■競合ウィッシュの登場とミニバンの台頭… ストリームが姿を消した理由
「まるでセダンのように走れるミニバン」という新基軸を生み出したホンダ ストリームが廃番となってしまった理由。
それは、まず第一には「トヨタ ウィッシュの影響」を挙げないわけにはいかないでしょう。前章の冒頭で「2003年に『コピーか?』とも思える類似車が登場した」と書いた、その車のことです。
ホイールベースこそ30mm異なりますが、全長·全幅·全高とも初代ストリームとまったく同じで、商品コンセプトもほとんど同じと言える初代トヨタ ウィッシュが2003年1月に登場したことで、ストリームは確かに打撃を受けました。
2003年に行われた初代ストリームのマイナーチェンジ時に、ホンダは「ポリシーは、あるか。」という挑戦的な(というか怒りを含んだ)キャッチコピーを採用して反撃しましたが、結局のところ初代ストリームはウィッシュの登場以降、目に見えてその販売台数を落としています。
ストリームは2006年7月のフルモデルチェンジにより、一時は年間4万台から5万台ほどの販売台数まで持ち直しましたが、2010年以降は「TOP30圏外の常連」に。
それでいて後発の、ある意味模倣品であるトヨタ ウィッシュがその後もランキング圏内にとどまり続けていたのは、なんとも皮肉な光景でした。
しかしそのトヨタ ウィッシュも2017年10月に2代目が販売終了となり、結局はブランド消滅の憂き目にあっています。
これは要するに、ストリームが生産終了となったのはトヨタ ウィッシュのせいではなく、「時代の流れによる不可抗力だった」ということなのでしょう。
初代ストリームが「新発明」として誕生した2000年頃は、まだまだ「走りの良い箱型ミニバン」というものがほぼ存在していなかったため、ストリーム的な「背の低い3列シート車」には大きな価値がありました。
しかし2000年頃になって、「走りがいい」とまでは言わないものの「まあまあ悪くない」とは言える、便利な両側スライドドアを備えた背の高い各種ミニバンが登場してくると、ストリームやウィッシュのユーザーは、どうしたってこう思うことになります。
「……そういえば俺(わたし)、なんでこんな背が低くて3列目が狭くて、スライドドアじゃなくてヒンジドアの車に、わざわざ乗ってるんだっけ?」
湧き上がってきたこの素朴な疑問に対し、「3列シートの便利な車が必要だから」と自答する人は、まあまあ走りが良くて、車内はストリームよりも断然広い箱型のミニバンに買い替えるというのが、自然な流れとなります。
そして、前述の素朴な疑問に「……まぁなんとなく、シートは3列シートあったほうが便利かな? と思ったから」と自答した人は、ちょうどその頃勃興してきた2列シートの「SUV」に買い替えたのでしょう。
このような流れでホンダ ストリームは生産終了となり、ライバル(?)だったウィッシュも結局は消えていきました。
ストリームの走行性能は、特に2代目のそれは、ミニバンとしては異例に素晴らしいものでした。しかし今にして思えば、あの寸法とフォルムの中に3列のシートを押し込めるというのは、やはり少々無謀だったのでしょう。
ですがそれは、「今にして思えば」です。
まともなミニバンもSUVもまだあまり誕生していなかった時代にあっては、ストリームの挑戦というか発明はそれこそ「偉大」でしたし、また「ストリーム的な車」を求めていたユーザーも、確実に存在していました。
後からは、なんとでも言えるものです。
■ホンダ ストリーム(2代目)主要諸元
・全長×全幅×全高:4570mm×1695mm×1545mm
・ホイールベース:2740mm
・車重:1400kg
・最高出力:150ps/6200rpm
・最大トルク:19.4kgm/4200rpm
・燃費:14.6km/L(10·15モード)
・価格:227万8500円(2006年式RS Z)
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