■なぜパジェロは消えたのか? その復活はあるのか!?
パジェロ製造が生産を停止する理由は、いわゆる選択と集中だ。今後の三菱は、欧州市場からも撤退して、タイ・インドネシア・フィリピンといったアセアン諸国、南米や中東などに経営資源を集中させる。
パジェロが生産を終えた背景を整理すると、2つの理由がある。ひとつは先に述べたとおり、パジェロの人気が下がったことだ。後輪駆動をベースにしたオフロードSUV全体の売れ行きが下降して、三菱も前輪駆動ベースのアウトランダーを導入したから、パジェロの販売が一層下がった。海外では後輪駆動ベースの新しいSUVとして、パジェロスポーツも導入され、これも従来から設定されるパジェロの販売では不利に作用した。
2つ目の理由は、パジェロだけでなく、三菱全体の業績も悪化したことだ。2000年における三菱の世界生産台数は181万4000台(国内の乗用車販売は29万6000台)であった。
それが2005年には、世界生産台数が136万3000台(国内の乗用車販売は16万3000台)に下がってしまう。国内販売については、不祥事の影響もあって半減した。
2010年は世界生産台数が117万3000台(国内の乗用車販売は13万2000台)に低下している。2019年は世界生産台数は136万9000台、国内販売台数は10万3000台となった。
業績が下がる過程で、日産は2016年に三菱の株式を34%保有して、筆頭株主になった。三菱は日産・ルノーのグループに加わっている。そうなれば三菱の戦略も、日産・ルノーとの相対性で成り立つ。商品開発は、アセアン諸国、南米・中東・アフリカなどを対象に、従来以上に絞り込むようになった。
今までの三菱では、日本における新型車の発売が滞りがちだったが、今後は積極的に展開する。販売店では「エクリプスクロスは11月頃に販売を中止して、PHEVを加えるなど大幅な改良を施す。アウトランダーも10月頃に終了して、2021年には新型へフルモデルチェンジされる」という。
パジェロが復活する可能性は低いが、アセアン地域やオーストラリアなどでは、以前から「パジェロスポーツ」を販売している。後輪駆動をベースにした4WDを備えるオフロードSUVだから、実質的にパジェロの後継車種と考えてよい。
■これからの三菱を支えるモデルは何か!? 苦境の三菱に必要な一手
パジェロが生産を終えた今、三菱の国内販売車種には、後輪駆動をベースにした4WDを搭載するオフロードSUVが用意されない。発売から10年を経過した「RVR」と、約8年を経た「アウトランダー」、2年の「エクリプスクロス」のみだ。
この3車種は全長は異なるが、前輪駆動ベースのプラットフォームはすべて共通化されている。ホイールベース(前輪と後輪の間隔)の数値も、全車が2670mmで等しい。SUVを主力とする三菱として、今のラインナップだけでは弱い。
従って三菱とそのグループが国内市場を大切に考えるなら、「パジェロスポーツ」を国内にも導入する。2023年以降にフルモデルチェンジする次期パジェロスポーツになる可能性もある。
SUVと3列シートミニバンの中間的な「エクスパンダー」も注目車種だ。現行型はアセアン地域向けだが、2023年以降の次期型は、国内に投入されることも考えられる。
この背景には、アセアン地域に向けたクルマ造りの変化もある。例えば日産は、インドでダットサンブランドを立ち上げたが、質感が不評で売れ行きも伸び悩んだ。アセアン地域は新興国などと呼ばれるが、日産の開発者は「もはや安さだけで売れる市場ではなくなった。上質なクルマ造りが不可欠」という。
いい換えれば、今後のアセアン諸国で販売する商品は、日本と同等の品質を確保しなければ通用しない。そうなればパジェロスポーツやエクスパンダーも、走行性能、乗り心地、内装、各種の装備などを向上させるから、日本国内で販売することも可能な商品になる。
当たり前の話だが、三菱が日本で評価されるには、日本のユーザーに喜ばれる新しい商品を発売せねばならない。海外向けも有効活用して(ルノーのOEMを導入する方法もあるだろう)、国内市場を活性化させて欲しい。これは日産にも当てはまることだ。
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