に「販売店の利益は0円」として計算しても、おそらくは無理だろう。

 しかし逆に言えば、W124というクラシカルな名車は、500E/E500でさえなければ、ウン百万円とか1000万円とかの大金がかかるクルマではない。せいぜい200万円程度なのだ(あとは、それに加えてまともな専門店を探す努力が必要であり、購入後も、1年ごとを目安にほどほどの整備代が発生するとは思うが)。

 これを「高い……」と感じる人は、無理に買う必要はない。クルマなんて、W124以外にもいろいろあるのだから。

 しかし「W124のためなら、そのぐらいは安いものなんじゃないの?」と思えるのであれば……、トライしてみる価値はある。それだけの価値はある、素晴らしいクルマだからだ。

価格の安さに飛びつくのは厳禁。W124を知り尽くした専門店で購入するのが望ましい

【画像ギャラリー】走る金庫? W124型ベンツミディアムクラス&Eクラスを写真でチェック!

最新号

ベストカー最新号

【水野和敏熱血講義も!!】ホンダ2025年までの新車戦略| ベストカー10月10日号

 ベストカーの最新刊が9月10日発売!  最新号のスクープ特集では2021年から2025年までのホンダの登場予想車種をいっきにスクープ。  そのほか、ベストカーでおなじみの水野和敏氏による「withコロナ時代に必要なクルマ」の熱血講義なども…

カタログ